ミュンヘン(München Munich)には、映画『去年マリエンバートで』のロケ地となったニンフェンブルク城(Schloss Nymphenburg)や映画『Uボート』で使用した潜水艦艦内セットに入ることができる映画撮影所 ババリア・フィルムシュタット(Bavaria Filmstadt)など、映画好きには必見の場所がある。
そして、ミュンヘン・レジデンツ(Residenz München)内にある不気味でエスニックなグロット宮殿(Grotto Courtyard)や異様でおどろおどろしい内装のアザム教会(Asamkirche)、かつて見本市会場として賑わった旧植物園(Alter Botanischer Garten)など興味深い史跡も多い。
また、オクトーバーフェストではビールテントが賑わうようにミュンヘンは美味しいビールが山ほどあり、レストランも美味しい。そして市場や食料品店も多く、食材豊富で自炊もなんなくこなせる美味しい街でもある。
● ミュンヘンへ / 空港から市内へ
● ミュンヘンの史跡
・ミュンヘン・レジデンツ(Residenz München)/ グロット宮殿(Grotto Courtyard)
・ニンフェンブルク城(Schloss Nymphenburg)
・アザム教会(Asamkirche)
・旧植物園(Alter Botanischer Garten)
● ババリア・フィルムシュタット(Bavaria Filmstadt)
● 美味しいミュンヘン
・ミュンヘンのビール Räuber Kneißl
・ミュンヘンのビール Augustiner Bräu とドイツ料理のレストラン Liebighof
・ミュンヘン中央駅そばの美味しいトルコ料理 Altın Dilim
● ミュンヘンのアパート泊(City Aparthotel München )
● ミュンヘンへ / 空港から市内へ
ミュンヘンに行く為に成田空港を発つ際は生憎の大雨に見舞われ空港へのアクセスやトランジットなど不安の多い旅立ちとなった。幸いトラブルには見舞われなかったが、この辺りの顛末は別記事『大空港の乗り継ぎ(トランジット)のミスとロストバゲージの恐怖』をご参照いただきたい。
また、ドイツ入国の際の税関トラブルについて不安のある方は合わせてこちらの記事『ドイツ入国、デュッセルドルフ 乗り継ぎ(トランジット)方法と所要時間 / ドイツ入国時の厳しいと言われる税関は怖くない スマホ、カメラ、パソコンの申告について』も参考になるかと思う。
トランジットのモスクワからミュンヘンまで空路では3時間。短い時間ながら夕食が提供され少々驚いた。ミュンヘン空港(Flughafen München / Munich Airport)は予定通り夜遅く、22時半に到着したが、荷物もすぐに受け取ることができ、順調な滑り出し。ベルリン テーゲル空港で同じく夜中到着で荷物のロストを体験したので、今回は同じドイツでもひと安心。
空港から町中心部へは、鉄道(Sバーン)を用いる。空港内の「S」の標識をたどって行けば、地下にある駅にすぐに到達できる。電車も遅い時間にも関わらず、間隔短く発着しているので、1時間もかからず、ミュンヘン中央駅に到着。
初日は夜も遅いのでアパート泊を避け、ミュンヘン中央駅から近いホテルを予約し徒歩で向かった。土曜日の夜であったが、夜中の12時近くでも駅には人もたくさんおり、店もたくさん開いている。これなら日曜日にどの店もお休みになってしまうドイツでもなんとかしのげると安心した。
30年ぶりのミュンヘンに深夜到着して少々感慨深い。また、10月の終わりに欧州に来るのは初めてで、もう冬の入口という雰囲気が新鮮。ミュンヘンは芸術の街で、音楽も美術館も博物館も楽しみで胸が高鳴る。空港で買ったフィンランド産の凶暴そうなウォッカをお供に気を静め、床に入った。
●ミュンヘンの史跡
・ミュンヘン・レジデンツ(Residenz München)/ グロット宮殿(Grotto Courtyard)
ミュンヘン・レジデンツはコンサートホールのヘラクレス・ザールと同じ建物で背中合わせの位置にある。レジデンツの中にはロココ様式のキュビリエ劇場(Cuvilliés-theater)もあり、真横はミュンヘンのオペラ座(バイエルン国立歌劇場)なのでこの周囲に音楽施設が集っている関係で音楽好きには立ち寄りやすい。しかし、軽く覗くつもりで入場すると、中は広大につき戸惑うので注意が必要だ。
