シカゴ(Chicago)のコンサートホールとその音響のユニークな歴史 / シカゴ交響楽団の本拠地、数々の優秀録音を生んだシンフォニーセンター内のオーケストラホール

シカゴ(Chicago)のコンサートホールとその音響のユニークな歴史 / シカゴ交響楽団の本拠地、数々の優秀録音を生んだシンフォニーセンター内のオーケストラホール

古くは名指揮者フリッツ・ライナー時代から録音では散々親しんできたシカゴ交響楽団(The Chicago Symphony Orchestra)の演奏、そしてそのシカゴ交響楽団の本拠地にして数多くの録音が残されているシカゴの名コンサートホールがシンフォニーセンター(Symphony Center)内のオーケストラホール(Orchestra Hall)である。このホールには音響を巡る長い混乱の歴史がある。この歴史を踏まえて、独特なホールの構造を眺め、音楽体験をすることは希有なものであり、シカゴ交響楽団の録音ディスクを聴く際にも大きな参考となった。

シカゴ オーケストラホールの歴史
オーケストラホール、音響改善の為の大改装
オーケストラホールの様子
シカゴ オーケストラホールの録音ディスク
シカゴ オーケストラホールでのコンサート体験

● シカゴ オーケストラホールの歴史

シカゴ交響楽団 オーケストラホール シンフォニーセンター外見 @Symphony Center, Chicago

シカゴを訪れた大きな理由は、米国三大美術館のひとつシカゴ美術館を訪問すること、そしてシカゴ交響楽団をホームコンサートホールであるオーケストラホールで聴くことであった。このシカゴのオーケストラホールは、オーケストラとしては米国1番の腕前と言ってもよいシカゴ交響楽団の本拠地であるだけでなく、ホールとその音響に流転の歴史があり、是非とも生の音を聴いてみたかったホールである。

1904年に完成したオーケストラホールは、高名なシカゴの建築家ダニエル・バーナム(Daniel Burnham )が設計したものである。彼は1893年のシカゴ万国博覧会を成功させた立役者でもあり、その万博では彼主管の都市計画を披露し、全米の建築家に大きな影響を与えた。シカゴには彼設計のシカゴの中央駅に相当するユニオンステーション(Union Station)などがある。また、威厳のあるオフィスビル ルーカリービル(Rookery Building)も彼の手による建築の1つだ。

シカゴ交響楽団 オーケストラホール ユニオンステーションのアンタッチャブルの階段 @Union Station, Chicago
映画『アンタッチャブル』の舞台となったユニオンステーションの階段 @Union Station, Chicago

ユニオンステーションは映画『アンタッチャブル』など多くの有名映画に登場するし、ルーカリービルの内部にはフランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)による美しいロビーが有名であり、建築にさほど興味がなくてもシカゴを訪れた際には是非訪ねてみたい建築物である。

シカゴ交響楽団 オーケストラホール ルーカリービルのロビーにある美しい階段 @Rookery Building, Chicago
ルーカリービルのロビーにある美しい階段 @Rookery Building, Chicago

そのバーナムが設計したシンフォニーセンター内のオーケストラホールは音響も装いもたいへん評判がよかった。シカゴ交響楽団を育てあげたのは6代目の常任指揮者でハンガリー人のフリッツ・ライナーである。彼の指揮による録音は、この時のオーケストラホールでおこなわれたものが大半であり、演奏録音共に非常に優秀なものとして評価が高い。RCAによるこれらの録音はリヴィング ステレオ(Living Stereo)と銘打って発売され、未だに高評価を得ており、SACD化も多数なされている。

オーケストラホールは完成した当時から響きは控えめであったらしく、これが録音には良い結果をもたらした。特に客席に観客を入れない録音時には最適な音響環境だったらしい。ウィーンのムジークフェライン(楽友協会)などの名ホールは豊潤な響きで、こういった演奏会場でのコンサートは幸せな響きに満ちているが、無観客の時はさすがに響きすぎであり録音には適さない。1度、ムジークフェラインでのゲネプロを聴く機会に恵まれたが、よくぞこの響きすぎの中で練習をこなし演奏スタイルを詰めていけるものだと、指揮者にも楽団員にも感心したものだった。

シカゴ交響楽団 オーケストラホール ウィーンフィルのゲネプロ @Wiener Musikverein
ウィーンフィルのゲネプロ @Wiener Musikverein

