生の舞台ならではの抱腹絶倒の色物演芸 浅草フランス座 演芸場 東洋館  / 大衆芸能の魅力 1

生の舞台ならではの抱腹絶倒の色物演芸 浅草フランス座 演芸場 東洋館 / 大衆芸能の魅力 1

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ここ数年、演芸の面白さを知り、落語だけでなく色物と言われる漫才やコント、腹話術などを見に度々浅草に出向いている。4時間以上笑いの場に身を置き、次から次へと楽しませてくれる生の舞台は実によいもので、身体全体で笑う楽しみを覚えた。
その聖地となるのが浅草の演芸場「東洋館」(旧フランス座)。ここはストリップ劇場を出発点とし、ストリップの幕間でお笑いコントなどを仕掛けた故に、渥美清、三波伸介、伊東四朗、萩本欽一、ビートたけし等、多くの芸人が活躍し、巣立っていった場所である。
今ではストリップ劇場の事業から撤退し、色物の演芸場 東洋館(旧フランス座)と浅草演芸ホールの2つのお笑い劇場が建物に入っている。
両ホールとも予約が必要な訳ではないので、当日の気分や出番を確認して色物か落語か見るものを選べるのがよい。そしてなによりも浅草は食事が美味しいのが嬉しい。そんな浅草と東洋館、フランス座について綴ってみた。

● 虎姫一座に浅草の演芸史を教えてもらう
● 街場の生きた笑いのある 浅草フランス座 演芸場 東洋館
● 美味しい浅草

● 虎姫一座に浅草の演芸史を教えてもらう

昨年、残念ながら解散してしまった「浅草 虎姫一座」、浅草レヴューが小規模ながら復活した貴重な舞台であっただけに、たいへん惜しい。

一座の演目の中で思い出深いのが『VIVA!昭和歌謡カーニバル!!』、戦前戦後の名曲の数々を使い、ダンスや寸劇と共に浅草の発展を振り返る好企画である。

エノケンや笠置シヅ子の歌と共に浅草六区の生い立ちを知ることができ、舞台上ではモガの時代や戦後の洋装の数々がリアルに着用されている様を見ることもできた。

虎姫一座のレヴュー(公式ホームページより)

一座のパフォーマーの可憐かつ芸達者さ故に、平成生まれの若者達が演じても戦前の昭和歌謡が見事にはまっている。そして、衣装や楽曲から当時の日本が欧米のそれを、どことなくデフォルメしながら真似ている様に、独特の華やかさを感じ、当時の銀座や浅草はさぞ花咲く雰囲気だったのだろうと思わせた。

そんな華やかなりし浅草六区も今ではすっかり様変わりしてしまった。劇場は減り、平成になっても、かろうじて残っていた映画館は、今ではすべて廃業してしまった。超B級テイストの映画を上映し、まばらな客席に紫煙が漂う、懐かしい浅草の映画館は時間をつぶすのに手頃で、居心地も良かっただけに本当に残念である。

● 街場の生きた笑いのある 浅草フランス座 演芸場 東洋館

そんな浅草の中で、お笑い劇場である「浅草フランス座演芸場東洋館」は今でも健在だ。漫才ブームはとっくに過去のもの、今や落語ブームで 東洋館の建物1階にある浅草演芸ホールは賑わっている。されど、色物の演芸場のフランス座 東洋館も立派に奮闘中である。お客さんこそまばらの時もあるが、いつ行っても初っぱなから観客はしっかり入っている。そして、数々の芸人を輩出した演芸場だけあって、訪れれば半日たっぷり楽しむことができる。

落語を見る客で盛況の浅草演芸ホール前

東洋館の出し物は色物と言われる落語以外の演芸、つまり漫才やコント、紙切りや腹話術、曲芸などが楽しめる。これが昼から夕方4時すぎまで続く。4時間超を演芸の世界にたっぷり漬かることができるのだ。マチネの4時間超と言えば、ワーグナーのオペラと同じ長さで、オペラなら最長の部類。これが3000円で楽しめるのだから、日本の演芸はとてもリーズナブルである。

曲芸も間近で見ると迫力ある

そして、東洋館では定席を多く持っているボーイズバラエティ協会や東京演芸協会所属の芸人さんたちの芸を楽しむことが多いが、この団体らは「ボーイズ芸」という楽器を使う音楽ショーが中心であり、音楽好きの自分にはたまらなく魅力的にうつる。

これまでも、出番冒頭でいきなりプッチーニの「私のお父さん」を歌い出した芸人さん(王子菜摘子さん)がおり、調べたところ国立音大出の方。スーツラックを相手にした1人ミュージカルは見物だった。彼女の師匠にあたるらしい「びり&ブッチィー」のピエロ劇でも「夜の女王のアリア」が上手に使われたりもして、たまにこういった格調高い?演芸も披露される。

また、自衛隊の第1空挺団(落下傘部隊)を定年退職された方で、軍隊ラッパの名手(トリトン海野さん)のらっぱ漫談も面白かった。軍隊ラッパの位置づけを面白おかしく聞かせてくれた上に、奏されるリアル軍隊ラッパの音色の柔らかさに驚いた。更には起床ラッパの日米の違いなんかも披露してくれた。

テレビ出演も多いグレート義太夫さんは演奏も歌も立派で、お話も流石といった具合。たけし軍団時代の裏話なんかも聞かせてくれたが、これが抱腹絶倒の自虐話。たけし軍団の当時の過激な演出状況など、テレビではまず聴けないお話が盛り沢山だった。