ミュンヘン・レジデンツは、この地を700年ほど支配していたヴィッテルスバッハ王家の王宮であり、増築を重ね先のコンサートホールに加えて教会まで擁する建物で奥行もある。建築様式もルネサンス、ロココ、新古典主義と多様で、それだけに見どころはたくさんある。特に禍々しい感じがするグロット宮殿(Grotto Courtyard)を楽しみに訪ねた。
ミュンヘン・レジデンツの入場券売り場にはコンビチケットがあり、宝物館(Die Schatzkammer der Residenz)を追加4ユーロで見られるというので、まずはグロット宮殿の前に宝物館に入ってみた。
宝物館は金細工の施されたまばゆい品々、宝石がちりばめられた王冠等でいっぱいだが、つい目が精緻な小物類に行く。王族たちが使ったはさみやスプーン、砂時計など精巧なデザインで興味深いものがかなりある。
続いて、レジデンツ内に向かう。このレジデンツ内のグロット宮殿へは宝物館とは向かい合わせの別の入口から入る。そして、お目当てのグロット宮殿は入口から入ってすぐのところにあった。貝殻で装飾され、エスニックな雰囲気も漂う奇っ怪な宮殿、「グロッタ」とは洞窟を意味する。
この洞窟のコンセプトはイタリアやフランスに以前からあったスタイルで、貴族たちは庭園にわざわざ人工の海底洞窟や鍾乳洞を模したものを造った。彼らはそこで宴会をひらいたり、愛を交わす密会場所として使ったらしい。また、母胎をイメージさせることから婚礼の場としても使われたようだ。この文化が後にミュンヘンに流入したとのことである。
さてレジデンスであるが、これが予想外に広い。外観は宮殿にしてはシンプルだが内部は入り組んでいる上に各フロアとも全長が長い。部屋を回っているとロングコースとツアー客向けのショートコースを選べる矢印がある。余裕があるのでロングコースを選んだところ、その広さに圧倒された。じっくり見学をせずとも、歩くだけでゆうに1時間以上は要するだろう。
宮殿らしく圧倒的なのはタペストリー類。タペストリーは見逃しがちだが一度ハマってから、なるべく丁寧に見るようにしている。石造りの建物で保温機能を備えた壁紙のようにも使われていたタペストリー。王宮を飾る物だから当然手がかかるものであり、細工も微細で見事なものが多い。今回は食肉解体等の市井の暮らしぶりがわかるような珍しいテーマのものをいくつか見かけた。
ルネサンス建築の大広間「アンティカリウム」が1番の見どころとされるミュンヘンレジデンツだが、細工の見事な王族の日用品や圧倒的なタペストリー類など見所満載であり、時間にゆとりをもって見学したい場所である。
・ニンフェンブルク城(Schloss Nymphenburg)
映画『去年マリエンバートで』のロケ地であり、映画では庭園がとても印象的に使われていた。都心から路面電車で15分ほど揺られ、そこから住宅街を抜け徒歩10分ほどで到着する。大きな敷地のお城であるが、都心部からとても近い。バイエルン国王の夏の離宮とのことで周囲は自然も豊かで環境も抜群である。
お城の端に到達するとそこが馬車博物館(Marstallmuseum)だったので、まずはこちらを見学する。歴代の王の乗り物なので豪華絢爛なのだが、つい馬車下の足回りなど駆動部分に目が行く。最高権力者の乗り物であるから当然当時の最先端技術のはずで、その視点からだと馬車の発達史が楽しめる。
皇帝カール7世の戴冠式用馬車は金メッキが施された彫刻や織物の刺繍が見事で、重さは6トンもあるらしい。皇帝カール7世はこの馬車で戴冠式の為にフランクフルトに向かったと言う。見た目は豪華かつ巨大であるが、サスペンションも脆弱で当時の道路事情では400kmもの旅はけっして楽ではなかったろう。
馬車は傍から見れば優雅に見えるが、その実はたいへんな苦労を伴う乗り物だった。また、冬に馬車の代わりに使うそりも多く展示されており、こちらは更に厳しそうである。屋根もなく吹きさらしの雪上を疾走するのだから、さぞかし寒かったと思われる。
こちらもルードヴィッヒ2世のニンフをあしらったソリが展示されているが、見た目はとても優美だが、冬の屋外で毛布を1枚覆ったところで快適とは言いがたかったのではないだろうか。
馬車博物館を出てニンフェンブルク城の母屋に行ってみると団体観光客が非常に多い。前日訪れ誰もおらず閑散としていたシュライスハイム城とはうってかわって、観光客であちこちの通路も渋滞している。都心から近く観光バスでも乗り付けられるので大賑わいなのだろう。
