ヴロツワフ(Wroclaw)のおすすめ博物館 / 市歴史博物館、考古学博物館、軍事博物館、ヴロツワフ大学博物館

ヴロツワフ(Wroclaw)のおすすめ博物館 / 市歴史博物館、考古学博物館、軍事博物館、ヴロツワフ大学博物館

博物館/美術館/史跡
[PR] スポンサーリンク

ポーランド第4の都市 ヴロツワフ / ブロツワフ / ブロツラフ。ドイツ語名では ブレスラウと言い 17~20世紀においてはハプスブルク家やプロイセン王国の支配下にあった。その為、スラブの文化と成熟したドイツ・オーストリア文化の香りが交わった非常に洗練された街となっている。このことは大きく数も多い美術館、博物館にも現れている。
『ヴロツワフ市歴史博物館』ではハプスブルク支配の時代から近現代までを網羅的に扱い、シロンスク地方らしく産業史なども詳しい。
『考古学博物館』は石器時代からフン族の支配などポーランド一帯の起源をビジュアルで知ることができる。この考古学博物館の隣が『軍事博物館』となっており、膨大な量の銃器、ヘルメットが展示されていた。
白眉は『ヴロツワフ大学博物館』であり、ここは建物含めて見どころが多い。美しい『レオポルディア講堂』やブラームスも演奏した音楽ホールなどを有し、1階や屋上付近などの天文学などの展示ブースも充実している。

ヴロツワフ市歴史博物館(The City Museum of Wroclaw / Pałac Królewski we Wrocławiu)
考古学博物館(Muzeum Archeologiczne Oddział)
軍事博物館(Muzeum Militariów
ヴロツワフ大学博物館(Muzeum Uniwersytetu Wrocławskiego)

● ヴロツワフ市歴史博物館(The City Museum of Wroclaw / Pałac Królewski we Wrocławiu)

ヴロツワフ市歴史博物館外観 @Pałac Królewski we Wrocławiu

元はホーエンツォレルン家の宮殿だったために、博物館の建物も立派で、展示品も充実している。ヴロツワフを訪れたらまず足を運ぶべき博物館。展示内容はもちろんヴロツワフの歴史だが、郷土資料館として見ると古代史が少なく、中世から主な展示が始まる。付近にある考古学博物館と棲み分けているのかもしれない。

ヴロツワフ市歴史博物館中庭 @Pałac Królewski we Wrocławiu

博物館に入ると最初にフランチシェク・スタロヴィエイスキ(Franciszek Starowieyski)の巨大な絵が迎えてくれる。

The Theatre of Drawing by Franciszek Starowieyski
“Miraculous retrieving of Saint John’s head after the communist extermination”
スタロヴィエイスキの絵画 @Pałac Królewski we Wrocławiu

12メートルの圧倒される絵で、おどろおどろしいのが彼の画風、ヒエロニムス・ボスのような怪物も登場する。この絵は、2000年にヴロツワフの千年紀を記念して描かれたとのことでヴロツワフの守護神である聖ヨハネが主題となっている。描いた スタロヴィエイスキ はポーランドの著名グラフィックアーティストでポーランドでは人気がある。アンジェイ・ワイダなど映画ポスターも多数描いており、一部は国立映画アーカイブや神奈川県立美術館に収蔵されており、日本でもそれらを観ることができる。

中世の展示で見事だったのが1265年頃にシレジア公爵の宮廷で制作されたブレスラウ詩篇という写本、旧約聖書の150詩篇と聖歌が彩飾されている。写本のテキストはドイツ人の書家によるもの、細密画はイタリア人の絵師が描き、仕上げはシレジアの職人が仕上げたことから当時の文化交流の状況がわかる。

