KEFのスピーカーをサブシステムスピーカーとして長らく使い続け、その音に惚れこんでいる。一方、スピーカーに接続する機器構成はこの30年で随分と構成が変わってきた。
その昔は Meridian のプリメインアンプや LINN Classik と スピーカーと同じく英国製を選んで組んでシステム構成を楽しんでいた。
しかし、ネットワークオーディオの時代になってからは、DACは NuPrime DAC-9 、パワーアンプは NuPrime の前身ブランド Nuforce stereo8.5 v3 へ変更した。
そして、スピーカーは何十年も使ったブックシェルフ型の KEF LS3/5a からフロア型の KEF Q700 に数年前に変更した。KEF社が長年培ってきた Uni-Q システム、すなわち優れた点音源の考えに基づいたスピーカーを試してみたくなったからだ。KEF Q700 では、この改良を重ねてきた Uni-Q の技術が使われており、ピアノ曲の再生ではステージの中央にピタッとピアノが納まる音像は心地よい。
実は、こういった小ぶりなオーディオシステム のほうが、手軽にあれこれ組むことができるので、セッティングする楽しさがあったりもする。そして、そのセッティングに必須なのが NORDOST(ノードスト) のオーディオチェックのCDディスク。これ1枚あれば、正しいセッティングになっているかスピーカーの位置や向きまで含めて検証しながら設定できる。そして、エージングや消磁までしてくれる優れモノであり、1枚常備しておきたいメンテナンスツールである。
● KEFのスピーカーを使い続けて30年
● DACの登場でパワーアンプ Nuforce stereo8.5 v3 を導入する
● プリメインアンプからDACへ、優れモノの NuPrime のDAC
● 優れモノのオーディオチェックCD NORDOST SYSTEM SOLUTION
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● KEFのスピーカーを使い続けて30年
変遷:KEF LS3/5a → KEF Q700 (Version UP)
現在、サブシステムではKEFのスピーカーを長らく使っている。アンプ類に Meridian 551 や LINNの Classik を愛用してきた流れからサブシステムは英国製でシステムを組もうと思ったからだった。サブシステムに対してメインシステムのスピーカーは MartinLogan に次いで Avalon Acoustics 、アンプは KRELL に次いで MarkLevinson と米国系で揃えているので、ちょうど英国系と対置する形になっていた。
長年愛用してきたスピーカーは KEF LS3/5a。この型番である LS3/5a というのは英国BBC放送のモニタースピーカーのことで、小型 2WAY と持ち運び便利なサイズの高音質スピーカーである。このスピーカーをKEF社はBBCと共同開発した。そして、現在 LS3/5a は Rogers、Harbeth、Spendor など各社においてライセンス生産され、世界中に LS3/5a の愛用者がいる。
このようなスピーカーなので音質を重視しつつも小型スピーカーが入り用の場合には LS3/5a が最適であり、サブシステムのスピーカーとして30年ほど KEF LS3/5a を愛用してきた。しかし、さすがにこの頃のDACでは音のキレが悪い。そこで、数年前に KEF Q700 (Version UP) に買替えた。
KEFの主要技術である点音源のUni-Qドライバーアレイ のしくみに興味があり、トゥイーターがミッドレンジと同軸というのは狭い部屋での音楽再生に適しているのでは、と思ったからだ。 この Uni-Q のしくみもKEFが生み出して数十年、さすがに成熟した技術に思われる。最初はUni-Qを採用しているブックシェルフ型の LS50 あたりを検討していたが、ブックシェルフであるとスピーカースタンドが必要になるし、ウーファーがついたほうが低音も豊かであるので、フロアー型の Q700 を選択した。
今ではエージングも完全に終わり良い音で鳴っている。このスピーカーを選択して正解だったのは、やはり Uni-Q の点音源の成果もあって定位が良いところだ。秋葉原のショップで試聴させてもらった時には、上位機種の Q900 と比べても音のバランスが良いのはわかったが、何本もスピーカーがある場所だと定位の判断はおぼつかなく不安であった。しかし、自宅で再生したところコンサートホールの音響は箱庭的ではあるが再現できており、音像も優れたものだった。
