前回からの続き。ニュージーランドのツーリングで一番の楽しみであったミルフォード・ロード(Milford Road)というナショジオ推薦の絶景の街道がある。
内陸からミルフォードサウンドというフィヨルドの名所に行くまでの道なのだが、これが絶景続きなのである。
訪れた際には、降雨地帯にも関わらず、運良く雨は一滴も降らず素晴らしい天気に恵まれた。
映画『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルンやレゴラスが駆け巡ったような谷間の大平原などの景色がそこかしこにある。バイクで来て良かったと感じた一日であった。
● ミルフォード・ロードの入口 テ・アナウ(Te Anau)へ
● ミルフォード・サウンドに向かう絶景の街道 ミルフォード・ロード(Milford Road)
● ミルフォード・サウンド(Milford Sounds)でフィヨルドクルーズツアーに
● ミルフォード・ロード(Milford Road)帰路ではガス欠に注意
● テ・アナウ(Te Anau) でゆっくり
Invercargil→Te Anau→Milford Sounds→Te Anau 428km
● ミルフォード・ロードの入口 テ・アナウ(Te Anau)へ
朝7時半から営業しているホームセンター E. Hayes & Son Ltd へ必要装備を買う為に立ち寄る。オートバイの旅でこういう大きなホームセンターがあるとなにかと心強い。そして、インバーカーギルを後にして テ・アナウに向かう。
天気もよく快調に飛ばしてミルフォード・ロードの入口 テ・アナウ へ。約160kmほど走って、前日ネットで見つけた湖畔のホテルに荷物を一旦預けた。その足で、絶景の街道として名高いミルフォードロードへ早速向かう。
● ミルフォード・サウンドに向かう絶景の街道 ミルフォード・ロード(Milford Road)
この道はナショナルジオグラフィック誌が推薦しており、旅行の計画時から一番楽しみにしていた道である。内陸からミルフォード・サウンド(Milford Sounds)というフィヨルドの名所までを一気に結んでいるのだから景色が悪い訳がない。この界隈は降雨地帯で有名であるが、幸いなことに雨は一滴も降らず、好天に恵まれた。
ただ、往復で220kmにも及ぶこの道にはガソリンスタンドがない。ミルフォードロードに入る前日、バイクの燃料タンクを満タンにした上で、走行可能距離を測ってみたところ、190kmが限界であった。そこで朝、インバーカーギルのホームセンター E. Hayes & Son Ltd へ立ち寄って追加の燃料タンクを購入したのだ。バイクにガソリンを積むのは危険なのでやりたくはなかったが、燃料が持たないのだから仕方ない。テ・アナウ のガソリンスタンドでバイクにも購入した燃料タンクにもガソリンを充填する。
こんな苦労をしてもミルフォード・ロードはバイクで走る価値は十分。テ・アナウを出発してミルフォード・ロードを走り始めると息を呑むような絶景の連続だ。森を抜けると開けた平原、その両サイドに連なる山々。映画『ロード・オブ・ザ・リング』の中で主人公達が駆け巡っていた場所とそっくりな景色を、そこかしこに見かけることができる。
こんな景色が100kmも続き、ひたすら絶景の繰り返しである。途中、平原で休憩し、ゆったり吹く風を感じながら、映画のワンシーンのような場所を眺めているとオートバイで来てよかったとしみじみ感じた。ただ、行きはのんびりばかりしてはいられない。ミルフォード・サウンドのフィヨルドクルーズの遊覧船の時間に間に合うように走らねばならないので、途中の見どころは帰り道にゆっくりと立ち寄ろうと決めて、少々先を急ぐ。
ミルフォード・サウンドが近づくと山あいの中を走ることになる。ワインディングが気持ちよく、雪をいただいた山々を眺めながら走ることができる。
ところがミルフォード・サウンド直前でトンネルの崖崩れで道が閉鎖。長蛇の列の車にオレンジの服を着た係員が一台一台状況を説明をしておられる。国立公園等でのこういったトラブルはよくあること、慌てても仕方ないのでノンビリ待つことにする。辺りを見回すと後ろは氷河で滝、よく観るとこのあたりも綺麗な景色の最中であった。