城の名前である「ニンフェンブルク」の由来となった入口ホールのニンフ(妖精)の天井画を眺め、ルードヴィヒ1世が描かせたミュンヘン中の美人から選りすぐったという美人画をなんとなく眺める。
これらより目をひいたのは2階フロアにある陶磁器コレクションである。お皿なども見事なのだが、造形が豊かな置物をひとつひとつ眺めるが楽しい。1階フロアに観光客は集中しているらしく、こちらの陶磁器のほうはゆったり眺めることができた。
更にお目当ての庭園へ行くと、広大すぎるためか人もまばら。美しい幾何学的な庭園を巡りながら映画『去年マリエンバートで』のイメージを重ねてみた。
庭園を散策した後は本館には戻らず、そのまま城の横の公園を散歩しながら、帰路につくことができる。市民が普段使いしている、のどかで木々が美しい公園なのでついでに立ち寄るのも良い。
・アザム教会(Asamkirche)
ミュンヘン中心部には著名教会が多くある。塔の高さが100メートルある後期ゴシック様式の聖母教会/フラウエン教会(Frauenkirche)は市内のどこからでも尖塔が目に入るし、ルネッサンス様式の聖ミヒャエル教会(St. Michael Kirche)の内部は壮大である。
そんな中で、目立たないながらもマリエン広場からも近くミュンヘンに中心部に来たら必見の教会がある。正式名称は聖ヨハン ネポムク教会(St.Johann Nepomuk Kirche)と言うが、建築家であったアザム兄弟の名前からアザム教会(Asamkirche)と呼ばれることが多い。
彼等の私費によって建てられた経緯からか、さほど由緒のある教会ではないからか、他の教会のようにガイドブックで大きく取り上げられてはいない。しかし、そのシンプルな外見と異なる内部を見ると驚嘆の声がもれることを請合いである。
場所はゼンドリンガー通り(Sendlinger Straße)、普通のショッピングストリート上にある。入口には多少の装飾はあるものの、間口も狭く、注意をしないと通り過ぎてしまう。
しかし、一度足を踏み入れると「異世界への扉」と言われるだけあって、普通の教会とひと味もふた味も異なる異様な雰囲気に圧倒されることは間違いない。バロック様式とロココ様式を併せもつ壮麗かつ少々不気味な趣の教会で類を見ない内装である。
そして、小ぶりな教会内に凝縮された独善的な装飾と配置、おどろおどろしい彫像がそれら装飾と調和している様が見事である。入口がわかりにくいのと、教会であることを気がつかない人が多い為か、内部には人が少ない、ショッピング街にいることを忘れてしまうような人の少ない内部でじっとしていると周囲の像が語りかけてくるようだ。
天井のフレスコ画もアザム兄の手によるもので、薄暗い屋内であるが、上階ほど光が集るように設計されているので、ぼんやりながらも絵も確認できるし、絵の周囲のこれまた奇妙な彫像も興味深く眺めることができる。
この奇っ怪で異世界の雰囲気からレジデンツのアンティカリウム、グロット宮殿などがお好きな方は必見である。
・旧植物園(Alter Botanischer Garten)
かつて植物園がありGlaspalast (水晶宮)というガラス張りの豪華な国際見本市会場があった場所である。この水晶宮は1854年に建てられたが、1931年に収蔵品の多くの美術品とともに火災により焼失してしまう。
現在は植物園ではなく公園となっているが緑の多い美しい自然が拡がる。そして、ミュンヘン中心地からレンバッハ美術館やアルテ・ピナコテークに行く途中にあり、散歩をするのに具合が良い。今では往年の華々しさはなく、建造物と言えばネプチューン噴水(Neptunbrunnen)やギャラリーのクンストパビリオン(Kunstpavillon)だけが残る。
水晶宮はその焼失後に再建を目指されたが、ナチスドイツの台頭により計画が頓挫してしまう。ナチスドイツは植物園とは別の場所に現在は現代美術館として使われている ハウス・デア・クンスト(Haus der Kunst)を建てた。一方、植物園の再設計の際の1936年にクンストパビリオンがつくられることになり、現在も小規模な美術館ギャラリーとして使われている。
また、公園の周囲は閑静な住宅街となっており、モダンな建築は眺めていて楽しい。
● ババリア・フィルムシュタット(Bavaria Filmstadt)
ミュンヘン郊外に映画村がある。その体裁が風変わりで面白い、本格的な撮影スタジオ建物群の合間にアトラクションを点在させてあるのだ。つまり、映画関係者も歩き回るスタジオ敷地内をガイドに連れられて、見学して回る形になり、自分が映画関係者になったかのような気分にさせられる。スタジオ内を練り歩き、オフィスやスタジオの日常が垣間見られるアットホームな感覚が楽しいのだ。