● オーケストラホール、音響改善の為の大改装

しかし、このオーケストラホールの控えめな音響は、豊潤な響きに憧れる一般聴衆にとっては不評だったようだ。そこで、ドライで残響不足との評判になってしまっているこのホールの音響を良化しようと1997年に大規模な改築をおこなった。

『コンサートホールとオペラハウス』(レオ・L.ベラネク 著) によると、天井が4.6m上方に持ち上げられ、内装用の天井(見かけ上の天井)には細かな穴の空いたものに変え、ホール容積を増やしたらしい。これによって満席時の残響時間は1.2秒から約1.6秒にあがって音響が改善したとのことである。
また、椅子のモケットの厚さを半分にするなど涙ぐましい努力をして低音吸収を減少させ、更に反射板で客席と演奏者に反射音を提供するなど工夫を凝らしている。また、パイプオルガンや前方座席の新設なども行なった。


しかし、『嶋護の一枚』(嶋 護 著)によると、この改装によって聴衆も呆れるようなデッドな音響に変わり果てたとある。先の『コンサートホールとオペラハウス』とは矛盾するが、他の響きのよいホールに比べれば残響1.6秒というのは少なすぎるし、この後シカゴ交響楽団は録音場所を求めて転々としたことから、少なくとも録音会場としては、1997年の改装は失敗だったようだ。

その為、この大改修直後からシカゴ交響楽団の録音場所は、シカゴ市内のメディナ・テンプルやイリノイ大学のクラナート・センターなどを使い、ディスクのライナーノートなどを見ると各レーベルとも録音場所を探って涙ぐましい努力を重ねていることがわかる。そして、問題のあったオーケストラホールも幾度か改修を更に重ねたようで、現在ではシカゴ交響楽団の録音はホームグラウンドのオーケストラホールに戻ってきている。

● オーケストラホールの様子

オーケストラホールを内包するシンフォニーセンターを訪れると驚くことがある。外見は普通の古いビルであり、横のビルと同じく平面なレンガ造りのオフィス建物が並んでいるだけである。どんな構造のコンサートホールが中に入っているのかと想像を巡らしながらホールに入ってみると更に驚く、正面客席はかなりの急勾配なのだ。

シカゴ交響楽団 オーケストラホール 急勾配の客席 @Orchestra Hall, Chicago
急勾配の客席 @Orchestra Hall, Chicago

急勾配の座席が天井近くまである為に客席側(オーケストラの対面)には壁がない。そのため背後からの残響は得られない構造になっているのがよくわかった。ホール背面の反響がないということは、音響的には聴衆だけでなく演奏する者にとっても理想とは言えない構造である。

シカゴ交響楽団 オーケストラホール オーケストラホール内 @Orchestra Hall, Chicago
オーケストラホール内 @Orchestra Hall, Chicago

しかし、実際の演奏を聴くと高い天井のおかげと、この急勾配の客席の為に音が縦に立ち昇る様が素晴らしいと感じた。近年でも残響が足りず悪評を目にしたことがあるが、改修を幾度も繰り返した為か、多少よくなっているのだろう。響きは弱いのだが、響きすぎず、スゥーと柱のように音が舞い上がる様はけっこう新鮮である。

音の特性はかなり異なるのだが、縦長のホールという意味ではパリのラジオフランスのホールに似ているとも言える。

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● シカゴ オーケストラホールの録音ディスク

前述の通りオーケストラホールの改修で今と昔では音響が激変したらしいが、リヴィングステレオの録音を聴くとシカゴ交響楽団の腕前には当時から舌を巻く。

-R シュトラウス『英雄の生涯』『ツァラトゥストラはかく語りき』フリッツ・ライナー指揮 シカゴ交響楽団

音楽に満ち満ちた素晴らしいマッシブサウンドが展開する高音質盤。ライナーは、こんなに弾む演奏でも、ムスっとした顔でピシピシと指揮棒を振っていたのだろうか、とニヤけてしまう。SACD化により更に音質は向上している。

そして、1997年の改修後に録音場所を点々としていたが、その時の各地での録音にも名演奏、優秀録音が多い

-マーラー 交響曲第7番 ショルティ指揮 シカゴ交響楽団

いきなりスケールの大きな音場を感じるが、録音エンジニアは職人技が冴えわたるケネス・ウィルキンスンであった。収録はイリノイ大学のホール。ショルティのマーラー全集は演奏もよい上に、このような超優秀録音が紛れているので隅に置けない。
大昔レコードでドキドキしながら聴いていたショルティのマーラーは今聴くとずいぶんと野暮ったいのだが、やはりシカゴ響は上手で陰影も濃い、虜になる演奏である。

