アメリカツーリング 3 醍醐味編 / 西海岸で英国首相チャーチルの史跡に出会う

アメリカツーリング 3 醍醐味編 / 西海岸で英国首相チャーチルの史跡に出会う

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オートバイでのアメリカを旅すると、国のスケールに驚く体験ができる。なにもかもが大きく、身体に触れるように押し寄せてくるのだ。その筆頭は大自然の雄大な景色である。荒野や砂漠は果てしなく続き、延々と連なる山や谷は深く壮大である。そして、すれ違う大きなトレーラー、長く連結された鉄道列車など目に飛び込むものすべてが巨大である。
自分ひとりの旅では選択から漏れてしまっていたであろう巨大なクレーター見学、朝晩2回のグランドキャニオン詣で、そして英国首相チャーチルの出生を知った小さな郷土資料館、これらはフリーダムアメリカ社の魅力的なツーリングツアーのおかげで出会った貴重な旅の経験である。
アメリカを走る楽しさ
圧巻だった景色の数々
廃坑の町 ジェロームで出会った英国首相チャーチルの史跡

● アメリカを走る楽しさ

アメリカの都市は何度か訪れたことはあったが、田舎の町や村を訪ねるのは、このフリーダムアメリカ社のツーリングツアーが初めての体験であった。どの町にも目抜き通りにはタウンホールや銀行があったり、お洒落なレストランがあったり、個性ある町の表情があって楽しい。

そして、鉄道に出会えば、あまりにも長い貨物列車に見とれた。連結している貨車は牽引車3台であると80台あまり。牽引車が4台の時は優に100台を超える車両構成になっている。いろいろな色と形の列車が延々と続く様は見ていて飽きない。

時折見かける長い貨物列車
時折見かける長い貨物列車

また、幹線道路をバイクで走ればコンボイが真横を爆走している。バイクであると、この大型トレーラーが脇を追い抜いていく威圧感は十分である。身体に大きな風圧を感じ、目の横をかすめる大きな車体と地響き、船が陸地を走っているかのようだ。されど彼等の運転マナーはとても紳士的である、時には窓から手を出して、こちらに向かって振ってくれることもあった。こういったフレンドリーな挨拶もアメリカ旅行ならではである。

大型トレーラーに追い抜かれながらノンビリ走る
大型トレーラーに追い抜かれながらノンビリ走る

挨拶と言えば、日本ではすたれてしまったバイク乗り同士の挨拶サインもアメリカでは健在だ。アリゾナを走るハーレー乗りたちの装いは概ねは日本人のイメージ通り、いかつい感じの方々だ。しかし、この方々がニコニコしながらピースサインをしてくれる。

車が少ない地帯では余計嬉しいピースサイン
車が少ない地帯では余計嬉しいピースサイン

バイカーの装いも様々、なぜか上半身裸の人もいてこれもアメリカ風。しかも、バイク同士がすれ違うとほぼ確実に遠くからピースサインを送ってきてくれる。そのピースサインもちょっとカッコつけて斜め下に手をだす方が多い。特にハーレー乗りは片側3車線の対向でも(6車線離れていても)遥か向こうから「ピース」サインを送ってきてくださる。

タンデマーも揃って斜め下ピース!
タンデマーも揃って斜め下ピース!
なぜか裸でピース!
なぜか裸でピース!

ドライブインなどでの休憩中では、同じくアメリカ人ライダーも休憩中だったりする。こういった時にフリーダムアメリカ社の木村氏は接点をつくってくださったこともあった。アメリカ人ライダーは立派な体つきでタトゥもあり、近づきがたい風体の方が多いが、話をしてみるといたってフランクで同じバイク乗りとして親しげに接してくれる。

これはその後単身で北米を走った時も同じであった。特に一人で休憩していると何気なく話しかけてくれることも多い。ちょっとシャイな日本とは異なる流儀で、これも海外ツーリングの楽しみであることを知った。

● 圧巻だった景色の数々

そして、アメリカのバイクツーリングの醍醐味は雄大な景色を満喫できることだろう。木村氏のお薦めでグランド・キャニオン(Grand Canyon)には2度引率してもらった。1度目は夕食後の夕暮時、ピックアップトラックに乗せてもらい渓谷に向かった。日没時間は20時頃、その30分前からベストスポットで待機をしたが、夕景色よりも初めて見るグランドキャニオンの雄大な景色に圧倒されてしまった。そして、いよいよ日没が始まると、夕日の当り方で刻々と変わる渓谷の表情を見て、しみじみと米国旅の素晴らしさを噛みしめた。

夕刻のグランドキャニオン @Grand Canyon National Park
夕刻のグランドキャニオン @Grand Canyon National Park

翌朝は朝日に照らされるグランドキャニオンを、前日とは反対の静かな場所から眺める計画だった。このブログのトップの写真(©Freedom America Inc.,)はフリーダムアメリカ社の木村氏に、この時撮っていただいたものだ。雄大な風景に見とれており、自分が写真を撮られていることなど全く気がつかなかったが、旅を共にしたオートバイと壮大な風景に朝日が加わったこの写真は最高の旅の記録のひとつとなっている。

グランドキャニオンでの日の出 @Grand Canyon National Park
グランドキャニオンでの日の出 @Grand Canyon National Park

加えて、コロラド川が馬蹄形に蛇行しているホースシューベンド(Horseshoe Bend)、映画「イージーライダー」と全く同じ場所でモニュメントバレー(Monument Valley)に向かっていく道路、溶岩流跡と並走しながら向かった巨大隕石の直径1.3キロクレーター(Barringer Crater / Meteor Crater)となにもかもが新鮮な大自然の景色だった。

