ベルリン滞在中、自転車をレンタルして思う存分街の雰囲気を楽しんだ。ベルリンの都市圏は思ったよりコンパクトで、自転車があればたいていの場所へ行ける。真冬に雪が積もっても事情は同じで、ベルリンっ子たちは雪の日でも元気に自転車にまたがっていた。
ベルリン市内では明瞭な自転車専用レーンが道路に示されているので、とても走りやすい。これまで異国でのオートバイ旅は何度かおこなっていたが、自転車を長期間レンタルするのは初めてのことで、その快適さに夢中になった。都市を巡るにはうってつけの移動手段である。オートバイでは通り過ぎてしまう店先のディスプレイや、散歩中の犬の表情も、自転車なら見逃さず愛でることができる。生活感に触れる機会はバイクよりも格段に多い。
○ 楽しいベルリンでの自転車ライフ
○ Swapfiets(スワップフィッツ)で自転車サブスク
○ 雪でも自転車でGO!
○ ベルリンでサイクリングを楽しむ
○ 自転車でベルリンのあちこちへ
○ 1989年に訪れた場所を自転車で再訪する
○ 楽しいベルリンでの自転車ライフ
海外で長期に自転車を借りて我が物のように乗り回すのは初めてのことだったが、長期滞在の際に手元に自転車があることがこれほど便利とは思わなかった。まず足腰が鍛えられる(笑)。徒歩と自転車とは使う筋肉が違うようで、乗り出して数日間はふくらはぎがパンパンになった。
そんなこともありながらも自転車の力で行動範囲が拡がったのは素晴らしい体験であった。アパートの目の前に自転車を置き、さっとまたがって市場に買い物へ行く。朝からひいこら漕いで遠出をする。これらをその日の気分で選べるのがよい。自転車なら目的地の変更も自由自在である。気になる店を見かけたら歩道に停めて入ればよいし、小腹が空けばちょいと立ち食いスタンドで軽食をとることもできる。実に塩梅のよい移動手段である。おかげであっと言う間に町にも慣れた。

これまでの旅先の移動手段では、オートバイ→レンタカーときての自転車である。年齢とともに退化と思っていたが、これは進化かもしれない。
とにもかくにもベルリンの人たちと一緒に走っている感覚がとても良い。デリバリーのお兄ちゃん達(こちらはUberではなくWoltが多い)は別として、皆さん丁寧で生活感が漂う走りっぷりで、親切に道を譲り合うし、自転車での専用レーン内での追い越しも上品である。子供を乗せ坂道を必死に走るママさんは乱暴な運転をされる方が多いが、これまた周囲の皆さんは寛容に接している。
自転車のおかげでリアルなベルリンの生活に触れた気がした。

○ Swapfiets(スワップフィッツ)で自転車サブスク
ベルリンで借りた自転車はオランダの会社 Swapfiets(スワップフィッツ)のもの。今はやりの自転車サブスクである。料金は1か月で60ユーロ弱であった。この金額には約20ユーロの入会金も含まれている。

長期間借りれば借りるほど安くなる仕組みだが、逗留宿の目の前に自分の自転車を置いておけるメリットもあるので、この価格であれば1ヶ月のレンタルでも乗り捨てレンタサイクルよりメリットがある。それに地下鉄など1ヶ月分乗り降りする金額を考えれば格安な移動手段でもある。
Swapfietsで自転車を借りるメリットが他にもある。まずは、バンクや故障時に自転車をすぐに交換(Swap)してくれることだ。一度借りてしまえば日々の不便がないばかりか、慣れぬ修理に手間取ることもない。実際、レンタルした数日後に店に戻ってサドルの高さを再調整してもらったが、とても親切な対応ぶりであった。

