奇っ怪な画を描くヒエロニムス・ボス祭に行ってきた / オランダ デンボス訪問記-ボス回顧展

オランダ南部にデンボス(Den Bosch) / スヘルトゲンボス(‘s-Hertogenbosch)という中世の面影を多分に残す要塞都市がある。美しい街なので自国民のオランダ人には人気の街なのだが、日本ではあまり取り上げられることがない。
デンボスは中世の街並みが美しく、レンガ造りの家々と無数の運河が家の下に張り巡らされ独特の景色のある街である。また、大聖堂の奇っ怪な石像等の見所も多い。にもかかわらず日本での知名度が今一つなのはたいへん残念だ。
更に、この街は画家のヒエロニムス・ボス(Hieronymus Bosch)の生誕の地としても有名である。そして、2016年こちらの北ブラバント美術館(Het Noordbrabants Museum)で彼の没後500年を記念する大回顧展が開かれた。

マルクト広場もボス一色@Den Bosch

● ヒエロニムス・ボス の大回顧展を知ったのはひとつの記事から

ヒエロニムス・ボス(1450年頃-1516年)は初期フランドル派のルネッサンス期に活躍した画家。レオナルド・ダ・ヴィンチ (1452年-1519)と同時代だが、作風は大いに異なり奇々怪々な画風で知られ、ブリューゲルなどにも大きな影響を与えた。このボスの大回顧展の開催を知ったのは、ボスの画が新たに発見されたひとつの記事から。

‘Lost’ Bosch painting found in US museum

500年前の画家の絵が今になって発見されるとは凄い話で、しかも絵画が出てきた場所がアメリカ。そして、この記事によってヒエロニムス・ボスの没後500年に、彼の生誕の地であるデンボスで大回顧展がおこなわれることを知った。

● 世界中から集まった ヒエロニムス・ボス の名作の数々

更に調べてみると、この回顧展は全世界の美術館の協力の元、主要絵画のほとんどがボスの出身地に里帰りをする企画展であるとわかる。その美術館もプラド、ルーブル、ウィーン、ベルリン、ナショナルギャラリー(ワシントンDC)、アカデミア美術館(ヴェネツィア)、グルーニング美術館(ブルージュ)、メトロポリタン美術館(ニューヨーク)、ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館(ロッテルダム)と、とにかく幅広く網羅的。ボスの作品は各国に分散しており、各美術館にとってもお宝級の絵画なので、さぞ調整がたいへんだったと思われる。

最後の審判(部分)@Academy of Fine Arts Vienna 2015年撮影

また、ボスの作品点数は、日本人の好きなフェルメールよりも少なく、今回発見された絵を入れて25点。ヒエロニムス・ボスは好きな画家のひとりなので、旅に行く時に何気なく追いかけているだが、つい最近もルーブルでは貸出し中だったりで、死ぬまでにすべては見られそうもないと嘆いていたところで、この回顧展である。

最後の審判(部分)@Academy of Fine Arts Vienna 2015年撮影

ちょうど、オランダ近辺を旅しようと思っていた年であったし、 個人所蔵含めてほぼすべての作品を観ることができるよい機会でもあるので、慌ててチケットを押さえてしまった。なにせ、ボスを観るにしては一大チャンスすぎるし、逆にこの時期に著名美術館に行ってもボスが観られないのだから。この回顧展の開催に気がついて本当によかった。

● ヒエロニムス・ボス でデンボスの町おこし

今回の展覧会、規模が大きい割に、収容する街も美術館もさほど大きくないので、すべて事前チケット購入で入場時間が決められている。前日に入場時間を変更したくサイトを見たところ、どの時間も数週間先まで、ほとんど完売でままならかった。そして、この回顧展が如何に人気が高いのかがよくわかった。しかし、展覧会にも街にも、日本人、それから最近は必ず見かける中国人も全くみかけない。観光地でこれは珍しく、デンボス側からの情報発信先が偏っているのかもしれない(笑)。

会場の様子等はこちらの動画が詳しい。30万人分のオンラインチケットが売り切れて、あの小さな町と博物館に結果40万人以上が既に来訪とは凄まじい出来事。動画を拝見するにデンボスの町のご苦労がしのばれる。そして、世界的にはさほど有名ではないオランダの片田舎町の「町おこし」と思えば凄い成果だと思う。お洒落で歴史的建造物もたくさんあるデンボスの素敵さもあいまって、一度この機会に町を訪れた人は必ずやリピーターになるだろう。

Jheronimus Bosch – Visions of genius in numbers

実際、街中に入ると完全なボスワールド。店々のディスプレーはボス一色である。

● ヒエロニムス・ボス大回顧展は用意周到で臨機応変

ちなみに今回のボスの回顧展では会場内の撮影は厳禁。ただですら混んでいるので、撮影なんか許可したらたいへんなことになるだろう。おまけにボスの絵は描写が細かいので、皆さん顔を絵にへばりつけてご覧になるし、オーディオガイドを使っている方は説明が終わるまで絵の前を離れないので、大作には人が群がり、かなり観るのに時間を要する。欧州の美術館でここまでの混雑ぶりは珍しく都内の美術館の企画展並である。美術館側が入場時間を予め決めてチケットを販売したのは賢明である。

北ブラバント美術館(Het Noordbrabants Museum)@Den Bosch

また、チケットが売りきれる人気ぶりから、当初9時から20時の開館時間を、後半は木金土は22時まで延長し、更に最後は毎日22時まで開館としていたようだ。この辺の采配も見事と言うしかない。そして、なんと最後の週末は39時間連続で美術館を開けることにしたらしい。あの絵画を夜中に観るのは、別の意味でとても興がそそられる試みだ。

しかし、混んでいながらも展示は圧倒的であった。以前貸出し中でルーブル美術館で見ることがかなわなかった「愚者の船 」もデンボスに来ており、なんと連作ではないかと言われているエール大学の「快楽と大食の寓意」と上下にあわせて展示されていた。こんな夢の共演はまたとないはずだ。もちろん、新発見のカンザス大学所蔵の絵も展示されている。プラドやウィーン、ベルリンの各絵画は再会を果たしたが、こうして全てを見通しよく見せてもらうと、全体像や彼の世界観がより身近になる。

しかも、嬉しいことに今回は個人所蔵の大作も展示されていた。金額にしたら数億円ですまなさそうなこの絵画、いったい、どんな方が所有しているのだろう。

●ボスの街デンボスには、ボスのキャラクターがあちこちに

ちなみに、デンボスにはヒエロニムス ボス アートセンター(Jheronimus Bosch Art Center)があり、レプリカながら精巧なボスの作品や作品に登場する奇っ怪なキャラクターが展示されている。

また、 街のいたるところにボスのキャラクターが佇んでいるというか、鎮座しているので、そちらも楽しむことができる(笑)。 そのため、今回のようなボスの展覧会がなくともボスを堪能でき、デンボスを訪れる価値は充分にある。(次回に続く)

オランダ / デンボス、スヘルトゲンボス

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