シカゴ交響楽団 オーケストラホール マーラー ショルティ

-ストラヴィンスキー「春の祭典」 ショルティ指揮 シカゴ交響楽団

嶋護氏も強力推薦のこちらは胸がすくほど実に音がよい、メディナ・テンプル(Medinah Temple)での録音。

-マーラー 交響曲 第4番 レヴァイン指揮 シカゴ交響楽団


レヴァインの明るく前向きなマーラー、シカゴもゴリゴリと鉄板演奏で気分がアガる。

-マーラー 交響曲 第1番 ジュリーニ指揮 シカゴ交響楽団

アンサンブルも素晴らしくマーラーの1番の中でもお薦め盤。EMIの録音で音も良いが、こちらもオーケストラホールではなく、メディナ・テンプルでの録音。

シカゴ交響楽団 オーケストラホール マーラー ジュリーニ

そして、昨今はホームであるオーケストラホールでの録音ディスクも多く、名録音と言われるものも多い。

-ホルスト 惑星 レヴァイン指揮 シカゴ交響楽団

優秀録音の筆頭にあがるのはレヴァインによるこちらのディスクである。レンジも広く、ダイナミックなシカゴサウンドが余すところなく封入されている。

シカゴ交響楽団 オーケストラホール ホルスト 惑星 レヴァイン

-R.シュトラウス オーボエ協奏曲/ホルン協奏曲第1番/他 バレンボイム指揮 シカゴ交響楽団

バレンボイム時代のシカゴ交響楽団にも良い録音がいくつかある。そして一連のシカゴの名建築をジャケットにしていたこれらのCDはシカゴ好きにはたまらない、ついジャケ買いをしてしまう。このジャケットの円柱の建物、マリーナシティは1959年に着工され、CD収録のシュトラウスの二重小協奏曲も同年にシカゴ初演されたとライナーに記載されている。

-ブラームス 交響曲集 バレンボイム指揮 シカゴ交響楽団

この2枚はオーケストラホールをシカゴ響がバランスよく響かせての名演、名録音になっている。腕達者の奏者達が流石で、ショルティ盤よりも欧州の香りに満ちた、冬に聴きたいブラームスである。この他にもシェーンベルクの浄夜やブルックナーの全集も隠れた名盤である。

-ベートーヴェン 交響曲第5番 クライバー指揮 シカゴ交響楽団

ウィーンフィルの正規盤よりクライバーがやりたい放題であるこの運命は、シカゴの豪腕プレーヤー方も後半からノリノリで聞き応え充分の名盤である。

尚、この時のクライバーのリハーサルの模様やシカゴの熱狂ぶりは以下の本に詳しい。クライバーの細かい指示と絶妙な説得に楽団員がついていく様、「魔弾の射手」の出だしの見事な雰囲気の秘密、そして、このディスクから感じられる聴衆の熱狂ぶりの背景がこちらを読むとよく理解できる。

カルロスクライバー(下) ある天才指揮者の伝記 アレクサンダー ヴェルナー 著

-マーラー 交響曲集 アバド指揮 シカゴ交響楽団

演奏、録音共に良いのが1.2.5.7番でアバドの万感の想いがこもる名演群となっている。録音は1番がとても素晴らしいが、シカゴのオーケストラホールの音響再現は5番を筆頭にあげたい。このホールの特質である響きすぎずに音が縦に立ち昇る様がそのまま収録されている。

● シカゴ オーケストラホールでのコンサート体験

オーケストラホールにはノーネクタイながら、念の為ジャケットのみを羽織って伺った。しかし、会場を見渡すとジャケット着用者が1割程度しかいない。セーター姿でも十分でシカゴのドレスコードはかなり緩いようだ。

シカゴ交響楽団 オーケストラホール シンフォニーセンターエントランス @Symphony Center, Chicago
シンフォニーセンターエントランス @Symphony Center, Chicago

