ポーランド前半の旅は下シレジア地方(Dolny Śląsk i / Niederschlesien / Lower Silesia)へ出向く。ヴロツワフで車を借り、木造教会で有名な街を巡り、ポーランド食器(ポーリッシュポタリー)で有名なボレスワヴィエツに立ち寄って、終着点はクリチュクフ城なる中世の城を改装した城館ホテルへ。
● ポーランドで車を借りる
● シュフィドニツァ / シフィドニツァ(Świdnica)
● ヤボル(Jawor)
● ボレスワヴィエツ / ボレスワビエツ(Bolesławiec)
● クリチュクフ城(Zamek Kliczków)
● ポーランドで車を借りる
遠征出発日には、早朝から車を使いたいので、レンタカーは前日から借りた。今回のレンタカー会社はSixt。今まで何度か使ったレンタカー会社で、もっとも整備が行き届き、提案される車種が良いドイツ系のレンタカー会社である。ヴロツワフSixt(Sixt Rent a Car – Wroclaw)のオフィスがヒルトンホテル内にあり、アパートからオフィスが近いことが、今回の選択の決め手でもあった。
車種はOpel ASTRA、グレーの色合い含めて地味で田舎をのんびり走る自分には丁度良い。今回も運良くカーナビもついていて、運転もしやすそうである。手元のラジオの操作性も良くて、運転中は地元のラジオを流しているので、これも気に入った。
翌朝は渋滞を避けるために早めにブロツワフを出発。前日からレンタカーを置いておいた地下駐車場(Nowy Targ Parking Lot)で精算をすると、その料金にびっくり。一晩ちょっと停めたら3,000円ほどになっており、ポーランドにしては高額。安全な駐車場なので無駄とは思わないが、ちょっと油断していた。
● シュフィドニツァ / シフィドニツァ(Świdnica)
・平和教会(Kościół Pokoju w Świdnicy)
最初の目的地はシュフィドニツァ(Świdnica)という街にある平和教会(Kościół Pokoju w Świdnicy)、この教会は 木造教会で最大級の大きさを誇り、17世紀半ばに様々な制約の上に建てられた。
建設時の制約の背景には30年戦争がある、この戦争に勝利したカトリックのハプスブルク家はプロテスタントに対して、シフィドニツァ、ヤヴォル、グウォグフ(のちに焼失)の3カ所のみに教会を建てることを許可したが、厳しい制約条件をつけた。主な制約事項は以下。
・ 耐久性のない建材(木材・藁・砂、粘土)しか使用してはならない
・ 市壁の外側で、なおかつ大砲の射程距離内になければならない
・ 一年以内に建設し終えなければならない
かつてルーマニアでも木造教会を尋ねたが、そちらと同じような禁止条項があった。しかし、驚いたことに、これまで見てきた木造教会の中でも、とびっきり大きい上に、内部はバロック様式で超豪華。木造教会は外見同様に質素で素朴というのが木造教会に持つイメージだったので、とても意外であった。そして、どこか鄙びて華奢なルーマニアの田舎に点在する木造教会とは大違いである。
中に入ってみて最初に目に入るのが立派な祭壇である。1752年に教会建設許可の100周年の記念として造られた。中央はモーゼやイエスと弟子の彫像、コリント様式の円柱に支えられた頂点には7つの封印と上に旗を持つ羊が置かれている。また、祭壇の上の天井画は庭園のような天国とその横に天使とヨハネが描かれている。
説教壇は中央に位置する。頂点には最後の審判でラッパを吹いている天使の像、側面には信仰・希望・愛を示す彫刻、壇上には4連の砂時計があり、これで説教の時間を計った。説教壇の上の天井画は、黙示録第14章を描いており、キリストが鎌を持ち雲の上に座っている。天使は「永遠の福音」と書かれた書を開いて示しており、その下には洪水に呑まれるバビロンが描かれている。
オルガンは1669年のバロックオルガンで、人間の像によって下から支えてられているのが面白い。オルガンの上の天井画は黙示録第5章を描いており、 24人の長老に囲まれた神が7つの巻物を持ち子羊が伴っており、その下でヨハネが祈っている姿が描かれている。
説教壇の向かいには少々珍しく貴賓席がある。これは教会建設資材である材木の2/3を寄附したホフベルグ伯爵の為に設置された貴賓席とのことで、豪華すぎるしつらえである。
中央の天井画は真ん中に三位一体が描かれ、周囲はヨハネの黙示録の絵でラッパを吹く天使が無数に描かれている。これに連なる形で各ブース上の天井画も各々黙示録のモチーフとなっている。
オフシーズンなので教会内のいたるところで修復作業がおこなわれていた。壁や椅子などの羽目板をひとつひとつ外し、強力なライトの下で丁寧に磨き、塗り直していく作業はとても根気が必要そうであった。
