前回からの続き。ベルリンでオートバイをレンタルし、旧東ドイツ(DDR)圏のロングツーリング中、今回の旅のメインテーマは「バウハウスの史跡巡り」。バウハウスとはドイツの小さな学校で、たった14年間と短期間の活動ながら、後世のモダンデザインに大きな影響を与えた。
この14年の間にバウハウスはその本拠地を点々と移している。最初は本格的な国立学校としてワイマール / ヴァイマル(Weimar)に、次は市長の後押しもあって市立学校としてデッサウ(Dessau)に、最後は短命に終わる私設学校として首都ベルリン(Berlin)に移動する。実はこの3都市、ちょっとしたバイクツーリングには、ほどよい距離感なのだ。また、各都市内には徒歩で回るには不可能な数のバウハウス建物群が点在しているので、どうしても移動のための足が必要になる。その面でもオートバイは重宝した。
本日、ワイマール / ヴァイマルに到着、ここにはバウハウス大学(Bauhaus-Universität Weimar)があり、街中にはバウハウス博物館(Bauhaus-Museum)もある。そして、「ファウスト」が初演されたゲーテ縁の国民劇場(Deutsches Nationaltheater und Staatskapelle Weimar)も。
● ワイマールでバウハウスの源流を感じる
● バウハウスのワイマール校は アンリ・ヴァン・デ・ヴェルデ によるもの
● アートを重視した初代校長 グロピウス
● バウハウス大学図書館とバウハウス博物館
● ワイマールでバウハウスの源流を感じる
アイゼナハからワイマールまでは高速を使えば、あっという間だ。夕方前にはホテルに到着し、早速町中に繰り出した。学生と観光客が多く、町を歩いた印象では小京都と言った感じである。
ワイマールはゲーテが暮した町として有名で、ワーグナーの「ローエングリン」やシュトラウスの「ドン・ファン」もここで初演された。そして、ここはバウハウス発祥の地でもある。
バウハウスは初代校長グロピウスによってワイマールに誕生した。時は1919年で第一次大戦が終結した翌年である。敗戦国のドイツとしては建設業の必要性が高く、国力回復の基盤としての建設産業の発展が必須との背景にあったようだ。
● バウハウスのワイマール校は アンリ・ヴァン・デ・ヴェルデ によるもの
バウハウスのワイマール校の本館である旧美術学校ロビーに有名ならせん階段がある。実は、これはバウハウスデザインではなく優美なユーゲントシュティール(アール・ヌーヴォー)様式。そして、生粋のバウハウスデザインにとっては、似つかわしくないはずのロダンの彫刻が傍らにある。それもそのはずで、こちらの階段はアール・ヌーヴォーに親しみのあるベルギーの建築家 アンリ・ヴァン・デ・ヴェルデ(Henry van de Velde)によるもの。そもそもは美術工芸学校/彫刻学校として建てられたものをバウハウスが継承したのでこれらが残っている。
アンリ・ヴァン・デ・ヴェルデはゴッホの収集で有名なオランダのクレラー・ミュラー美術館やパリのシャンゼリゼ劇場にも関わっている。クレラー・ミュラー美術館は採光がよく、大きな窓と機能的な建物が印象的だった。シャンゼリゼ劇場でのヴェルデの関わりは途中までだったらしいが、パリで脚光を浴びるコンサートホールらしく、コンサートホール外の装飾も素晴らしい劇場である。
● アートを重視した初代校長 グロピウス
バウハウスの初代校長 グロピウスは後のマイヤー校長よりもアート寄りで、カンディンスキーやクレーを招聘した人。グロピウスは基本理念として機能や効率と芸術の融合や、ものづくりとアートを融合を目指した。バウハウス創世の時代に、ヴェルデによる優美なユーゲントシュティール様式の校舎を使ったり、カンディンスキーなどのアーティストとの取り組んだりしたのは、それ以前の時代からの文化や建築の継承という意味で刺激があり、よかったのかもしれない。建築重視、機能的な考えのマイヤー校長時代以降に使われた、あのモダニズムの極致のデッサウ校の建物よりは、継続性や芸術的な色合いが濃いこの校舎のほうが、ワイマールという文化的な町とあいまって創業の地としてはふさわしいと感じた。
物資も食料も欠乏した戦後間もない時代に出発したバウハウス。第一次大戦後の数々の物資不足の苦難を乗り越えた後に、今度は政治的な理由でワイマールから追い出され、移転と流浪の歴史が更に続いた。しかし、現在はバウハウス大学ワイマール(Bauhaus-Universität Weimar)として4学部(建築と都市計画、土木工学、アートとデザイン、メディア)を有する立派な大学として成長している。そして新しい校舎やリノベーションされた姿も見事だ。
● バウハウス大学図書館とバウハウス博物館
バウハウス大学ワイマールから町中に戻る際に、途中にあるバウハウス大学図書館(Universitätsbibliothek der Bauhaus-Universität Weimar)とバウハウス博物館(Bauhaus-Museum Weimar) に立ち寄った。バウハウス大学図書館の横には高さ7.5メートル、座面までは3.5メートルの巨大な椅子がある、重さは実に20トンのモニュメントである。また、バウハウス博物館は規模は小さいが、ワイマール内に分散するバウハウスの史跡地図があり助かった。
※現在は新バウハウス博物館が開館し、 バウハウス博物館は新天地に移転済
● ドイツ国民劇場の素晴らしい内装
夜はワイマールドイツ国民劇場(Deutsches Nationaltheater und Staatskapelle Weimar)にて、ゲーテのファウスト第一部を観劇した。ドイツ語であり演出も舞台もモダンで、今ひとつ内容を理解できないが、芝居にオペラ、コンサートと由緒ある劇場なので、やはり入らねばと思った次第。照明含めて内装に見るべきものがあり、一見の価値はある。
(次回に続く)