前回からの続き。イギリス / ロンドンでオートバイをレンタル(レンタルバイク)しての海外ツーリング第3弾
羊がこちらを見つめ、 鳥が道をふさぎ、なだらかな丘と連続する心地よいカーブ。コッツウォルズ(Cotswolds)は、なんとも気持ちのよいツーリングができる地帯であった。どこを切り取っても絵のような風景が続き、天候は晴れ間が3割、曇天7割で、暑くもなく雨にはあわずで、申し分ない快適なツーリング。
ブロードウェイ タワー、カースル クームのマナーハウスを経て終着点はお風呂の語源になったバース(Bath)。ここでは、幸運なことにホテルフロントでクラシックコンサートに誘われ、ひょんなことから夜は演奏会へ。なんと会場はローマ浴場の建物。
● 早朝、ロンドンを出発しコッツウォルズで朝食
● コッツウォルズの名所をオートバイで巡る
● カースル・クームのマナー・ハウスで結婚式に出会う
● バースの古風で魅力的なホテル Pratt’s Hotel(現 Hotel Indigo Bath)
● バースのローマ浴場でコンサートを聴く
本日の行程、コッツウォルズ(Cotswolds)ツーリングのルート。青いラインが今回の軌跡でカメラアイコンが主要チェックポイント。全行程292km
● 早朝、ロンドンを出発しコッツウォルズで朝食
朝、7時にロンドンを出発。オートバイは昨日借り直したスズキのバンディット600 (Bandit600)、トップケースもあり、 サイドバックも付けてくれたので、ロングツーリングにも最適。
この日は日曜日の朝なので道は空いており、皆さんかなりのスピードを出している。今回はカウルのない車種なので風圧がキツく、100km/hくらいで巡航した。
とある村を通りかかった際に朝市をやっているのが目に入り、バイクを停めて、市場を冷やかしに伺う。
ざっと見渡すと小さなホテルがあるので、そこで朝食をとることに。冷え切っていた身体が温まり、幸せ気分。
● コッツウォルズの名所をオートバイで巡る
ホテルでのんびり朝食をとった後、まずは名所にも足を運ぼうとブロードウェイ・タワー(Broadway Tower Country Park)へ向かう。幾度も教会のある綺麗な村々を通り、田園風景と美しい村の繰り返しの景色。コッツウォルズは羊毛業で栄えただけあり、あちこちに羊がおり、繁栄時代の古きよき建物を多く見かける。その建物に使われている石の色が仄かに黄色味みを帯びており「コッツウォルズストーン」と呼ばれていて、これも街並みに統一感を与えている。
走っていると、時にはとんでもない悪路にも出会う。使っているGPSのアルゴリズムは不明だが、農道のような悪路を平気で推薦してくるせいかもしれない。この悪路にも出会うので、取り回しの難しいオーバーリッターの大型バイクではなく中型(600cc)を今回レンタルしておいてよかった。
途中、NHK-BS『世界一美しい村に住む人々~イギリス コッツウォルズ』で紹介されていたキフツゲート・コート・ガーデン( Kiftsgate Court Gardens)の前を通過した。女手ひとつで立ち上げた広大な庭園を、母から娘へ3代にわたって切り盛りされていると言う。残念ながら今回は開いておらず、門構えのみの見学。
コッツウォルズのランドマークのようなブロードウェイ・タワー(Broadway Tower)。観光名所ではないところも十分美しいコッツウォルズだが、ひとつくらいと思って立ち寄ってみた。
● カースル・クームのマナー・ハウスで結婚式に出会う
その後は村々を過ぎる道を楽しみながらカースル・クーム(Castle Combe)へ。 この村はなぜか一番が2つある『コッツウォルズで一番美しい村』のひとつ。確かに逗留したくなるような美しい村である。ただ、不便な場所にあるので団体客は少ない。