平和教会(Kościoły Pokoju)🇵🇱@シュフィドニツァ
— ごーふぁー 🇵🇱🇨🇿🇩🇪 (@juntaniguchi) March 22, 2020
中に入って質素な木造の外見との差に驚き、声が出てしまった。ハプスブルク家が定めた建築制限により木造かつ工期1年以内などを守りながらの豪華絢爛さが凄い。天井には黙示録のモチーフが拡がる。
ルーマニア等の鄙びた木造教会と比しても興味深い。 pic.twitter.com/JXtiumsHPy
● ヤボル(Jawor)
続いてヤボル(Jawor)に向かう。ここにも木造教会の福音教会(Kościół Pokoju w Jaworze)がある。生憎、シーズン外なので閉館中であるが、通り道でもあるし、ひと目外見だけでもと思い立ち寄った。
やはり圧倒されるほどの大きさであり、木造というのが信じられない規模であった。
福音教会の中には入れず残念であったが、散策してみるとヤボルの町が意外や面白かった。シレジア地方らしく広場はドイツ風の建物が並び、プロイセン時代の1896年に建てられた市庁舎はとても立派だ。町全体が古風で古都の趣があるので散策が楽しい。
高台から眺めると、足下にとても大きな市(Targowisko Miejskie w Jaworze)がたっている。ヤヴォルの町はドレスデンとブレスラウ間やレグニツァ-プラハ間の交易路にあり、それ故に栄えたらしいから、この市場も相当な歴史があるのだろう。
市場の横には立派な円形のヤヴォル城(Zamek Piastowski w Jaworze)がそびえ立つ。1648年に焼失し、1665年に再建されたとのことだ。
ヤボル🇵🇱(Jawor)
— ごーふぁー 🇵🇱🇨🇿🇩🇪 (@juntaniguchi) March 25, 2020
木造の福音教会が有名な街だが、他にも古風な街並みや高台の円形城など古都の趣があり、散策が楽しい。
かつてのドレスデンやプラハ、ヴロツワフの交易路上にあった為か立派な市場が今もたつ。
中心にはプロイセン時代の市庁舎があり、その面影を今もしっかり残すシレジア地方の町。 pic.twitter.com/TjNEOroXx4
● ボレスワヴィエツ / ボレスワビエツ(Bolesławiec)
本日の目的地であるクリチュクフ城の手前でボレスワビエツ(Bolesławiec)に立ち寄る。ここはヴロツワフから130kmほど、車で2時間、鉄道なら1時間半ほどの距離。楽しみにしていたポーランド食器(ポーリッシュポタリー)の街であり、鉄道駅の裏のコシチュシュキ通り(Kościuszki)には、陶器工場の直営店が建ち並んでいる。
この通り沿いの数件の工場直営店を物色して、ポーリッシュポタリーを段ボール一箱ほど買い込んだ。ご当地だけあって、どの陶器もワルシャワなどの土産物店で購入するよりも2~3割程度安い印象。そして、お値段以上に嬉しいのは、絵付けの柄が豊富で、食器の種類も多く、大ぶりな食器がたくさん販売されていることだ。
ポーリッシュポタリーのオーソドックスな柄は青の水玉模様だが、それ以外の色や絵付けがなされた食器もたくさんあり、細かな彩色がほどこされたものもある。
基本が普段使いの食器なので、用途も様々なものがある。グラタン皿とポーランドらしい素朴なデザインの鉢や絵皿などいくつか購入した。レンタカーの旅であると、店先に車を停めて分量を気にせず買い物が自在にできるのがよい。
実際に訪れた店は以下の通り。
・Ceramika Artystyczna Spółdzielnia Rękodzieła Artystycznego
1950年に創業した老舗、ここアルティスティッチナ社(Artystyczna)とザクワデ社(Zakłady)が2大メーカーとのこと。ここは店内見やすく、絵柄も豊富かつ梱包も丁寧で一番しっかりしていたので、大量に購入した。チーズレディも表情が豊かなものがあったので、ここで購入した、値段は3000円足らず。
・Kalich Ceramics Outlet Store Ceramika Kalich Sklep Firmowy
前述のお店の向かいには、小さな店が並んでおり、おのおの個性があるので、気に入ったものを1点買いするのに丁度よい。
・Pottery Store Cer-Far Ceramika Cer-Far
元工場だったような広い店内に、いろいろな工場のものが集められていて、多様な食器が揃っている。
ポーランド食器(ポーリッシュポタリー)の街🇵🇱 @ボレスワヴィエツ / ボレスワビエツ