もう一つは盗難について心配無用なことである。盗難時も保険対応であるため、欧州で頻発する自転車盗難への備えが整っている。そもそも Swapfietsの自転車は前輪が青色で派手な色なので、レンタルであることが一目瞭然で、それだけで盗難されにくいというメリットもある。
自転車には施錠用のロック機構が2つ付いており、1つが一般的なタイヤを固定する円形の施錠(リングロックタイプ)、もう1つは頑丈で太いチェーンロックである。この2つのロックをしないと盗難時には保険適用にならない。

他の人々も駐輪時には例外なく鎖でしっかりとロックしている。街中いたるところに駐輪用のバーが設置されているが、人が集まる施設前はそれでも足りない場合がある。そんな時はお構いなしで道標、街灯、街路樹まで使って、いたるところに自分の自転車をくくりつけている様子である。

この鎖がかなり重くデメリットでもある。そして、外した後は鎖が垂れ下がらないように車体にチェーンを巻いて仕舞うのだがこれもいちいち手間ではある。しかし防犯上はいたしかたない。

人によってはこのSwapfietsの自転車は重すぎると感じるかもしれない。その場合はちょっと料金が高くなるが電動自転車を選択する手もある。ただ、バッテリーの管理も面倒だし、横を見れば子供2人を乗せて爆走するドイツ人ママさんなんかも多数いらっしゃるから、そんなこと気にしてられないという気分にもなる。

ちなみにレンタル手続きは簡単である。Swapfiets(スワップフィッツ)のサイトから専用アプリをダウンロードし、自転車を借りる店舗を決め、貸し出し予約したら、その時間に自転車を受け取りに行くだけである。丁寧なショップスタッフから概略説明を聞けば、すぐに街に乗りだしできる。
自転車の返却も返却日の予約をして、その時間に自転車を持って行けば完了である。あとは勝手にクレジットカードから代金が引き落とされる。

尚、レンタルする際に月額3ユーロほどのバスケット(かご)は取付けたほうがよい。買い物したものを入れたり、ジャケットなどちょい置きしたりなどの際に便利であった。また、石畳などデコボコ道もあるので、手に持たずこれくらいの大きなサイズのバスケットになんでも放り込むほうが妥当であった。

○ 雪でも自転車でGO!
ゆったり朝食を食べていると、窓の外から子供たちの歓声が聞こえる。借りているアパート向かいは校庭になっており、通学してきた子供たちが雪合戦を始めたのだった。まるでブリューゲルの絵画のようで美しく楽しげな景色である。ブリューゲルが活躍した当時も、このような歓声が響いていたのだろうかと思いつつ、積雪のなか自転車で出かけるべきか迷った。

夜半から突如降り出した雪はあっという間に窓の外のベルリンを真っ白にした。気になって夜中にブランデンブルク門のライブカメラを見ると、早々に除雪車が動いて路面を整備している。朝、もう一度見直すと自転車に乗っている人もいるようだった。

そこで、無理を承知で自転車で出かけてみることにした。走ってみると、車道と同様に自転車専用レーンも除雪されており、問題なく走行できた。それに歩くより自転車のほうが靴やズボンが濡れないことにも気がつく。徒歩の方々を眺めていると、積雪の歩道を歩くほうがたいへんそうでもある。
また、車道も歩道も積雪のために走行可能なところがわずかしかなくても、歩行者と自転車は譲り合って道路を共有している。

朝に子供の雪合戦を眺めたこともあって童心に返ってしまい、雪国と化したベルリンをラッセル車のように雪を蹴散らしてサイクリングするのが楽しくなってきた。雪はパウダースノーなので積雪にも関わらず余裕で走ることができる。ティーアガルテンに入ると、この雪であるからひと気もなくて、凜とした空気と言い、とても気分が良い。

○ ベルリンでサイクリングを楽しむ
やはり自転車の便利なところはドア・ツー・ドアで移動できることだ。ベルリンには至る所に駐輪用のバーがあり、どこでもすぐに自転車を停められる。一方、電車やバスを利用すれば駅やバス停まで徒歩移動をしなくてはならない。小ぶりな都市では自転車のほうが圧倒的に短時間で移動できる。

