クロックジェネレーターの存在は以前から知っていた。しかし、その効果を実際に確かめる機会が少なく、これまで導入には至らなかった。オーディオショップでもあまり見かけず、展示や試聴の機会も少ないからである。
それでも、再生の中心がCDである自分にとって、CD再生の質を高める選択肢として導入する価値はあると判断した。
今回選んだのは、サイバーシャフト 10MHzマスタークロック(超高精度OCXO搭載10MHzクロック「Palladium OP17」)である。決め手となったのは、公式ホームページに掲載された詳細な技術解説と選択ガイドであった。
○ オーディオ機器の「時計あわせ」とは?
○ サイバーシャフト Palladium OP17を選ぶ
○ 外部電源とインシュレーターを選ぶ
○ BNCケーブルには、純銀高品位 BNC75SL-XXX を選択
○ Palladium OP17をEsoteric K-03XDに接続
○ 外部クロック導入でCDの音はどう変わったか
–海外のコンサートホール、かつての歴史的なコンサートに誘ってくれるのが自分にとってのオーディオ。なぜ旅ブログでオーディオなのか?というお話は、こちらの記事「本場のコンサートホールを再現する」をご参照ください–
○ オーディオ機器の「時計あわせ」とは?
音楽CDには、アナログの音を細かく時間で区切ってデジタル信号に変換したデータが収録されている。再生時には、録音時と同じタイミングでこのデジタル信号をアナログに戻す必要がある。タイミングがずれると、元の音の表情が失われてしまう。
CDプレーヤーでは、デジタル信号を処理する際の基準として、内部のクロック信号が使われている。このクロックに時間的な揺らぎが生じると、デジタル信号のタイミングにも影響する。この時間的な揺らぎが「ジッター」であり、デジタルオーディオの再生品質に影響を与える。
クロックジェネレーターとは、この「時間のしるべ」となる基準クロックを高精度に生成する装置である。CDプレーヤー内部にもクロック回路は存在するが、対応機器に外部クロックを接続することで、より高精度なクロックを基準としてデジタル信号を処理できるようになる。これによって、音の鮮度や立体感の向上が期待できる。
外部クロックには、OCXO(Oven Controlled Crystal Oscillator)と呼ばれる恒温槽付水晶発振器が使われることが多い。これは水晶振動子を一定の温度に保つことで、温度変化による発振周波数のずれを抑える仕組みである。
温度を安定させる必要があるため、OCXOを搭載したクロックは常時通電しておくことが推奨される。一度電源を切ると、再び温度が安定するまで数時間から数日を要する場合がある。また、新品時には、しばらく電源を入れ続けることで発振器が安定してくるとも言われている。
クロックジェネレーターは、CDプレーヤーにおいて音の時間軸を支える「合図係」のような存在である。そのタイミングの正確さが、デジタルオーディオの再生品質を左右する重要な要素となるのだ。
○ サイバーシャフト Palladium OP17を選ぶ

これまでクロックの重要性を知ってはいたものの、半信半疑で、話半分に聞いていた。外部クロックの導入事例はまだ少なく、対応するCDプレーヤーも限られているうえ、機器自体も高価である。
とはいえ、自分はレコードやネットワーク再生よりもCDの再生頻度が圧倒的に高く、手持ちのCDも膨大である。そこで、CD再生をさらに良くできる可能性があるなら試してみようと、導入することにした。
選んだのはサイバーシャフト社の製品である。同社のクロックは高品位なパーツを採用しており、公式サイトでは一部のオーディオメーカー製品を上回る性能をうたっている。ただし、OCXOの精度によって価格に差があり、グレードが細かく分かれている。
同社ホームページの選択ガイドには、次のような記載がある
・OP04からOP21まで幅広いグレードが用意されており、数値が大きいほど性能が高い
・OP04でも、100万円を超えるハイエンドDACに内蔵されたクロックより優れている
・OP13以上であれば、大多数の機器で明確な音質改善が体感できる
・OPグレードの差が2未満の場合、ブラインドテストでの識別は困難なほど微細
これらを踏まえ、コストと性能のバランスを考慮して「OP17(超高精度OCXO搭載 10MHzクロック Palladium OP17)」を選択した。最上位ではないが、十分に効果を期待できるグレードである。
○ 外部電源とインシュレーターを選ぶ
サイバーシャフトの高グレード機では、外部DC電源の使用が推奨されている。そこで一般的なACアダプターではなく、同社が推奨するリニア電源「CYB-LN02」(税込16,500円)を選んだ。接続は、5.5mmの標準DCプラグをPalladium OP17に挿すだけと簡単である。

