前回からの続き。最終日はクライストチャーチに引続き滞在、すぐ近くの港街リトルトン(Lyttelton)の屋外市場で、買い食いの朝ご飯。港街はやはり美味しく、焼き魚まで食べることができた。食後は、クライストチャーチを観光、カンタベリー博物館やクライストチャーチ植物園を訪れて、7日間行動をともにしたオートバイを返却する。
そして、映画『ロード・オブ・ザ・リング』が導いてくれた今回のツーリング旅の総括として、映画のロケ地とその紹介本について。
● リトルトン(Lyttelton)のファーマーズマーケット
● カンタベリー博物館(Canterbury Museum)
● クライストチャーチ植物園(Botanical Garden Christchurch)
● ニュージーランドのバイクツーリングに導いた映画『ロード・オブ・ザ・リング』とロケ地ガイド
● リトルトン(Lyttelton)のファーマーズマーケット
クライストチャーチからオートバイで20分ほどのところにリトルトン(Lyttelton)と言う港街がある。ここは南島最大の港街で、1850年に移民船が上陸した街でもある。20世紀初頭には、イギリスの探検家ロバート・スコットやアイルランドの探検家アーネスト・シャクルトンが南極探検へ向かったのもここからだ。リトルトン港は各国の南極基地へ物資を輸送する拠点港として、今も活躍している。
港町は食事が美味しいと相場が決まっており、更には毎土曜日の朝、ファーマーズマーケットがたつと聞けばリトルトンへ行かざるをえまい。ニュージーランド滞在の最終日なのでお土産を購入するにも好都合。市場は10時からとの話だったが、到着してみると9時半にしてバンド演奏やっておりマーケットは大賑わい。
朝食はこちらで買い食いをしようと考えていたので、ブラブラ各店を眺めていると、ピクルスを売っているお店がスープを販売していた。まずこちらを試してみる。スープは Kumara and bacon hot soup とある、「Kumara」とはマオリ語でサツモイモのこと、こってりほんのり甘いスープ。
次は屋台の魚屋さんで、Gurnard(ホウボウ)を焼いたもの売っていた、こちらはレモンと塩胡椒でパンにのせていただく。また、クラムチャウダーもあり、小さなムール貝や蟹やら数種の魚やらと、魚屋さんならではのごった煮で出汁が効いていて、とても美味しい。
パイ屋さんでは、マッシュルームとバジルペースト&サワークリームのパイを選んだ。見るからに衣はサクサク感があって、中身は手作りの具、不味かろうわけがない。
地元でも人気の市場だけあって、皆さん買い物かご持参で、たっぷり野菜を買っている。中にはザックからはみ出している方も。
● カンタベリー博物館(Canterbury Museum)
朝食をリトルトンのファーマーズマーケットで済ませ、向かったのはニュージーランドの歴史科学博物館にあたる カンタベリー博物館(Canterbury Museum)。建物は1870年のもので、展示規模こそ大きくないが、ニュージーランドの古代からの歴史を学ぶことができる。先住民の生活に加えて、化石や鉱物や自然博物館的要素もあり総花的な展示。南極探検関連の展示もあって面白い博物館ではある。
● クライストチャーチ植物園(Botanical Garden Christchurch)
カンタベリー博物館裏には、1863年開園の広大な植物園がある。素敵な公園だが人が多くなく、とても開放感がある。250種類以上のバラを集めた立派なバラ園は有名で、こちら目当ての観光客も多いと言う。
バラ園以外にも温室に加えハーブなど含めた1万種以上の植物が集められている。
植物園を見学した後は、オートバイを返却しにレンタルバイク店 Te Waipounamu Motorcycle Tours へ。短い期間ながらも身体と一体化したオートバイを返却する時はいつも寂しい感じがする。
● ニュージーランドのバイクツーリングに導いた映画『ロード・オブ・ザ・リング』とロケ地ガイド
日本への帰路の途中、トランジットでオークランド国際空港(Auckland International Airport)に立ち寄った。その際に、映画『ホビット』(The Hobbit)とのタイアップを空港内のそこかしこで見かけた。その『ホビット』に先かげて映像化されたのが同じ J・R・R・トールキンの原作に基づく映画『ロード・オブ・ザ・リング』である。
映画『ロード・オブ・ザ・リング』は、公開からずいぶんと時が経つが、未だに作品の魅力は色あせていない。また、昨年は原作者の伝記映画『トールキン 旅のはじまり』(Tolkien)も公開され、彼の生い立ちと『ロード・オブ・ザ・リング』/ 指輪物語の関係性には、とても興味深いものがあった。
映画『ロード・オブ・ザ・リング』は、ニュージーランドの大自然に関わりの深い、素晴らしい作品である。興行成績も世界最大級であったこの映画、屋外のほとんどのシーンがニュージーランド南島で撮影された。今回、ニュージーランドをツーリングしたいと思うようになったのは、この映画で映し出された圧倒的な大自然の景観に魅せられたことが大きい。
映画の中の架空の世界「中つ国」は、有史以前のヨーロッパ地方という設定になっている。その「中つ国」で諸侯が争い、エルフやドワーフなど人間以外の種族や魔物も登場する。アルプスを思わせる切り立った山々と、ドイツのシュバルツバルトのような深い森の両方を有するニュージーランド南島は、こんな舞台設定のロケ地には最適であったのだろう。そして、実際にニュージーランドのサザンアルプス山脈を二度ほど超えてみると、まさしく映画そのものの世界が目の前に拡がっていた。
そんな映画『ロード・オブ・ザ・リング』の舞台である「中つ国」を旅する 好ガイドブックがある。それが『Lord of the Rings Location Guidebook』という本で、今回の南島を巡る旅で大いに参考になった。
この本では、ニュージーランド各地のロケ地の場所と解説が丁寧に記されている。ニュージーランドは大都市が少なく、広大な自然が拡がる国なので、ロケ地を紹介するにも、わかりやすい目印などはない。都市の映画ロケ地のように住所を記す訳にもいかないし、建物や橋など特定もできない。その為、この本には単に座標を示しているだけのページも多い。しかし、そこにたどり着くと、まさに映画のワンシーンに身を置いたような体験ができる。
一方、ページをめくっていくと、映画を監督したピーター・ジャクソンが住む北島には、スタジオやセットによる撮影現場が多いことや、南島には島全域にロケ地が拡がっていることなどがわかる。実に手堅くまとめられている本である。
特にクイーンズタウン周辺にはロケ地が集中しており、アイゼンガルドやファンゴルンの森など多くのシーンがこの近辺で撮影されている。また、クイーンズタウン発のツアーもあるのでこれを活用するのも手だろう。
ただ、南島を今回周遊したみたところ、よっぽど訪ねてみたいロケ地以外は撮影地には、こだわらなくてもよいような気がする。実は、映画のワンシーンのような風景に出くわすことは度々あり、南島のいたるところが映画『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビット』の世界なのである。つまり、景観豊かなところに足を運ぶだけで映画の世界にどっぷり浸ることができる。
そして、これらの景勝地をまわるには、やはり風や土地の香りを直接感じられるオートバイがよい。映画の登場人物のように馬で「中つ国」を駆け巡るような気持になるからだ。
ところで、映画『ロード・オブ・ザ・リング』のロケ地ガイド『Lord of the Rings Location Guidebook』にはポケットサイズ版に加えて大判の豪華版がある。西海岸のグレイマウスの書店を覗いてみたところ、これを発見した。メイキングの記事が追記されていることを除けば、内容はほぼ同じである。ただ、豪華版のほうが写真も美しく、眺めて思い出にひたるにはよい。(次回に続く)