そして、ここには 1982年に公開された映画『U・ボート』(Das Boot)のセットがそのまま保存されており、撮影所ツアーの目玉施設となっている。
ババリア・フィルムシュタットの詳細については、以下のブログ記事「映画村 “ババリアフィルムシュタット(Bavaria Filmstadt)” で 名作映画『U・ボート』(Das Boot)のセットを見学する / 強力推薦! ドラマ版『U・ボート TVシリーズ完全版』」をご参照ください。
● 美味しいミュンヘン
・ミュンヘンのビール “Räuber Kneißl”
ミュンヘンのビール “Räuber Kneißl” は、強盗クナイスルの名前がつけられたダークビール。クナイスルはバイエルンのロビン・フッドで、反権力の人気泥棒だったらしい。1556年設立のマイザッハ醸造所(Brauerei Maisach GmbH)のビールで麦芽の香り強く、ちょい甘めで美味しい、ラベルデザインも素敵。ミュンヘン市博物館(Münchner Stadtmuseum)の中庭でいただいた。
・ミュンヘンのビール “Augustiner Bräu” とドイツ料理のレストラン “Liebighof”
“Augustiner Bräu” は、1328年設立のミュンヘンで最も古い醸造所、ホップの香りが豊かで美味しい。ドイツ料理のレストラン “Liebighof”でいただいた。
このビールをいただいたドイツ料理のレストラン “Liebighof” はバイエルン州立博物館そばでバイエルン国立歌劇場やヘラクレスザールからも1kmほど。ドイツ料理を楽しんでドイツ音楽を楽しむのに丁度良い。
お店は開店して30分ほど過ぎると、あっという間に満席になった。お手頃なお値段とビールの美味しさから、その人気もうなずける。
メニューを見て ダークビールのグレーヴィソースのかかった肉団子に炒めたキャベツと焼いたポテト というのがある。これに先のビール “Augustiner Bräu” を合わせたところ相性は抜群であった。
・ミュンヘン中央駅そばの美味しいトルコ料理 Altın Dilim
味のバリエーションが豊富なトルコ料理、野菜をたくさん摂ることもできるし、お米料理もあるので、いささか一本調子なドイツでのご飯の中では貴重な存在。ドイツはトルコからの移民も多く、お味は本格的なのも嬉しい。
トルコ料理店 “Altın Dilim” はミュンヘン中央駅そばにあり、庶民的な雰囲気で皆さんがご飯をパクついている。
最初はトルコ料理の定番であるピーマンの肉詰めを頼んだ、パンやサラダはこれに自由に追加できる。
借りたアパートが店から近かったこともあり、手軽なので別日にも訪ねた。今度は大きな鶏にパプリカの味わいが素晴らしい一品。向かいのトルコ人の若者は、こちらのお肉を丁寧にバラして、ご飯と混ぜてスプーンで食べていた。
● ミュンヘンのアパート泊(City Aparthotel München)
今回逗留したシティ アパートホテル ミュンヘンは中央駅付近から徒歩圏内で地下鉄駅も近い。付近は食料店が充実しており、自炊にも便利な場所であった。
シティ アパートホテル ミュンヘン のお部屋は旧市街外環道路に面していて明るい良い部屋であった。洗濯機も完備しており、トイレはウォシュレット付、カールスプラッツにも近い立地も考慮すると、かなり快適なアパートホテルである。
アパートのキッチンは小さいながらも煮物程度なら必要充分。アパート近辺の食料品店はスーパー含めて量り売りなので、これくらいのキッチンがあれば、1人鍋やスープを作ったりできる。
また、ドイツはチーズやハムなど加工肉が充実し、手軽にいろいろなサンドイッチを作ることができる。そこで、小さくても冷蔵庫があるのは大助かりであった。
ミュンヘン中央駅近辺からアパート裏手 Landwehrstraße までは、盛況かつ値頃な八百屋、肉屋がたくさん立ち並ぶ。ミュンヘン中心部の広場 の食材市場 Viktualienmarkt が割高に感じるほどだ。そして Karlsplatz 辺りは普段使いに適したスーパーが 自然食系を含めていくつもある。
バイエルン名物の白ソーセージ茹で、キノコを炒めでワインをひっかける。オペラなど観劇の前後も軽食がとれるのでやはりレンタルアパート暮らしは便利である。