1時間ほどでトンネルは復旧する、毎回こういった工事の方の手際の良さには感心する。このホーマートンネル(Homer Tunnel)は掘り抜くのに18年かかったと言う。トンネルを抜けると急なつづら折り、バスを先頭にノロノロと追走するがミルフォード・サウンドは目の前である。
● ミルフォード・サウンド(Milford Sounds)でフィヨルドクルーズツアーに
ミルフォード・サウンドに到着すると、道路閉鎖での遅れが気になったが、無事クルーズ船に乗ることができた。各々の船も乗客を待っていたようで、次々とクルーズ船が出港する。
この ミルフォード・サウンドは南島南西部に位置するフィヨルドランド国立公園の中に位置する。クルーズ船に乗ると1時間ほどで外洋であるタスマン海にでる。ただ、複雑に入り組むフィヨルドのおかげで入り江の中はとても静かである。その為かイルカが船とじゃれ合うように並走したり、オットセイは岩場でノンビリしていたりと穏やかな雰囲気が漂う。海にも関わらず湖面のような静かな水面も印象的だ。
そして、氷河で削られたフィヨルドの崖は1000メートルを超える高さがあり、緑に覆われた崖と青い海と青い空、それらの印影が織りなす景色にも見とれる。崖のあちこちには見応えある滝が海に注がれている。ここは年間7000ミリにも及ぶ降雨量があり、これらの滝から注がれる雨水を含め真水が光を屈折させ、この界隈は独特の生態系ともなっているらしい。
滝の中でもボーウェン滝(Bowen Falls)は落差が最も大きい滝で161mもある。クルーズ船は上手な操舵で舳先が滝につかんばかりに滝に接近してくれる。
● ミルフォード・ロード(Milford Road)帰路ではガス欠に注意
往復220kmのミルフォード・ロード途中にはガソリンスタンドがない。ミルフォード・サウンドに給油機らしきものを見かけはしたが、どうも休みのようだった。やはりガソリンを積んできてよかったと安堵する。帰途につく途中、今朝、テ・アナウで購入したガソリンをバイクの燃料タンクに補充する。ガソリンの持ち運びはあまりやりたくないが、絶景ながらこんな人里離れた場所でのガス欠は避けたい。Honda VT1100のメインタンクは前日の実験で190kmまでだった。帰路途中で給油するのが案配良い。
そして、帰り道は行きに気がつかなかった別の景色を楽しむことができる。山あいでは連峰が眺めながら走り、途中いくつか展望台もあった。
山をくだると湖がいくつか目に入る。人が少なく船なども浮かんでいないので、とても穏やかなな景色。
そして、ミルフォード・ロードからすぐ脇にあるミラー湖(Mirror Lakes)は観光名所のひとつ。透明度が高く湖底まではっきり見える。湖面を眺めていると、逆さまに書かれた「Mirror Lakes」の文字が書かれた看板がある。水面に映ると反転して文字が読めるしくみだ。この日は風があって波が強く、残念ながら鏡面のような湖とはならなかったが、それにしても名称にふさわしいアイデア看板だ。
夕刻も近づき、沈みゆく太陽が山の陰影を深め、刻々と景色が変わる様を眺めながら走ると、テ・アナウ湖が見えてきた。
● テ・アナウ(Te Anau) でゆっくり
テ・アナウの言葉の意味はマオリ語で「渦巻く水の洞窟」、ツチボタルを観ながらの洞窟クルーズなんかもあるらしい。そして、ニュージーランドで第2の大きさのテ・アナウ湖は静かで美しい湖。湖畔沿いにはホテルが並ぶ。また、この地は、今日廻ってきたミルフォード・ロードなどフィヨルド国立公園の玄関に位置するので、観光地として街も整備されている。
そのテ・アナウでは、キングスゲート ホテル テ アナウ(Kingsgate Hotel Te Anau)に宿泊することにした。テ・アナウ湖を前にした立地が気に入り、前日にネットで予約したが到着してみるとレストランも近く、湖畔を散歩するのにもちょうど良い。室内も清潔でリラックスできそうだ。
夕食は湖畔を散歩しながら、雰囲気のよさそうなステーキハウス「The Moose Bar & Restaurant」に向かった。ステーキメニューがふんだんにあり迷うも、定番そうなキノコソースがけのステーキを注文した。ニュージーランドは見た目がダイナミックだが、お味は悪くない。一緒に注文したスープもなかなかで、ワインやビールもすすむ。走り疲れた身体には心地よい食事であった。
ホテルへは再び夕暮れの湖畔を散歩しながら戻る。(次回に続く)