そして、旅好きに嬉しかったのは三味線による世界一周の語りをされた藤本芝裕さんの芸。この方は元添乗員だったらしく、各国の歌を三味線を弾きつつ歌い語る様は三味線の音とあいまって、これまた面白く楽しい。特に知っている曲を三味線で聴くと、この楽器の音色の豊かさに驚く。その時聴いた三味線で弾かれた「上海の花売り娘」は大傑作だった。

エレベータ内にある座席表

音楽関係ばかりではない、髪切りの妙技には毎回舌を巻くし、生で観る腹話術にはいつも感心する。中でも「ポンちゃん一座」の腹話術は、人形が子供ではなく、お婆さんや赤ちゃんの人形を使った腹話術芸。お婆さんのきわどい苦言と客いじりに爆笑しっぱなしで、年寄りや赤ん坊を使って斜め上からの下ネタや手厳しさは、毎度客の笑いをうまく引き出す。

もちろん、中には場内が凍り付くようなすべりまくる芸もある。ただ、自分より年上の年齢高めの芸人さんも多く、こういう時はなんとなく神妙に眺めてしまう。若手が滑りまくる時は、心の中で声援を送る観客の皆さんの声が聞こえるようだ。それでも長く舞台に立っている方々だけあって、冷えた客席は次の演者がうまく回収している。

客席がまばらな時も

観客が少ない日はアガリを気にする芸人のぼやきや途中入場の客いじりが面白い。客との距離が近いと何でもありである。トピックになるような時事ネタやきわどい政治ネタは世事に通じた芸人さんならではで、公共の放送では絶対見ることができない面白さだろう。
多くの芸風を次から次へと他の観客といっしょに4時間も楽しみ、笑いころげ、おひねりを通じて楽しげに芸人さんとからんだり、とにかく生の舞台は面白い。そして、ビールや酎ハイ片手のほろ酔い気分での観劇は幸福感がこみあげてくる。

帰宅してから個々の芸人さんたちの背景を調べるのも楽しい。皆さんたいていは別の仕事や顔をお持ちで、劇団に所属していたり、舞台監督や放送作家の顔をもっていらしたりする。そんな中で、このところお笑い芸人さんたちへの関心が高まり、東洋館やフランス座関連と芸人さんたちの本を読んでいる。(続く

● 美味しい浅草

東洋館で演芸を楽しむ前後の食事も楽しみだ。そして、長丁場の観劇に浅草はとても適している。食べ物屋に恵まれている上に、昼から美味しいお酒が飲める店が多いからだ。東洋館は昼の12時が開演なので、ささっとお昼ご飯を食べ、少々お酒もいただき、ほろ酔い観劇というのも気分がよい。よく出向くお店はこちら。

・馬賊 浅草本店
麺を打つ音が店中に響き渡る本格的な手打ちラーメンの名店。まるい味のスープにモチモチして太さが微妙に異なる麺の味わいが癖になり、通い続けている。イカやエビの入った海鮮焼きそば「五目焼きそば」も絶品。

・水口食堂
休日で昼酒なんかもいただいてしまおうという時に最適。豊富なつまみメニューに定食もたくさんある。名物のコロッケなど揚げ物にビール、魚の煮付けに熱燗など、なんでもござれなのが頼もしいお店。東洋館に近いのでギリギリまで呑んでいられる(笑)。

・モンブラン 浅草店
ハンバーグの名店。雷門通りのアーケードに地面ギリギリにおかれた食品サンプルが目印。どろりと多めに掛かったチーズが美味しいオランダ風ハンバーグなど、ハンバーグのソースに横のパスタをからめて食べるのも美味しい。芸人さんも多く訪れている浅草の人気店。

・康楽
店先で服は売っているし、独特のショーケースにちょっと腰がひけるお店。されど、おばさんは気さくな3代目。焼け野原から続いて80年やっている浅草の街中華の名店。「うまにそば」は具だくさん、ヒレ肉を使ったカツ丼は特上のお味。

・カツ吉
薄切りの豚肉を重ねたミルフィール仕立てのとんかつ。肉の間に納豆やら面白い具を詰めてあるものがあるが、定番ぽいチーズとんかつはイチオシ。さっぱりした揚げ方でサラサラ衣なので、サクサクと食べ進む。胃がもたれるなんてことはない上品なとんかつ。

・甲州屋
界隈の有名店とは一線を画す普通のお蕎麦屋さん(笑)。細めのお蕎麦を各種薬味でたらふく食べられる。お燗を頼むと、おしんこがついてくるので、それをアテにチビチビやりながらお蕎麦を待ち、お蕎麦を手早く手繰ってさっと店を出るみたいな案配がよいお店。応対丁寧な三角巾姿の店員さんたちも気持がよい。

・大学いも千葉屋
東洋館で、さんざん笑わせてもらった後に、お土産に最適なのが、こちらの大学いも。帰宅後、甘いお芋と熱いお茶で一息つける。

大衆芸能の魅力 2 へ 続く

東京都 / 浅草

<詳細情報>
・浅草フランス座演芸場東洋館
〒111-0032 東京都台東区浅草1丁目43−12
https://www.asakusatoyokan.com/
・馬賊 浅草本店
〒111-0034 東京都台東区雷門2丁目7−6
・水口食堂
〒111-0032 東京都台東区浅草2丁目4−9
・モンブラン 浅草店
〒111-0032 東京都台東区浅草1丁目8−61階
・康楽
〒111-0032 東京都台東区浅草2丁目4−5
・カツ吉
〒111-0042 東京都台東区浅草1丁目21−12
・甲州屋
〒111-0042 東京都台東区寿4丁目16−5
・大学いも千葉屋
〒111-0032 東京都台東区浅草3丁目9−10

○ 所在地地図