— ごーふぁー 🇵🇱🇨🇿🇩🇪 (@juntaniguchi) March 31, 2020
コシチュシュキ通りに立ち並ぶ工場直営店、ワルシャワなどの土産物屋では見かけぬ柄の食器や珍しい色合いを見かける。そして安価かつ等級も様々。耐熱性に優れており、普段使いするグラタン皿など、少々買いすぎる。 pic.twitter.com/9JZdjTYEFk
● クリチュクフ城(Zamek Kliczków)
・クリチュクフ城へチェックイン
普段はアパートをレンタルすることが多いのだが、今回は久々のホテル泊。お城の趣あるホテルが手頃なお値段な上に、近隣各地を訪問するのに適当な立地だったからだ。そこで、このクリチュクフ城(Zamek Kliczków)という城館ホテルに2泊してベースとすることにした。ここはドイツとの国境の街ゲルリッツとも近く、ポーランド陶器(ポーリッシュポタリー)で有名な街ボレスワヴィエツへのアクセスも10kmちょっとと車があればとても便利な場所である。
また、レンタカーの旅なので、交通の不便なく山の中のこうしたホテルに泊まるのもたまにはよい。国道を折れてクリチュクフ城へ向かう道は森の中の田舎道、静けさが伝わってきて気分ももりあがる。
その森を抜けて小さな村の並木がそのままクリチュクフ城の入口に連なる。城の前には大きな庭が拡がっており、この辺りに車を停める。
城前の橋を渡り、城内中庭からフロントに向かうと、愛想のよいフロントマンが迎えてくれる。チェックイン手続きの際に「部屋をアップグレードしておいたよ」と軽く言われる。予約時の部屋の案内写真では、お城ながらシンプルなシングルルームだったので、あまり期待しないで部屋に向かうことにした。
ところが、荷物を抱えて寂しい廊下を指定されたほうへ行き来しても、いっこうに部屋が見当たらない。ルーム番号がある部屋がいくつもあるのだが、自分の鍵には部屋番号が書いておらず「アパートメントなんちゃら」との表記のみ。
城内はあまりに広すぎてフロントに戻って聞くのも面倒なので、清掃の方に伺い、部屋に連れて行ってもらったところ、なんと城の端にある塔の部分の部屋。部屋の入口は秘密の階段のような場所の脇にあり、なんともわかりにくい。
・クリチュクフ城での驚きのアップグレード
そして部屋の中に入って驚いたのが、1人で2泊するにはもったいないほどの広さ、アップグレードしすぎである(笑)。扉を開けるとまずは控えの間(接客室)があり、一輪挿しが迎えてくれる。
その奥に執務室(リビング)、そして中央には木製のらせん階段がある。
このギシギシきしむ木製のらせん階段を昇ると2階は広大な寝室+浴室と言った具合。そもそも自宅より広いんじゃないかと言う案配である。
ただ、問題だったのは夜である。こういったことはあまり気にしないほうなのだが、「出そうな雰囲気」なのである(笑)。この塔部分には一室しかなく、他の部屋とは隔離されていて、全く音がしない。しかも高い窓は3方にあり夜は重厚なカーテンと共に。この窓が趣がありすぎる。そして、床も天井も木製でギシギシ言い、クローゼットなども人が数人入れそうなほうほど無駄にでかい。おまけに開かずの扉が各部屋にある。クリチュクフ城に来る前に立ち寄った、拷問展示があったロケト城を思いだしてしまった。
・迷宮のようなクリチュクフ城の魅力
クリチュクフ城の本館は1585年に建てられたルネッサンス様式建物。1881年に拡張され今の規模になったらしい。中は入り組んでおり、長い廊下やどこにつながっているかわからない階段のアップダウンもある。
宿泊した部屋の脇にはこっそり中庭に抜けられる狭い階段があり、ここを降りるとフロントや食堂への近道にもなっている。
建物の2階が渡り廊下でつながっているところもあって、城内をうろつくのがけっこう楽しい。
チェックインが早かったので、ボレスワヴィエツで購入したポーリッシュポタリーのお皿を部屋で眺めたり、プールでひと泳ぎしたりのんびり数時間過ごすことにした。プールは広く、比較的に空いておりフロントでタオル等貸してくれるので、水着さえ持参すれば身1つで入ることができる。ジャグジーもあるので気分良く身体をほぐすことも可能だ。
・クリチュクフ城の食事
夕食は1600円で事前予約できた。ホテルは山奥で近辺に食事するところなどないので予約するしかない。初日の夜はアラカルトスタイルで定番の豚の角煮をいただいた。2泊目は客が多いとの理由で、アラカルトでなく、ビュッフェスタイルに変更となった。肉料理も魚料理も種類が豊富でサラダも豊富にある。食事前にプールでひと泳ぎしていたので、もりもり食べてしまった。
ちなみに朝食もビュッフェスタイルでチーズ類が豊富にある。バターにはクルミが入っていてこれは美味だった。