そして、欧州の各都市はどこも自転車専用レーンが整備されており自転車乗りには天国である。車道だけでなく歩道部分からも自転車レーンは明確にわかれているので、歩行者も安全であり、人にぶつかることもない。また、工事中などでやむなく歩道走行する際には、臨時ながらも明確に臨時自転車レーンが記されている。黄色い矢印などで大きく表示されているので、旅行者でも自転車レーンを間違えたりすることはない。
そして、驚いたことに右折する車に巻き込まれないように、車道の真ん中にも自転車専用の直進レーンがあることだ。もう至れり尽くせりなのだ。

そして、どの自動車も自転車に配慮した運転をしているので、車道脇を走っていても危険を感じたことは一度もなかった。そして、雨や雪の路面を走っていても泥はねすらされない。ベルリンの道路に慣れない自分のほうがよっぽど自動車に迷惑をかけてしまっていたかもしれないほどだ。
ちなみに車道はどこも道幅が広くて信号は少なめだ。そして、自転車走行レーンがあるので逆走は禁物。つまり自動車道に合わせて走るため、目的地への道順はあらかじめ決めておいたほうがよい。自転車でも今回はグーグルマップの世話になりっぱなしであった。

道路では逆走ができないので、レンタル時にSwapfietsのスタッフに広い道路を自転車でUターンする仕方を尋ねた。すると「誰も見ていなければGO」と言われ、それで終わりだった(笑)。
○ 自転車でベルリンのあちこちへ
・ティーアガルテン Großer Tiergarten
やはり1番よく自転車で走ったのはティーアガルテンである。自転車を借りた初日にまず出かけたのもここだった。その日は好天で気持ちのよい日だったので、寒いながらも広い公園の森を走るのは爽快だった。

池は完全に凍り、凛とした空気のなか、夕日の木漏れ日が美しい散策であった。こんな寒い日にも散歩している方がちらほらいる。長い冬である、やはり太陽が恋しいのだろう。自転車でノロノロ走っているとベンチに座っているおばあちゃんから話しかけられたりもした。

別の日には高さ70m近い戦勝記念塔に登りもした。自転車だと塔の真下に駐輪することができる。

逗留していたアパートがアレキサンダー広場近くだったので、ベルリンのフィルハーモニーにコンサート通いする際は、西に向かうためにウンターデンリンデン通りとティーアガルテン内を必ず通った。
ティーアガルテンを抜けたところにベルリンフィルの本拠地であるコンサートホール、フィルハーモニーがあるからだ。

自転車だとアパートからフィルハーモニーまで30分ほど、地下鉄駅からフィルハーモニーまではけっこう歩くので、自転車と所要時間がほとんど変わらない。そこで、雪でも自転車で通うことになった。

フィルハーモニーの向かいには図書館があり、ティーアガルテンと通ってフィルハーモニーに自転車を停め、その図書館でコンサートの開演まで時間をつぶすのが日課になった。

そして、ベルリンフィルの演奏を満喫した後、夜は鼻歌を歌いながら自転車を漕ぎ帰路につく。深夜、コンサートが終わってからの帰宅は酷い雪降りになっていたこともあったが、ベルリンでは子供を含めて皆さんガンガン普通に自転車で走り回っているのが印象的であった。

時には終演が23時50分という信じられないコンサートもあった。この時は、ハイドンの「告別」交響曲のように、演奏中にも関わらず1人消え、2人消えと「観客」が減っていった。ベルリンの聴衆もここまで遅くなるとは思ってもみなかったことだろう。ホールからアパートに帰るには、シュプレー川を2回渡らなければならないが、その橋の上の寒いこと!凍えそうなほどであった。