サイバーシャフトホームページ写真
・サイバーシャフト CYB-LN02 16,500円 製造メーカー型番:TOPPING / P50
「コスト重視でリニア電源の導入もしたい」、とのご要望にお応えして厳選した海外製高性能リニア電源をご用意いたしました。低ノイズ密閉型トロイダルトランス、超低ノイズTPS7A4700レギュレーターを3基搭載した高品質な製品となっています。クロック本体のLT3045電源の相乗効果で、本電源でのクロック出力計測特性値は、高純度外部電源(LTPW01)と同等です。1台毎にサイバーシャフト品質テスト済み。
電源にかかるコストを抑えた分、本体にはスパイク型インシュレーター「SPF-01」を装着し、振動対策を強化した。この製品はスパイクと台座が一体化しており、設置が非常に容易である。
・サイバーシャフト SPF-01(3個セット)13,800円

サイバーシャフトホームページ写真


○ BNCケーブルには、純銀高品位 BNC75SL-XXX を選択

外部クロックの接続にはBNCケーブルを使用する。クロック信号を伝送する重要な部分なので、ここも妥協せず、サイバーシャフト社の上位モデル「BNC75SL-XXX」を選んだ。
・サイバーシャフト 純銀高品位BNCケーブル BNC75SL-XXX 28,700円~
様々なメーカーのBNCコネクターと純銀芯線を使用した同軸ケーブルを組み合わせて試聴した結果、弊社のクロック製品と組み合わせることで最良の性能を発揮する、まさに入魂の作りのBNCケーブルです。このケーブルは非常に高い解像度を提供しながらも、音が尖ることはありません。中域から低域にかけても薄くなることがなく、帯域全体にわたってバランスの取れた美しい音色が得られるのが特徴です。特に弊社のクロック製品のOP15以上のグレードには、ぜひお薦めしたい逸品です!
説明書きだけでなく、価格設定も良い意味で強気である。メーカーによれば、原価に近い価格設定としているとのことである。また、メーカーによれば、75Ωのケーブルでありながら、同社のクロック製品と50Ω機器を接続した場合でも十分な性能を確認しているとのことである。50Ω/75Ωというインピーダンスの違いを過度に気にせず使える点も嬉しい。
○ Palladium OP17をEsoteric K-03XDに接続
接続は単純である。Palladium OP17の背面にある10MHz出力と、CDプレーヤーのESOTERIC K-03XDにある外部クロック入力端子をBNCケーブルで接続する。K-03XD側では、設定メニューで外部クロックの同期(SYNC)を選択する(ONにする)。
なお、クロックケーブルを短く保つため、OP17と電源のCYB-LN02は木製の台座に載せ、CDプレーヤーの背面に配置した。
こうして設置を終えると、CDプレーヤーESOTERIC K-03XDのフロントパネルにあるクロックインジケーター(CLOCK)が点灯し、10MHzのクロックが入力されていることが表示される。