ホースシューベンド @Horseshoe Bend
ホースシューベンド @Horseshoe Bend
メテオクレーター @Barringer Crater / Meteor Crater
メテオクレーター @Barringer Crater / Meteor Crater

メキシカン・ハット(Mexican Hat)でのオプションツアーも思い出深い。地名の”MexicanHat”はメキシカン帽子のような岩があったことに由来し、この当りは奇岩が多い。モーテルにバイクを置き、ピックアップトラックに乗せてもらい、神々の谷(Valley of the Gods)と言われる奇岩だらけの荒野に連れて行ってもらった。脇道の悪路をひた走ると突然「神の手」のように地下から隆起している岩がそびえ立っている。

神の手のような岩 @Valley of the Gods
神の手のような岩 @Valley of the Gods

更に岩山を登り、着いたその地はMonument Valley まで臨める高台の絶景ポイント(Muley Point East)であった。この景色には息を呑んだ。当日は早起きをして少々疲れがたまっていたのだが、それを吹き飛ばす絶景で、今でも頬を撫でる風と共に思い出す景色である。

ミュレイ・ポイント・イースト @Muley Point East
ミュレイ・ポイント・イースト @Muley Point East

● 廃坑の町 ジェロームで出会った英国首相チャーチルの史跡

フェニックス(Phoenix)からセドナ(Sedona)へ向かう途中にジェローム(Jerome)という高台の小さな町があった。以前、ここには銅鉱山があり1920年頃は1万人以上の人口を誇っていた大都市だったと言う。荒くれ者の集る都市だったようで、鉱山労働者、密売人、ギャンブラー、売春婦が一同に会し” Wickedest Town in the West(西部で最も邪悪な町)”と呼ばれた。

在りし日のジェローム @Jerome
在りし日のジェローム @Jerome

その銅山も1953年に閉山となり、1500mもの高台にあるこの町は今は人口が500人足らず、今ではゴーストタウンを売りにする観光地となっている。

この町へはコットンウッド(Cotton Wood)という町からタイトなワインディングを駆け上がっていくのだが、ハーレーは車高が低い為、ちょっと傾けただけでステップがガリガリ地面に擦ってしまって難儀した。

ジェロームのJが刻まれた山 @Jerome
ジェロームのJが刻まれた山 @Jerome

そして、到着した高台のジェローム州立歴史公園(Jerome State Historic Park)博物館の前から見上げると空は抜けるような青空。そして、標高1500mの高台なので近郊を一望できる。付近には野鳥ハミングバードも飛んでいてたいへん自然豊かなところ、そよ風がとても心地よい。

ジェローム州立歴史公園入口と鉱山施設跡 @Jerome State Historic Park
ジェローム州立歴史公園入口と鉱山施設跡 @Jerome State Historic Park

そして、この頂には鉱山経営者のダグラス氏の豪邸を改造した歴史資料館がある。当時としては最新の機械工具が多々展示されており、第一次世界大戦の時代にありながら、既に高い米国の民間技術力が興味深い。また銅山の開拓史だけでなく、経営者ダグラス氏の立身出世物語の展示品も多く、経済成長著しかったジェロームのモニュメントとなっている。

それらの展示をつらつら眺めていると、英国首相チャーチル関連の展示に出会った。ジェロームの銅鉱山の主要投資家の一人が、チャーチルの母親ジェニー・ジェロームのいとこだったらしい。その関係でこちらに展示されていた。チャーチルの母親がアメリカ人であることを自分が知ったのは、まさにこの展示からであった。

英国首相チャーチル関連の展示パネル @Jerome State Historic Park
英国首相チャーチル関連の展示パネル @Jerome State Historic Park

チャーチルは大戦中、苦境に立つ自国英国を救うべく、アメリカ議会で演説をおこなった。その時の冒頭のジョークで「もし私の父がアメリカ人で、母が英国人だったら。本当はその逆ですが。(米国議会の議員席を指し)私はその席に座っていたでしょう」とチャーチルは議会で発した。茶目っ気のある彼の言葉に米国議会を大うけの様子。そして、結果はご存じの通りアメリカは第二次世界大戦で英国を援助し続け、やがて参戦することになる。

ひょんなことであるが、こんな田舎の資料館から歴史の1頁を学んだよい思い出のひとつとなっている。

アメリカ / アリゾナ、ユタ

<詳細情報>
フリーダムアメリカ社(Freedom America Inc.) アメリカ オートバイツアー・レンタル専門
・グランド・キャニオン(Grand Canyon National Park)
Grand Canyon National Park
・ホースシューベンド(Horseshoe Bend)
Horseshoe Bend
・モニュメントバレー(Monument Valley)
Monument Valley
・メテオクレーター(Barringer Crater / Meteor Crater)
Barringer Crater
・神々の谷(Valley of the Gods)
Valley of the Gods
ジェローム州立歴史公園(Jerome State Historic Park)

・ツーリング全体ルート
Day1:Phoenix – Cotton Wood – Jerome – Sedona – Flag Staff – Tusayan 434km
Day2:Tusayan – Cameron – Page – Monument Valley – Mexican Hat 595km
Day3:MexicanHat – Monument Valley – Cameron – Wupatki National Monument – Meteor Creter – Holbrook 503km
Day4:Holbrook – Show Low – Glove – Apach Junction – Phoenix 373km
全走行距離 1,911km

<海外ツーリング特集>
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*海外でのオートバイレンタル方法記事

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