また、ウーファーが追加された為、当り前のことであるが LS3/5a よりも低音が豊かになった。これはジャンルを問わず音楽表現が幅広くなり、フロア型での多ユニットの効果を実感した次第である。そして、密閉型なので低音が豊かになっても、部屋の影響を受けずに締まったキレのある低音が確保されている。足下が標準でスパイク装備なのもよい、御影石の上に設置し、音像も非常にシャープになっている。これだけこなれたスピーカーであると、サブシステムとしてBGM的に使うにはもったいないスピーカーとも感じる。
● DACの登場でパワーアンプ Nuforce stereo8.5 v3 を導入する
サブシステムでは長らくプリメインアンプを使ってきたが、DACの登場からは、DACをプリアンプとして使うことを始め、パワーアンプを購入しアンプをセパレート化することにした。そこでメインシステムでも使っている Nuforce に準じて、サブシステムのパワーアンプも Nuforce stereo8.5 v3 を購入した。
しかし、ここでサブシステムを英国系メーカーで組むという構想が崩れてしまった。デジタルアンプ全盛の時代になり、すでにパワーアンプですらコンパクトになっている。そうすると、あえて小型システムで優れた英国籍にこだわる必要もないし、ステレオパワーアンプ1台の追加程度では場所もとらない。デジタルアンプの登場とDACのコンパクト化によって、良い音の小型システムが組みやすい時代になったと感慨深い。
新しい技術であるデジタルアンプを購入する際に Nuforce は基板のアップグレードで技術発展をトレースできるところがよい。実際、メインシステムのほうでは Reference 9 V2 SE を Reference9 V3 SE にアップグレードをした。また、過去にDACも1度アップグレードしてもらっている。開発した製品を大切する姿勢は Nuforce からその後継ブランド NuPrime にも引き継がれており、日本の代理店であるフューレンコーディネートの姿勢にもそれはあらわれている。
Reference 9 V2 SE のアップグレードの詳細については、以下のブログ記事「オーディオシステムの変遷-パワーアンプ編 / 管球アンプからデジタルアンプへ。静電型スピーカーをドライブするには強力なパワー必要だった」をご参照ください。
フューレンコーディネートは修理やバージョンアップ時には、融通が効く上に、価格もリーズナブル、サポートが丁寧でいつも大助かりなのである。これまでお付き合いした輸入オーディオ代理店の中でも、かなり丁寧で修理代なども安価な印象を持っている。また、バージョンアップや修理の際に代理店にそのまま機器を持込むことも昔は容認してくれていた。
先だっても本機 Nuforce stereo8.5 v3 が突然音が出なくなる症状が数回発生し、フューレンコーディネートに調査修理をお願いしたところ、既に生産中止で部品点数も限られているにもかかわらず2度にわたって丁寧な通電調査をしてくれた。結果、2度目のチェックで電源基板に不良があることがわかり、電源基板の交換となったのだが、これまた安価に修理をしてくださった。そして、この時の電源基板交換では音までクリアで明るく改善されて驚かされた。修理の担当の方に伺うとこういったことはままあることらしく、やはり電源や電源部のパーツの重要性は高いと感じる。
ちなみに、この時の修理期間中は LINN Classik を再び引っ張り出してきて KEF Q700 に接続してしのいだ。奇しくも昔の構成でスピーカーだけが変更の形になったのだが、以前接続していたKEF LS3/5a とは音が明確に異なる。音の輪郭がくっきりし、所謂暖かみこそないものの、音域は拡がりキレとスピード感のある音になっているのが実感できた。KEFも確実に進化をしている。
予断ながら、この時のLINNの LINN Classik から接続するスピーカーケーブルの末端処理をしていなかった。そのため、スピーカー背面の端子ネジを毎度毎度締めたり緩めたり、あげく細い導体(銅線)をいちいち穴に通すのが面倒である。
そこで、秋葉原の千石電商に行き、バナナプラグを買って来た。1個240円でバイワイヤーなので 8個必要となり、費用は2,000円ほど。バナナプラグも、こだわれば数万円ほどの高いモノはいくらでもあるが、正直そんなに音が変わるの?というのが本音である。むしろ、これでケーブルとスピーカーがガッチリ接続され、導体(銅線部分)の酸化防ぐことができるメリットもあるので、この辺りの製品で割り切ることにした。
● プリメインアンプからDACへ、優れモノの NuPrime のDAC
変遷:Meridian 551 → LINN Classik → Nuforce DAC100 → NuPrime DAC-9
