長らく使用していたNuforceのパワーアンプが故障し、代替品を探し始めた。候補に挙がったのは近年注目を集める日本製のデジタルアンプメーカー各社である。迷った末に、1ビットデジタルアンプのNmodeを選んだ。このアンプには、最近その有効性に気づいた外部クロック入力端子が搭載されている。
そこで、ヤフオクで見つけたBAMなるガレージメーカーのクロックジェネレーターを接続したところ、アンプも大変身。久しぶりにデジタルの鮮烈かつハイスピードな空間表現を楽しんでいる。
○ 信頼厚き代理店のフューレンコーディネート
○ 侮れない日本製のデジタルアンプ
○ Nmode X-PM7 MKIIを選択
○ BAM TUNING クロックジェネレーターの実力
○ 信頼厚き代理店のフューレンコーディネート
長年使っていたパワーアンプの Nuforce stereo8.5 v3 がついに昇天をしてしまった。スイッチをオンにしても立ち上がらず、正面の青いインジゲーターが点滅している。
ハイスピードで濁りのない音の特性からデジタルアンプに大いに惹かれる入口となったのが Nuforce社のアンプたちだったので思い入れもひとしおであり、残念至極である。

Nuforceは、一部の経営陣が離脱してNuPrimeというブランドを立ち上げた後にすたれてしまい、現在はオーディオブランドとして、ほぼ消滅してしまっている。にも関わらず元代理店であったフューレンコーディネートさんに問い合わせたところ、親切丁寧なことこの上ない対応をされた。
「もうパーツもないので修理は難しい」としながらも、「一応見てみるので送ってほしい」と応じてくださった。早速、アンプを現在オフィスをかまえる埼玉県所沢市へ送ると、受取りの確認とともに簡単な内部の診断報告を電話してくださった。
そして、翌週に更に精査をされたらしく、再び故障の状況や原因などを詳細に教えてくださった。

Nuforceには、本当にお世話になった。ハイスピードで音は繊細、低能率のスピーカーもやすやすと鳴らす大出力、本当に申し分ない性能であった。そして、代理店のフューレンコーディネートさんには、こうした不具合時だけでなく、機器のバージョンアップの度にお世話になった。銀座にオフィスがあった時は何度か持ち込みに伺ったことすらある。
訪れるたびに様々な話を伺い、丁寧な対応をいただいた。そのためNuforce消滅後も、同じくフューレンが代理店を務めるNuPrimeブランドの製品を使用し続けていた。デジタルアンプに目覚めて以降、本当にお世話になった代理店であった。
聞けば、さすがにNuforceの相談はこの数年はなかったらしい、にも関わらず修理検査を快諾してくださった。結局のところ既に交換パーツはなく、修理はかなわずであったがこの丁寧なやりとりに、やはり良い代理店の製品を使い続けていてよかったと感じたものである。
○ 侮れない日本製のデジタルアンプ
それで、Nuforceに変わる代替のアンプ探しが始まった。前回以下の記事で書いた通り日本のデジタルアンプの開発にめざましいものがあり、そちらに触手を伸ばしてみようと考えた。
候補は以下の3つの会社である。いずれもデジタルアンプの国産専門メーカーだ。
・SPEC(https://www.spec-corp.co.jp/):パイオニアが事業縮小した際に退職した方々が設立
・Nmodeというブランドが認知され始めたLyric(https://www.nmode.jp/):シャープで1ビットのデジタルアンプを開発した方が設立
・逢瀬(https://ause-audio.com/?page_id=23):魅力的な製品群を細々と打ち出しているガレージメーカー
思案の末、これまで使用経験のない技術であり興味深かったため、1ビットアンプのNmodeを選択した。機種は、1bitプリメインアンプの Nmode X-PM7 MKII(税抜定価:300,000円)である。
キャッチフレーズに『Nmode 史上最大パワー 1bit アンプ誕生』とあるのがポイントになった。サブシステムなので、さほど出力はいらないが、それでも能率の高くないスピーカーを使っているので、そこそこのパワーは必要である。この機種ならばちょうど良いと考えた次第である。
○ Nmode X-PM7 MKIIを選択

Nmode X-PM7 MKII の特徴は以下とある。
・X-PM7 から大幅に回路の見直しを図り、1bit アンプ部、プリ部は新設計。
・10周年モデル用に制作した、薄膜高分子積層コンデンサの専用品を搭載。
・残留ノイズレベルは従来モデルの10分の1以下。
・背面にパワーアンプ化への切換えスイッチ搭載。
・音質、パワーともに大幅にアップ。
・リモコン対応。
・外部スーパークロック入力付き、外部クロックの使用で 6 種類のサンプリング選択が可能
端子:BNC コネクター(75Ω終端)
クロック周波数:5.6448、6.144、11.2896、12.288、22.5792、24.576 MHz
信号レベル:5Vp-p
・仕様 W420×H80×D360mm(突起物除く) 最大出力32Wx2(4Ω)、20Wx2(8Ω)
特に魅力的だったのは、パワーアンプ化への切換えスイッチの搭載と、外部クロックジェネレーターへの対応である。