村には、素敵なマナー・ハウス (manor house)のホテルがあったので立ち寄ってみた。マナー・ハウスとは荘園(マナー)の地主が建設した邸宅で、こちらは14世紀に建てられたもの。 マナー・ハウスの庭園は美しく結婚式を終えた新郎新婦が写真撮影をしており、周囲の景色に華を添えていた。
そして、小さな村を散策。さすがイギリス一の村なる受賞も幾度かある村で、落ち着いた独特の美がある世界。ちなみにこの村のブランケット兄弟が、この地で盛んな羊毛業の毛糸を使って毛布を発明したことから、毛布はブランケットと呼ばれるようになった。
再びバイクに跨がってバースに向かう。途中、気持ちよい平原があったのでバイクを降りて一休み。本当は遠くにみえるバースの景色をゆっくり眺めていたいが、ご覧のようにこちらの道は基幹道路でも路肩がほとんどなく駐車がしづらい。
● バースの古風で魅力的なホテル Pratt’s Hotel(現 Hotel Indigo Bath)
そしてお風呂の語源になったバース(Bath)の町に到着。バースはローマ時代の温泉として有名だが、18世紀のロンドンの大発展あたりからブライトン、チェルトナム等と共に保養地として拡大してきた町。つまり昔からの観光都市でもある。
ここからホテル探し。ガソリンスタンドで給油がてらに尋ねると、教会横にインフォメーションセンターがあると言う。行ってみるとインフォメーションセンターはお休み。隣の教会に聞いてみたところ、日曜日なのでお休みとのこと。であれば、教会の向かいのホテルで情報をいただこうとフロントに伺うと、このホテルが空室がある上に、金額も手頃。若いホテルマンもフロントスタッフもとても親切なので、ここに宿泊すると決める。
チェックイン前にホテルマンにバイク置き場を聞くとホテルの前に置いてかまわない、と。ただ、ホテル前は車の駐車で空きがない、しかもイギリスは駐車違反が厳しい。再度ホテルマンに指摘すると、わざわざ外についてきてくれバイクの停め方を指南してくださった。当たり前のことながら歩道と横断歩道は駐車禁止。それでは、と教えてくれたのが写真の止め方。斜めの石(横断歩道にさしかかる間際の石)までは停めてよい(笑)とのこと、真偽は定かではないが無事にバイクも駐車。
そしてフロントに戻り、チェックイン手続きをしているとカウンターの横でモーツァルトの楽譜を切り貼りしているアジア女性がいる。その譜面を見つめていたところ「日本人か?」と声をかけられ、その方が今晩バースで開かれるコンサートのコンミスであると判明。嬉しいことにそちら公演に誘われ、夜はコンサートに行くことになった。
コンサートまでは時間もあるので、しばし部屋でゆっくりする。古いホテルだけあって室内は女中部屋のように狭い(笑)。しかも、床はギシギシ音がして、隣の部屋の声も少々聞こえる。ただ素晴らしいのはホテルの中庭の景色。少しホテル内を散策すると、どこもかしこも古めかしくて、夜はちょっと幽霊が出そうで怖い雰囲気である。
● バースのローマ浴場でコンサートを聴く
夕食はパブでビールとチキンパイで軽くすませ、趣あるバースの街をゆったり歩いてコンサート会場へに向かう。
コンサート会場に到着、なんと会場はローマ浴場(Roman Baths)の建物内であった。
今宵のコンサートは、ロンドンとバース両方の音大卒業メンバーで構成されるオーケストラの立上げ公演らしく、会場はけっこう賑わっていた。プログラムはオールモーツァルトで21番目のピアノコンチェルトと途中アリアをはさんで、最後は交響曲41番。演奏は室内楽のような息の合った演奏で素晴らしいコンサート体験であった。響きすぎる小ホールの残響もあいまって、古風な会場が豊かなモーツァルトの響きに包まれ、まるで宇宙にいるような感覚になった。オーケストラのどの奏者も入賞経験があるようで、演奏の腕は確か、声楽から器楽まで音にツヤがある。そして、41番の終楽章は攻撃的なほど突き進むエネルギッシュな演奏で、お見事!(次回に続く)
行き当たりばったりで見つけたホテルもなかなかで、ひょんな出会いもあり、素敵なロングツーリングの1日であった。(次回に続く)