○ 外部クロック導入でCDの音はどう変わったか
導入から1か月が経過したが、接続直後から音の変化ははっきりと感じられた。音は繊細で清潔になり、さらに日を追うごとに表情が豊かになって、サウンドステージも広がっていった。
特に印象が変わったのは、ピアノの音が澄み、歌声がいっそうナチュラルになったことである。目の前で歌っているような印象も強まった。
トラック11「ひとつだけ」(矢野顕子 with 忌野清志郎)では、左でピアノを弾く矢野顕子と、右でハーモニカを吹く清志郎の掛け合いが見事に浮かび上がる。二人の間にある空気感まで伝わり、自分のために歌ってくれているような錯覚を覚える。
ハートフルな清志郎の声に、いつも以上に色っぽく感じられる矢野顕子の声が重なる様子は、まるで目の前でライブを聴いているようである。空気感というのは大切である。臨場感が増したことで、早世した清志郎さんの声がいっそう身近に感じられ、思わずぐっときてしまった。
音質改善によって「ボーカルが一歩前へ出てくる」という表現があるが、今回の改善はそれとは少し違う。コンサートホールを俯瞰するような席で聴いていたのが、平土間の真ん中に連れてこられたような感覚になったのである。
『菅野レコーディングバイブル』(SS選書)に付属するSACDは、リファレンスとして使える、すごい音が詰まったディスクである。すご腕エンジニアだった菅野沖彦さんの録音群から、嶋護さん(@bestsoundingcds)が選りすぐった音源を収録したディスクで、ここぞという時に聴いている。どの音源も共通するのはスピーカー外への音が拡がり、低音がしっかりと納められていることだ。オーディオ評論家としての菅野沖彦さんしか知らない方には、ぜひ本物の録音エンジニアとしての実力を、このディスクから聴き取っていただきたい。
<<現在のシステム構成>>
・スピーカー:Avalon Acoustics Eidolon
・プリメインアンプ:Technics SU-R1000
・CDプレーヤー:ESOTERIC K-03XD
・レコードプレーヤー:TEAC TN-5BB
カートリッジ:Audio Technica AT33Sa
・レコードプレーヤー:LINN AXIS
カートリッジ:Audio Technica AT33MONO
・サブウーファー:ELAC SUB2050
<使用ケーブル>
Spectral/MIT MH-750 ULⅡ:スピーカー Avalonと接続
Spectral/MIT MI-350 UlⅡ RCA:ESOTERIC K-03XDとアンプ接続
※MIT Shotgun MA RCA から変更
SAEC SCX-5000X-X [XLR→XLR] :TEAC TN-5BBとアンプ接続
サイバーシャフト 純銀高品位BNC:ESOTERIC K-03XDとPalladium OP17を接続
MIT Shotgun AC1:ESOTERIC K-03XDと電源接続
MIT Magnum AC1:SU-R1000と電源接続
<<関連記事>>
● 本場のコンサートホールを再現する
オーディオが届いた日、コンセルトヘボウを我が家へ、オーディオらっぱ堂の思い出
● 少しでもホールの音響に近い音を自宅で再生するために
エルプ フィルハーモニー・ハンブルク 見学記
ロンドン ロイヤル・アルバート・ホール 見学記
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス 見学記
ラジオ・フランスの新コンサートホール 見学記
ミュンヘンのコンサートホール 見学記
シカゴ オーケストラホール 見学記
ウィーン ムジークフェライン/楽友協会の大ホール 見学記
アムステルダム コンセルトヘボウ 見学記 1
アムステルダム コンセルトヘボウ 見学記 2
● 音盤あれこれ
・ 50年前のヴィンテージオーディオのハイレゾ感に息を呑む
五味康祐氏のオーディオによるレコードコンサート
・ クリスマスの名曲・おすすめ名盤!
気分で選ぶクリスマスソング【録音評価付き】
・ スターウォーズ音楽 怒濤のディスクレヴュー
スター・ウォーズの音楽特集 名演奏による饗宴
・ 作曲家J・ウィリアムズが一目置く名演奏、チャールズ・ゲルハルト指揮のスターウォーズ旧三部作
スター・ウォーズの音楽特集 プロデューサーと録音エンジニア
・ アムステルダムの中古レコード店巡り
Vinyl Amsterdamで探すクラシックLPとCD
● オーディオの変遷
・ オーディオシステムの変遷-スピーカー編
マーティンローガンからアヴァロン エイドロンへ|静電型同様にサウンドステージの表現に長けたスピーカーに出会う
・ オーディオシステムの変遷-パワーアンプ編
管球アンプからデジタルアンプへ。静電型スピーカーをドライブするには強力なパワー必要だった
・ オーディオシステムの変遷-プリメインアンプ編
Technics SU-R1000レビュー|究極のフルデジタルプリメインアンプ
・ オーディオシステムの変遷-ネットワークオーディオ編
ネットワークオーディオの進化と静音PC導入の記録
——
・ オーディオシステムの変遷-レコードプレーヤー編 1
LINN AXISを再調整したら音が変わった|オーバーハング・針圧調整とLP名盤
・ オーディオシステムの変遷-レコードプレーヤー編 2
40年使ったLINN AXISからTEAC TN-5BBへ|レコード再生を再構築
・ オーディオシステムの変遷-CDプレーヤー編 1
ESOTERIC K-03XDへ、X-50wから25年ぶりのグレードアップ
・ オーディオシステムの変遷-CDプレーヤー編 2
時計をあわせるお話|クロックジェネレーター導入
——
・ オーディオシステムの変遷-サブシステム編 1
KEF Q700とLS3/5aを30年使ったオーディオ遍歴|NORDOSTのオーディオチェックCD
・ オーディオシステムの変遷-サブシステム編 2
Technics SL-G700 をパワーアンプに直結して格段に進化
・ オーディオシステムの変遷-サブシステム編 3
ウクライナアコースティックス(UA Acoustics)でルームチューニング|吸音材で音場を改善
・ オーディオシステムの変遷-サブシステム編 4
NuforceからNmode X-PM7 MKIIへ|BAM TUNING外部クロックで音が変わった
● オーディオルームあれこれ
・ オーディオシステムの変遷-オーディオルーム編 1
自宅オーディオルームの反響対策|木質吸音材でスピーカーの前にコンサートホールが広がる
・ オーディオシステムの変遷-オーディオルーム編 2
オーディオ専用EMC電源を仮設、音質激変!自宅の電源改善
・ オーディオシステムの変遷-オーディオルーム編 3
「よい音」の探求とオーディオ専用EMC電源の導入
・ オーディオやシアタールームをスマートリモコン化する
オーディオ・ホームシアターをスマート化|SwitchBotとNature Remo比較
・ オーディオリスニングに最適な椅子
ニトリの電動リクライニングチェア 耳の位置を調整し音が一変|CD整理にスチールワゴン「トロリ」
● その他オーディオあれこれ
・ 優秀なフィリップス製ドライブメカの搭載で有名なマランツのCDプレーヤーを修理してみた
ピックアップユニット CDM-4 のギア(歯車)交換
・ オーディオやシアタールームをスマートリモコン化する
オーディオ・ホームシアターをスマート化|SwitchBotとNature Remo比較
・ SONYのサウンドバーで大型薄型テレビの音質改善!
Apple TV、RECBOX、HDDレコーダーの活用方法
・ 四半世紀前のLINN CLASSIKとKEF LS3/5aの復活
MIT社のケーブルへ交換、LINN LSP1をバナナプラグ化、FMアンテナの取付け