ブレスラウ詩篇 / ヴロツワフ詩篇(13世紀の写本)@Pałac Królewski we Wrocławiu

収蔵品には一風変わったものやとても美しいものなど興味深いものも多い。

16世紀のトランプとさいころ @Pałac Królewski we Wrocławiu

素晴らしく緻密な刺繍の法衣にはまじまじと眺め入った。

ヴロツワフ聖三位一体教会の18/19世紀の祭服 @Pałac Królewski we Wrocławiu

豊富な楽器展示や食卓などの展示もあり、元ホーエンツォレルン家の宮殿だったことを活用し、宮殿内を再現したブースもある。

宮殿内風の展示 @Pałac Królewski we Wrocławiu

そして、近代以降の展示は工業が発展したシロンスク / シレジア地方らしく産業の発展史となる。ブロツワフには19世紀から20世紀にかけて、大規模な工場が多く造られ、ヨーロッパで最も重要な産業の中心地となった。ヴロツワフの主要産業は、繊維、機械製造、食品産業で、最大の企業は3つの小さな機械工場、路面電車工場、鉄道工場が融合して設立された鉄道車両メーカー リンケ・ホフマン・ヴェルケ社(Linke-Hofmann-Werke)、6,000人以上の従業員を雇用していた。

また、水道メーターのマイネッケ社(H. Meinecke)やビールの大量生産をおこなう大規模な醸造所エデュアルド・ハーゼ(Eduard Haase)の醸造所やシュルトハイス醸造所(Schultheiss Brewery)などもブロツワフを有名にした。

マイネッケ社の工場 @Pałac Królewski we Wrocławiu

ヴロツワフの都市景観の顔となる路面電車は19世紀初頭から始まった。先のリンケ・ホフマン・ヴェルケ社がスチール製の路面電車232両を製造し、ブレスラウ鉄道(Staedtische Strassenbahn Breslau)に納めた。この路面電車はなんと約50年間使用されたと言う。

路面電車模型 @Pałac Królewski we Wrocławiu

また、ブレスラウ(ヴロツワフ)には Breslau-Gandau という空港が早くも1910年に建設されている。戦前からドイツ企業ユンカースと縁が深く、工場も併設されたようだ。この空港はヴロツワフ市内からも近いながら1978年の閉鎖まで長らく使用されていた。

Breslau-Gandau の空港ビル @Pałac Królewski we Wrocławiu

現代史では当然ナチスドイツとの戦いに大きなブースを割いている。当時はドイツ領であったので、1938年の反ユダヤ主義暴動である「水晶と夜」の時はシナゴーグは焼かれ、ユダヤ人墓地も荒らされた。ブレスラウにはユダヤ教神学院もあってドイツ国内でもユダヤ人が多く住んでいた都市のひとつであった。

ユダヤ人墓地の様子 @Pałac Królewski we Wrocławiu

ゴリアテ(Goliath Sd.Kfz. 303)と言われるドイツ軍のリモコン地雷の実物が展示してあった。これはドイツ軍の工兵が使用した遠隔操作によってどこへでも行く爆薬で、地雷原などの障害物を爆破する為に使用された。ブレスラウでは96機のゴリアテがあり、1945年2月から5月までの対ロシア戦で使われたとある。

ゴリアテなどの展示 @Pałac Królewski we Wrocławiu

そして戦後のソ連影響下の展示がナチス影響下の展示と同じくらいのスペースをとっているのが印象的だった。どちらもポーランドにとっては苦労の絶えなかった時代である。

1945年以降の展示 @Pałac Królewski we Wrocławiu

● 考古学博物館(Muzeum Archeologiczne Oddział)

ここはなぜか考古学博物館と軍事博物館が同居している。建物は1459年から改修を重ねたもので非常に古く、もともとは兵器庫だったゴシック様式の建物。現在、建物は明確に二分されており、異なる博物館が並んでいる感じだ。