Nuforceのパワーアンプの代替として購入するので、そもそもプリ部は不要であるから音質的にも切換えスイッチがあることは有利だろうと思ったからである。しかし、Nmode X-PM7 MKIIはリモコンで音量調整やソースの切替えができることから、使い勝手の良さから結局は現在プリアンプとして使うことにしてしまった。
もう一つ X-PM7 MKII が優れている点は外部クロックジェネレーターに対応していることである。以下の記事で書いた通り、メインシステムにクロックジェネレーターを導入して以来、オーディオ機器の外部クロックによる音質向上効果に魅せられてしまった。
オーディオシステムの変遷-CDプレーヤー編 2 / 時計をあわせるお話-クロックジェネレーター導入
Nmode X-PM7 MKIIのことを事前に調べていた際に知ったのだが、このアンプは異常なほど立ち上がりが悪いらしい。それ故に使わない時にもアンプの電源オンのままにしている方も多いと言う。アンプ本体はあまり熱くなるわけでもないので、それでもかまわないらしいが、アンプをつけっぱなしというのはどうも気になる。
ここで外部クロック導入が効果を発揮する。X-PM7 MKIIの立ち上がりの遅さは内部クロックに起因しているため、外部クロックを用いることで立ち上がり速度の問題が解決できるのだ。
外部クロックは消費電力もさほどではないし、ヒーターによる温度維持が必要のために常時電源投入が原則であるから、こちらは常時電源オンにして、アンプのほうは通常通り使用時のみ電源投入をすればよい。音質は更に改善するし、外部クロックの導入は良いことづくめである。
○ BAM TUNING クロックジェネレーターの実力
Nmodeには X-CL3 という外部クロックジェネレーターを発売している。そして、これの水晶発振器をルビジウムに変更するなどの改造も流行っているようだ。しかしながら、前記事のようにオーディオメーカーでなくともクロックジェネレーターのガレージメーカーはあり、実はこちらのほうがメーカーよりもクロックの心臓部である発振器に良いパーツを使っているものが多い。
サイバーシャフト社の Palladium シリーズもそうであるし、今回ヤフオクで購入したBAMと言う杉並区で営んでいるクロックジェネレーターのガレージメーカーも同様である。メーカー品ならば10倍の値付けになるようなクロック製品をこちらでなら安価で入手できる。
それで、今回選択したのは、ヤフオクとeBayの出品者hyper_bamがBAM TUNING名で販売しているマスター / ワード・クロック・ジェネレーターである。BAM TUNINGのものも発振器は、超高精度OCXO搭載しており、事前に計測結果の説明を受けたが精度も非常に高いものであった。ちなみに、クロック発振器は、内蔵されているものはSPXO(温度補償/温度制御なし)が多く、高級なものではTCXO(温度補償型)、ハイエンドではOCXO(恒温槽付)が一般的である。

発振器には水晶が使われており、精度維持のために温度を一定に保つ必要がある。そのため水晶を収めた容器をオーブンで加温する機構が採用されており、常時通電が必要となる。
今回導入したBAM TUNING クロックジェネレーターももちろん同様の機構となっており通電しっぱなしが原則である。
一方、Nmode X-PM7 MKII側には外部クロック用としてBNCコネクターが付いており、75Ωのケーブルでつなぐようになっている。 クロック周波数:5.6448、6.144、11.2896、12.288、22.5792、24.576 MHz が対応するワードクロックという仕様である。
サイバーシャフト社のクロックジェネレーターは10MHzのマスタークロック形式だけなので、X-PM7 MKIIには直接接続できない。一方で、BAM TUNING クロックジェネレーターは、マスタークロックの出力1つに加えて、ワードクロックは2つの出力をもっている。更にオプションとしてワードクロックの周波数の変更も可能であるし、各々の端子を50Ωや75Ωに自由に設定もしてもらうこともできる。
BAM TUNING 10MHz マスタークロック + ワードクロック / EPSON-TOYOCOM製 二重恒温槽搭載の仕様
・10MHz出力: 10.000MHz 高精度マスター・クロック
・第1出力: 44.1kHz、88.2kHz、176.4kHz、352.8kHz、8.4672MHz、11.2896MHz、22.5792MHz
48kHz、96kHz、192kHz、384kHz、24.576MHz、計12種のワード・クロック
・第2出力: 44.1kHz、88.2kHz、176.4kHz、352.8kHz、8.4672MHz、11.2896MHz、22.5792MHz
48kHz、96kHz、192kHz、384kH、24.576MHz、計12種のワード・クロック
・オプションで25MHz、16.9344MHzなど標準以外の周波数へも変更可能
・出力波形: 矩形波 (TTL)
・出力インピーダンス: 75Ω(オプションで50Ωに変更可能)
・10MHz外部基準クロック用入力
・ALPS製のスムーズで確実なロータリー・スイッチ
・オプション類は後日組込も可能

ちなみにワードクロックとは機器間の同期に必要な信号そのもののこと。一方でマスタークロックとは複数の機器の基準となる高精度なクロック信号を生成してワードクロックを含む同期信号を供給する機器をさす。つまり、BAM TUNINGはマスタークロックを生成供給でき、かつワードクロックも供給することができるのである。
また、クロックジェネレーターの未使用端子には終端器を付けているケースも多い。ただ、BAM TUNINGには、マスタークロック1つ、ワードクロック2つの合計3つの出力があるが、電気的には別々の場所でクロック生成され、別々のプロセス回路を経て夫々の出力端子に接続されているとのことだ。その為、個別端子を終端処理しなくてもクロックに与える影響は無視できるほど小さいはずとのことである。
これほど多機能なクロックジェネレーターを、BAM TUNINGは3万円程度で販売している。音質改善効果も大きく、Nmodeユーザーにとって必携の存在といえる。
ちなみにBAM TUNINGよりNmodeの製造元リリック社へは信号レベルなど接続の可否などは確認済みとのことであった。
結果として、外部クロックを接続したNmode X-PM7 MKIIは、同価格帯のアンプを大きく凌駕するレンジの広さと精緻な分解能を実現した。