・ロジェストヴェンスキーによるチャイコフスキー 弦楽セレナードなど

シカゴ交響楽団の定期演奏会、ムーティが自宅で腰の怪我をした為に手術が必要と降板になってしまった。その代打がゲンナジー・ロジェストヴェンスキーとなる。プログラムはリゲティから彼の十八番のシベリウスの小品に変更になった以外はそのままで、少々難しそうなペルトの曲などもあるのに、演目の変更なし、たいしたものである。

演奏は、ゲンナジー・ロジェストヴェンスキーの指揮ぶりがたいへん面白かった。今どき珍しく長い指揮棒、それ故か指揮台にパシパシと演奏中に指揮棒が当たる。たまにわざと拍子を叩いていれているようにも見える。そもそも壇上への登場からして異様で、体型はペンギンのような彼がぺたぺたゆっくり歩く、しかもチャーミングに愛想をふりまきながら。80歳も半ばになると怖い者なしである。かくしゃくとはしているものの、やはり歩く速度をみると曲の度に袖にさがってもらうのが気の毒に感じる。

更に指揮の途中では、ほとんど楽団員を見ない、譜面を、ほぼずっと見ており、手だけが動いている。時折音楽にあわせた表情があり、いい音がでているとニコニコ顔になる。これには、見ているこちらのほうが癒やされた。

シカゴ交響楽団 オーケストラホール ロジェストヴェンスキーとシカゴ交響楽団 @Symphony Center, Chicago
ロジェストヴェンスキーとシカゴ交響楽団 @Symphony Center, Chicago

最初はシベリウスの小曲、シベリウスなので例によって繰り返しが続く、この曲をテンポは変わらず音の強弱だけで表情をつけて見事な演奏。続いてモーツァルトのクラリネット協奏曲、これだけ各パートの旋律が等しく聞こえる体験は初めて。クラリネットのソリストが楽団員の為か、終了後の皆さんの拍手が温かい。途中、やはりクラリネットはお掃除がたいへん、頻繁につば拭きをしているが、楽譜に拭くタイミングが書かれているんじゃないかと思うほど、ちょっとした合間にお掃除をして、サッと自分のパートで出るのがお見事であった(笑)。

後半はペルト、これは曲の性格からホールの音響がもっともよくわかった。デッドで悪評が重なっていたこのホールも改善がなされており、高い天井に音が見事に上昇していく。そして響きすぎないのもかえってよい。

そして、最後のチャイコフスキーは 渾身の一曲であったよう。彼も得意なのかと思う。出だしは、エイ、と声をだして気合いをいれて入るも、終始もの凄いスローテンポでの演奏。かつての暴れん坊ロジェストヴェンスキーぶりは嘘のようである。手元のスコアを見てはいるものの今度は暗譜に近く、しかも指揮を幾度も辞めて、奏者にまかせていた。途中指揮棒を置いて、サスペンダーを直すこと2度(笑)。

奏者のほうは旋律もひきずるように伸ばすので、弾く方々はかなり難しそう。だが、ここでもすべての旋律がしっかりバランスよく聞こえる。正直、金管楽器がないシカゴ交響楽団でここまで感動するとは思わなかった。
ゆっくりなテンポで淡々と鷹揚、チャイコフスキーの心象や景色が見えるような演奏、やっぱりお爺ちゃん指揮者はこうでなくてはと思う一夜であった。

余談ながら、この後の旅程ではパリ管でのロジェストヴェンスキー夫妻によるピアノコンチェルトが控えていたのだが、あいにくこちらは体調不良によりキャンセルとなってしまった。その後ほどなくてして亡くなってしまったので、これがロジェストヴェンスキーの実演に触れる最後の演奏となってしまった。

Tuesday, February 16, 2016 7:30pm
Chicago Symphony Orchestra
Gennady Rozhdestvensky ←Riccardo Muti conductor
Stephen Williamson clarinet
Sibelius Rakastava←Ligeti:Ramifications
Mozart:Clarinet Concerto
Part:Orient and Occident
Tchaikovsky:Serenade for String Orchestra

シカゴ交響楽団 オーケストラホール シンフォニーセンター ロビー @Symphony Center, Chicago
シンフォニーセンター ロビー @Symphony Center, Chicago

・ホーネックによるレスピーギ ローマの泉、チャイコフスキーの交響曲第6番

ムーティは相変わらず静養で今回の代打はホーネック。代打のホーネックの登壇決定はギリギリに決まった模様である。ロンドンで同じくコリン・ディビスの体調不良による代打を聴いて以来のホーネックのファン。とにかく解釈が面白いし、技量もある。