・蚤の市 Mauerpark Flohmarkt
休みの日には坂の上の大きな公園で開かれる蚤の市 Mauerpark Flohmarktへ朝から出かけた。けっこうな規模の市がたっており、ガラクタ屋、飲食屋台、デザイナー作の雑貨店と出店されている店舗も雑多である。
露天でボロの詰まった段ボールからお宝を探す楽しみにベルリンっ子の皆さんも夢中である。
これだけいろいろあると稀に名画が出てくるのもわかる、日本のHARDOFFにはない楽しみである。こういったなにげないショッピングにも自転車は大活躍であった。


・旧西ベルリン地区
旧西ベルリン地区にも自転車で行った。アレキサンダー広場で暮らしていると旧西ベルリン方面に行くにはちょっと苦労する。広いティーアガルテンを突っ切ってさらに先にあるからだ。実は前回10年ほど前のベルリン滞在はこちらに逗留した。かつて泊まったホテルを訪ねてみたところ、すでに廃墟となっていた。
現在はすっかり明るくゴージャスな旧東ベルリンに比べ、旧西ベルリンはちょっと暗いし更に鄙びてしまっている感じがしてしまう。それでもKaDeWe百貨店やレコード店など買い物でフラフラするには自転車はうってつけであり、今では古いベルリンが残っている楽しい場所でもあった。


・テンペルホーフ空港 Flughafen Tempelhof
この空港が高台にあるとは知らず長い坂道で一苦労した。子供を乗せたパワフルなママチャリを除いて皆さん歩道を自転車を押しながら登っている。空港は航空史上の史跡であり、建造物としても圧巻である。そして何より広大である。自転車で来て正解だったと思った。


○ 1989年に訪れた場所を再訪する
自転車を借りたので、ベルリンを縦横無尽に走り回れるため、1989年に訪れた場所をあらためて再訪することにした。
当時はベルリンの壁が崩れる直前であり、その後の東西統一によって街は様変わりしているため、同じ場所を探すのに難儀だった場所もある。それでもなんとか大昔のベルリンと同じ場所を探しあてて写真を撮ってみた。
1.ティーアガルテンの6月17日通り (Straße des 17.Juni)
当時のこちら側は西ベルリン。ブランデンブルク門から先は東ベルリンとなり行き停まりになる為、交通量は極端に少なかった。現在の6月17日通りはベルリンを横断する幹線道路となり、交通量も大幅に増えている。
場所はソビエト戦争記念碑前 Sowjetisches Ehrenmal im Tiergarten 辺り。


2.ショッピングモール Kranzler Eck Berlin(Kurfürstendamm)
当時は西ベルリンの繁華街だった。つまり活況を呈していた地区の今昔の写真となる。今は旧西ベルリンのほうがおとなしい感じに変わっている。落ち着きがある一方で少し寂れた感も感じる。
場所は Kranzler Eck Berlin 前辺り。


3.ベルリン大聖堂 (Berliner Dom)
当時の東ベルリンだが著名建築物故に今と大きな変化はない。ただし現在は観光客が聖堂前にわんさかいる。当時は東ベルリンに入るには強制両替など手続きが必要で観光客はもちろん人影自体が少なかった。
場所は Schlossbrückeを渡った大聖堂の対岸になる。


4.ウンターデンリンデン通り (Unter den Linden)
当時の東ベルリンでは、大通りなのに人の気配がほとんどなかった。今は周囲も建替えが進み、中央帯には屋台まで出店している。
場所はブランデンブルク門を背にして、ちょっと先(Freedom Square)辺り。


5.ブランデンブルク門東 Brandenburger Tor
東ベルリン側は門までかなり距離があり衛兵がいた。これへの当てつけとしてキスするカップルの写真が撮れた。現在のブランデンブルク門は平和そのもの、観光客やイベントスタッフなどでごったがえす。


6.ブランデンブルク門西 Brandenburger Tor
西ベルリン側は門のすぐそばに壁が造られた。現在は壁のあたりは往来の激しい車道になっており、周囲の雰囲気もかつてとは大きく異なる。そして、この手前には広大なティーアガルテンが拡がっている。




