オペラの国イタリアの俊英指揮者によるお勧めクラシック音楽本 / 『バッティストーニのぼくたちのクラシック音楽』 を読む

マエストロ・バッティストーニのぼくたちのクラシック音楽 アンドレア バッティストーニ著
東急ジルベスターのカウントダウンで「アイーダ 凱旋行進曲 」ラストの15秒伸ばし事件を「えぇもちろん計算通りです」と平然と答えた若手指揮者に惚れこみました。
そこで手に取った彼の書籍。丁寧、親切、素直な上に文章上手でめっぽう面白い。誰が読んでもクラシック音楽に親しみを感じ、書き手は当代随一の俊英指揮者という良書。

例えば、私たちも経験がある音楽の授業でのリコーダー(学校の笛)実習について彼はこう評する。「 ホラー。音楽への小さな最初の一歩を妨げるように作られています。しかるべき音が出ないのは笛のせいです!」
更に文中では「中学校で習ったリコーダーのことは、ここでは忘れてください。あれは、この本が取り上げようとしている音楽とは別物です」とも(笑)

リコーダーの件を含めてバッティストーニの音楽へのスタンスは以下にも詳しい。首席客演指揮者アンドレア・バッティストーニ、大人気テレビ番組『TED』出演!

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しかし、ここにいる大部分の方、一般のイタリア人にとっての初めてのクラシック音楽との出会いは、おそらく小学校の低学年でしょう。今この場をお借りしてイタリアの教育方式を批判したくはありません。何しろ私は、リコーダーの授業に異議を唱えて大半のイタリア人教師から総スカンを食らったことがありますから…(客席から拍手)

音楽教師、特にイタリア人教師を誹謗する気はこれっぽっちもありません。イタリアの学校は経済的に困窮しているし、イタリアの先生たちは数多くの大変な困難に立ち向かっているのですから、時には唯一 入手可能なものがリコーダーであるというのは分かっているんです。ただこんな、イースターの卵から見つけたおもちゃような、プラスチックの欠片を使って演奏をするというのは、何と言いますか、ちょっと逆効果なんじゃないかと私は思うんです。
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小気味よく率直な見解を述べるのも音楽への強い愛情故。その愛情から30歳あまりの彼が各曲にここまで深い造詣をもっているのか、と本を読むと驚嘆する。小澤征爾も若い頃はとにかく勉強勉強の日々と書いていたが、彼も同じで楽譜を傍らに置く様の描写などは面白い。そして、その勉強量を差し置いてもわかりすく書かれた本文の背景にある知識量に圧倒される。
以下は、彼のクラシック音楽のエッセンスを抜き出してみたもの。

・今すぐダウンロードすべき5曲 by バッティストーニ

ベートーヴェンの運命、ラベルのボレロ、モーツァルトのリンツ、ドボルジャークの新世界、ムソルグスキーの展覧会の絵

・ひときわ輝きを放つ大作曲家 by バッティストーニ

バッハと管弦楽組曲3番、ベートーヴェンと第九、ベルリオーズと幻想交響曲、ワーグナーとバイロイト、ストラヴィンスキーと伝統 &未来のリズム

フィラルモニコ劇場-バッティストーニの故郷ヴェローナには屋内劇場もある @Verona 1988年撮影

・オペラ入門にお勧めの5作品 by バッティストーニ

ヴェルディのリゴレット、ロッシーニのセビリアの理髪師、プッチーニのラ・ボエーム、モーツァルトのドン・ジョバンニ、ビゼーのカルメン

・指揮台のレジェンド3名 by バッティストーニ

アルトゥーロ・トスカニーニ、ヘルベルト・フォン・カラヤン、レオポルド・ストコフスキー

音楽本はあまたあるけれど、これらの音楽や作曲家の解説を指揮者自らがしたためたもので、若き俊英による新鮮な感性で読むことができる本書はかなり贅沢。

古代ローマ時代の円形闘技場@Verona 1988年撮影

彼の出身はイタリアのヴェローナ。街は世界遺産で、中心には古代ローマの円形劇場があり、毎夏に野外オペラ(アレーナ・ディ・ヴェローナ音楽祭)がおこなわれる。本の最後は、バッティストーニ少年が、かつて通っていたアレーナの舞台に、ついに立つお話。1人の少年が巣立つ最終章が素晴らしい。

「子供の頃、舞台は夢そのもの、この世のものではない憧れの場所だった」とある。しかし、アレーナの舞台に向かう、今の彼の目に映るのは準備に奔走する裏方のリアルな世界。そして、高まる緊張の中で、かつて自分が子供の頃に座っていた常連席に舞台裏から目に入ってくる。
夢がかなった今、そして高揚した気分で登壇する。

さあ音楽だ、ひたすら音楽だ。

が本書の結び。ひたすら美しい名文で綴られる、熱く、上質の音楽本。

マエストロ・バッティストーニのぼくたちのクラシック音楽 アンドレア バッティストーニ著
バッティストーニの音源

イタリア / ヴェローナ

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