実は、このシカゴ訪問の前後でなんとかホーネックを聞けないかピッツバーグ交響楽団の日程も調べたが日程があわず断念していた。偶然とは言え、シカゴで聴くことができて運が良かったと感じる。

今回の演目はレスピーギのローマの泉、ヴァイオリン協奏曲とチャイコフスキーの6番。本日はコンマスではなく、アジア系の綺麗なコンミスであった。演目のチャイコフスキーの6番とレスピーギはホーネックにピッタリであるし、シカゴ響の実力が楽しめる演目で開演前からワクワクしていた。座席は値頃感ある棚下ギリギリを狙ったのだけど、残念ながら、微妙に棚下に被ってしまった。このホール絶妙な価格設定で、お上手である。

シカゴ交響楽団 オーケストラホール 棚下の席 @Symphony Center, Chicago
棚下の席 @Symphony Center, Chicago

最初の演目、レスピーギの「ローマの泉」は、シカゴ響のブラスを思いっきり楽しむことができた。一昨日は弦楽作品ばかりだったので、本日初めてブラスの凄さを耳にしたことになる。噂通り、一切濁らない金管楽器の音がとてもきれいであった。他の楽器とのバランスもよく、金管だけが目立つ事なんてこともなくて、オーケストラとしても実にお見事。

そして、金管楽器の音がきれいで揃いすぎくらいに揃ってる、悪魔的ですらある。ホームのコンサートホールの音響が悪いから、ブラスの音が大きいという噂は間違いだと確信した。他の楽器ともしっかりハモってるし、節度ある悪魔ぶりである。

ヴァイオリン協奏曲はソリストが登場した瞬間に観客が、あっ、と言っていた。なんとシカゴ響のコンマスのロバート・チェンさんが登場。それ故に今日はコンミスの登場だった訳である。先日のクラリネットのソリストも楽団員だったし、やはり一流のプレーヤーが揃っているとこういうことができる。どうも客席は常連客が多いらしく、楽団員(=ソリスト)に対する拍手も温かい。

一方、指揮者ホーネックはクライバーのドキュメンタリー番組で彼の指揮法について、いろいろ解説もしていた。そこからもうかがえるのだけど、かなりクライバーに信奉しているようで、今日の指揮なんか、左手の使い方やしなやかな指揮ぶりに、そっくりの部分がいくつもあった。

シカゴ交響楽団 オーケストラホール ホーネックとシカゴ交響楽団 @Symphony Center, Chicago
ホーネックとシカゴ交響楽団 @Symphony Center, Chicago

そして、最後は目玉のチャイコフスキーの6番。ホーネックが今回の代打でプログラムを変更した曲。彼は暗譜で指揮。なにせ凄かったのは三楽章、速めのテンポで、レガートなんか一切させず、キリキリしぼった演奏。シカゴ響はコントラバスもチェロも大きな音をだせるので、もうバリバリ切れ味抜群の三楽章、ゾクゾクした。他のお客も同じだったようで、楽章が終わった瞬間に幾人もの拍手が。すぐに4楽章に続けたかったホーネックもちょっと面食らった様子である。

大満足のチャイコフスキー、お客さんは総立ちでスタンディングでの拍手。とてもソリッドな演奏でライナーが指揮したシカゴ響もこんなだったのかな、とふと思った。チャイコフスキーはアメリカのオーケストラに合うような気がする。スラブっぽく重くジリジリさせると、どうしても甘すぎる音楽になる。しかし、一昨日の弦楽セレナーデもそうだったがハリウッド的というか、ベタベタ感はギリギリで押さえて、ちょいロマンティックな感じくらいがちょうど良く感じる。機能的なオーケストラと甘美なメロディがよい案配となるのだ。

ホールの外に出ると、寒空と冷たい風、チャイコフスキーを聴いたあとだと、彼の音楽がもう一度聞こえてくるような気がした。

Thursday, February 18, 2016 8:00pm
Chicago Symphony Orchestra
Manfred Honeck ←Riccardo Muti conductor
Robert Chen violin
Respighi:Fountains of Rome
Respighi:Concerto Gregoriano
Tchaikovsky:Symphony No. 6←Casella Symphony No. 3

アメリカ / シカゴ

<詳細情報>
・シンフォニーセンター オーケストラホール(Symphony Center Orchestra Hall)
220 S Michigan Ave, Chicago

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