サブシステムで重視しているのはコンパクト性と手軽さであった。そこで、これまでは英国製の小ぶりなプリメインアンプ Meridian 551 に、CDプレーヤーやコンポ用の小型ラジオチューナーを接続していた。その時愛用していたCDプレーヤーはトップローディング方式の SONY CDP-X3000 である。コンパクトシステムを組む際に、このソニー製のCDプレーヤーは音が良いのに小さくて最適だった。また、トップローディング方式というのは机の片隅に置いておくと上面からひょいとCDを交換できるので便利でもある。
その後に登場したのが LINN Classik である、これは活気的であった。英国製でCDプレーヤーとラジオが付属し、プリメインアンプでもあり、プリアンプ単体としても使える。一流のオーディオメーカーがこのような一体型製品を出すのも珍しかった。このテンコ盛りの機能とLINNならではのしっかりした造りと美音に惹かれ LINN Classik に乗り換え、システムをひとまとめにすることにした。
しばらくすると時代の流れはダウンロード音源含めたネットワークオーディオになり、Nuforce DAC100 を導入した。LINN Classik には外部入力端子も豊富にあるので、最初はDACをLINN Classikに接続して使っていたが、DACをパワーアンプに直接につなぎ、プリアンプ替りにも使うのも悪くない。そこで LINN Classik は不要になってしまった。
そして、こちらの記事で書いたようにマランツのCDプレーヤー CD72 が復活したので、これをCDトランスファーとしてDACに接続し、ネットオーディオに頼らず、あえてディスクから直接再生することも多くなった。やはり直接の再生のほうが音質が優れている感じがするからだ。ちなみに、LINN Classik はオールインワンで場所もとらず、タイマーまでついている。二束三文で引き払うのも惜しく、未だに寝室で現役で活用している。
DACは Nuforce DAC100 をしばらく使っていたが、最新のDACを試す機会があり、その後もDACはかなり急速度で進歩し続けていることを知った。そこで、現在は Nuforceブランドの跡を継いだ NuPrime社の DAC-9 を使っている。
NuPrime DAC-9 はNuforce DAC100 に比べると明かに音の密度が変わった。そして、DAC-9 の魅力は豊富な入出力端子にある。出力端子にはステレオXLR バランス まであり、アンプとの接続を手堅いものにしてくれるし、入力端子はあらゆる形状のデジタル入力端子に対応している上に、アナログ入力端子までもがついている。これによってユニバーサルプレーヤーを接続し SACDの再生も可能になった。
● 優れモノのオーディオテストCD NORDOST SYSTEM SOLUTION
NORDOST(ノードスト)のオーディオチェックCDはとても重宝している。このCDに収録されている「System Burn-In」をかけることによってスピーカーのエージングが可能であり、「System Degauss」では消磁ができる。つまりスピーカーの購入時の慣らしや購入後のメンテナンスが、このディスク1枚でおこなうことができる。また、消磁機能は、ユニットの帯電を除去しユニットの活性化を図るので、都度フレッシュな音を取り戻すことになり、とても便利である。
現在、「NORDOST SYSTEM SOLUTION」の名称で販売されており、かつては「Nordst System Set-Up and Tuning Disc」として販売されていた。
そして、このCDに納められている各種各様のサウンドチェック、セッティングに必要な音源も重宝する。新規に機器を設置した際や配線を変えた際にまずは確認しなくてはならないスピーカー左右の音出し、同相か逆相かのフェイズチェック(Phase Check)はもちろん、ホワイトノイズやピンクノイズ、ドラム(キックドラム、スネアドラム等)、細かな周波数毎の音でスピーカーの状態やリスニングルームの状況を測ることができる。
なかでも便利なのが LEDR(The Listening Environment Diagnostic Recordings )という音源位置を確認するトラックが3つ入っていることだ。1つめはスピーカー後方から音源が上方にあがっていく音、2つめは虹のようなカーブを描いて音源が左右のスピーカーの外側から弧を描く音、3つめはスピーカー間を音源が平行移動をする音である。これらによってスピーカーの間隔や振り(向き)の調整ができる。また、天井反射音の干渉具合も把握できる。
自分の好みのリファレンス用音楽CDでセッティングや音の具合を確かめるのも大事だが、このようにチェック専用のCDのシンプルな音源でテストをおこなうと明確な解法を得られやすい。マズいところがすぐにで把握できるからである。このNORDOSTのオーディオチェックCDは、セッティング変更や新しい機器導入の度に使えるので、1枚持っていて損はないと思う。