考古学博物館/軍事博物館外観 @MMuzeum Archeologiczne Oddział / Muzeum Miejskiego Wrocławia

まずは中庭左手の考古学博物館の分館に入る。こちらはポーランド含めた中欧の古代史の展示であり、まとめ方も見事でなかなか見応えがあった。関心をもって眺めたのがフン族の歴史。フン族については、ハンガリーはフン族の末裔だと言う偽説が流れたり、チャーチルが第二次世界大戦中にドイツ人を「フン族」と悪し様にののしる時に使ったり、少々謎めいたところがある。そこで、実際のフン族がどうだったのか、をこちらの展示から知ることができた。

フン族など民族の移動を動画で時系列に表示する動画 @Muzeum Archeologiczne Oddział

ポーランドはフン族と密接な関係にあり、5世紀前半のポーランドの領域はフン族のアッティラの支配下にあった。フン族の支配はポーランド南部からシレジアにまで及んでおり、このことはチェコ、スロバキア、ポーランド南部の洞窟遺跡から裏付けられていると解説にはある。
それ以前の3世紀と4世紀、ポーランドの領土のほとんどにゲルマン民族が定住しており、ポーランドの北東部にのみ非ゲルマン民族で西バルト民族が住んでいたらしい。そこにフン族が侵入して所謂ゲルマン民族の大移動が4世紀から6世紀半ばまでおきた。フン族の支配は短命に終わり、その後ゲルマン民族のなき後にスラブ民族が流入してくる。ある意味、現代のポーランドの基礎がここで築かれたと言える。そして、ゲルマンとスラブの現ポーランド領の奪い合いはこの時から始まったと言うことでもある。

母屋に戻って本館の左手が考古学博物館であり、こちらは石器時代・初期青銅器時代の展示が中心であった。刃物や農具などの各種道具や動物の歯で作られたお守りまで小物がウィンドウに展示されている。目玉は中石器時代の小屋を復元した展示。木造の梁を有した切妻の茅葺き屋根を持つ平屋で、ヴロツワフ大学をはじめとした考古学研究機関から借用した備品と共に展示されている。

中石器時代の小屋 @Muzeum Archeologiczne Oddział

また、中央には新石器時代の集落の模型があり、長方形の大きな木造建屋がある

新石器時代の集落ジオラマ @Muzeum Archeologiczne Oddział

● 軍事博物館(Muzeum Militariów

再び母屋の1階に戻り、今後は入口から右手の軍事博物館側に入る。建物が古くかなり補修をあちこち入れているようである。1階の古代から中世の武器類の部屋は改修中であった。2階の展示品は小火器が中心で、兵器庫だったこの建物の成立ちと同じく、大量の武器庫をイメージさせる。

小銃、機関銃は武器庫のように同じ物が山のように並ぶ @Muzeum Militariów
ピストルがこれでもかというほど陳列 @Muzeum Militariów

また、圧巻なのはヘルメットのコレクションで、様々な国の昔から現代に至るまでのヘルメットがたくさんの棚に陳列されている。そして、それらひとつひとつに解説がある。

時代がかったヘルメット @Muzeum Militariów
近代ヘルメット陳列 @Muzeum Militariów

● ヴロツワフ大学博物館(Muzeum Uniwersytetu Wrocławskiego)

ヴロツワフ大学は1702年に設立されイエズス会のアカデミーとして出発した中央ヨーロッパ最古の大学のひとつ。展示物は大学建物内に点在しており、たくさんの展示室がある。その為、展示室の移動の際の建物見学も楽しみのひとつ。

ヴロツワフ大学外観 @Muzeum Uniwersytetu Wrocławskiego

熱心に1階の天文学機器のブースを見ていると、後ろからか細い声で声をかけられた。自分に対しての声かけとは思わずにスルーしていたところ、二度目のささやき。どうも私に遠慮がちに話しかけていたらしい。そして、この学芸員とおぼしきご婦人スタッフがいろいろ説明くださる。
説明を受けていると、この方が翌週から始まる特別展の部屋にこっそり入れてくださった。無関係の東洋人が入室し、同僚の方も驚いていたので、よっぽど特別の配慮だったのだろう (笑) 。帰り際に「貴方が特別展の1番最初の見学者ね」とチャーミングな笑顔。ポーランドの美術館、博物館ではスタッフの方に親切にされることが多く、とても嬉しい出来事だった。

天球図など天文学の展示 @Muzeum Uniwersytetu Wrocławskiego

フリードリヒ・ウィルヘルム3世がおこなったプロイセン改革によって、1811年フランクフルトヴィアドリナ大学(現 ヴィアドリナ欧州大学 Europa-Universität Viadrina)がヴロツワフ大学に統合された。その際に本、棚、家具、楽器は船に詰まれオーデル川で運び込まれたという。その時を描いた絵が展示されており、当時の美しいヴロツワフの街並みが俯瞰してみてとれる。

1811年フランクフルトヴィアドリナ大学統合時の絵 @Muzeum Uniwersytetu Wrocławskiego

このヴロツワフ大学にはレオポルディア講堂(Aula Leopoldina)というバロック様式の講堂があり、こちらも博物館の展示の一部となっている。素晴らしい装飾ながら修復改装中。大学関係者の像が並んでおり見物だったらしい。天井のフレスコ画も見事なようだが、階下から見上げられず消化不良。

レオポルディア講堂 @Muzeum Uniwersytetu Wrocławskiego

もう一つの見所は豪華絢爛な音楽ホール オラトリウム・マリアヌム(Oratorium Marianum)。元は修道院の礼拝堂だったが先のプロイセン改革の際に音楽ホールとして使われるようになった。ブラームスはもちろん、リスト、ベルリオーズなども演奏したと言う。

オラトリウム・マリアヌム @Muzeum Uniwersytetu Wrocławskiego

屋上階は大学の古くからのコレクションを展示しており、更に階段を昇ると屋上テラス(Mathematical Tower)に出られる。ここは、かつて天文台として使われていた。高さ42 mなのでさほど高くはないが、街をかろうじて一望できる。ついでながら高台からの街の展望の場を得たので、これで教会の塔に登らずともよし、と用を済ませてしまった(笑)。

屋上テラスからの眺め @Muzeum Uniwersytetu Wrocławskiego

ブロツワフ大学を出ると、ここでも小びとが送り出してくれる。

大学前の小びと @Muzeum Uniwersytetu Wrocławskiego

そして、左手には大学建物に隣接している形で イエズス聖名教会(Parish of the Most Holy Name of Jesus / Kościół Rzymskokatolicki pw Najświętszego Imienia Jezus)があり中を見ることができる。こちらも彫刻が見事で現在もヴロツワフ大学の大学教会として使用されている。

イエズス聖名教会 @Muzeum Uniwersytetu Wrocławskiego

ポーランド / ヴロツワフ(ブロツワフ、ブロツラフ、ウロツワフ 、ブレスラウ)

<詳細情報>
● ヴロツワフの博物館
・ヴロツワフ市歴史博物館(The City Museum of Wroclaw / Pałac Królewski we Wrocławiu)
Kazimierza Wielkiego 35, 50-077 Wrocław

・考古学博物館/軍事博物館(Muzeum Archeologiczne Oddział / Muzeum Miejskiego Wrocławia)
Antoniego Cieszyńskiego 9, 50-043 Wrocław

・ヴロツワフ大学博物館(Muzeum Uniwersytetu Wrocławskiego)
plac Uniwersytecki 1, 50-001 Wrocław

○ ヴロツワフ、ブロツワフ 地図

○ 関連記事
ヴロツワフ(Wroclaw) 観光ガイド / 小人だけではない、散策楽しいナドドジェ地区など美しきシレジアの街
ヴロツワフ(Wroclaw)のおすすめアート施設 / 国立博物館、現代美術館、パノラマ・ラツワヴィツカ、新設のコンサートホール NFM、圧倒的な質と量を擁するシロンスクの芸術都市