前回からの続き。今日は、朝からツーリングに出かける。前夜にアパルトマンの前の駐車スペースに停めたバイクにそのまま跨がって出発。パリ西北方面の鉄道では行きにくい場所をまわり、時間が許せば、フランスの田園風景を流す予定。
まずは、ル・ブルジェ航空宇宙博物館(Aéroport de Paris-Le Bourget)へ。展示機体も多く、飛行機好きから人気のある博物館。
続いて、ゴッホが晩年を過ごしたオーヴェル・シュル・オワーズ(Auvers-sur-Oise)へ向かう。ここはヴェクサン自然公園(parc naturel régional du Vexin français)内にあり、とても自然が豊かで食べ物も豊か。ひょんな出会いもあって美味しい旅の1日。
● 機内に入れるル・ブルジェ航空宇宙博物館 でコンコルドに搭乗する
● 広い ル・ブルジェ航空宇宙博物館 には珍しい機体もたくさん
● ル・ブルジェ航空宇宙博物館 には各国の古い機体も多く展示されている
● ゴッホのオーヴェル・シュル・オワーズ手前の村メリー・シュル・オワーズ で美味しいランチ
● ゴッホが晩年を過ごした村、オーヴェル・シュル・オワーズ を巡る
本日の行程、まずはド・ゴール空港そばのル・ブルジェ航空宇宙博物館 (Aéroport de Paris-Le Bourget) へ、次はパリ市街北を高速道路で迂回し、一路ゴッホが過ごしたオーヴェル・シュル・オワーズ(Auvers-sur-Oise)を目指す。その後夕刻に向けてヴェクサン自然公園をアテもなく巡る。ピンクのラインが今回の軌跡で全行程153km。
● 機内に入れるル・ブルジェ航空宇宙博物館 でコンコルドに搭乗する
午前中は、ド・ゴール空港手前にあるル・ブルジェ空港に併設された広大なル・ブルジェ航空宇宙博物館(Aéroport de Paris-Le Bourget)に向かう。フランスの航空産業の歴史は長く、古くからの航空機の歴史をたどる上で、飛行機好きから人気のある博物館。そして、今回は憧れのコンコルドに乗るのが目的(笑)。航空機の中に入れる航空博物館は少ないが、ここはたくさんの航空機に搭乗することができる。基本の入場料は無料、展示された各機内に入る時は9ユーロの追加料金を払う。
墜落事故をきっかけに、もう空を飛ぶことがなくなってしまったコンコルド。展示機体は米国の博物館等にもあるが、コクピット含めて中に入ることができる機体は多くない。
客室内も噂通り非常に狭く、私の背丈で頭が天井につきそうである。あの高額な搭乗料金で、この狭さ(笑)。
しかし、パリ ー ニューヨーク間を3時間半で飛ぶ旅客機が1970年代にあったというのだから凄い。そして、機体は実に美しいフォルムで、エンジンはアフターバーナー付のロールスロイス製。展示機の機内では「只今音速を超えましたよ」とのアナウンスがフランス語で流れており、雰囲気も抜群。2度と実機が飛行しないことが寂しい。
● 広い ル・ブルジェ航空宇宙博物館 には珍しい機体もたくさん
コンコルド以外にも珍しい機体が多く展示してある。こちらはペイヤン Pa 49 ケイティ(Payen Pa 49 Katy)全長が5メートルしかないジェット機でウルトラマンシリーズに出てくるようなデザイン。
ルデュック 022(Leduc 022)。空気抵抗を考慮したらしいが、コクピットがノーズコーンにある。
ミラージュF1 (Mirage F1) の機体をスケルトンに、ここまで大きな機体でこれをやったものはなかなか見かけない。
ユーロファイターの欧州共同開発からフランスは離脱して、フランス単独で開発したのが、このラファール(Rafale) 。艦上機としての運用もできる。初めて見たが、フォルムはとても優美。
ル・ブルジェ空港に併設されているので屋外展示も広いスペースが確保されている。
● ル・ブルジェ航空宇宙博物館 には各国の古い機体も多く展示されている
大戦中の機体も多く展示されており、状態のよいエンジンが機体に併置されているのがエンジン好きとしては嬉しい。こちらはBMW 801エンジン、大戦中は大型機含め各機で搭載された名エンジン。フォッケウルフ Fw190の前に飾られている 。こんなに状態がよいものを初めて見た。このエンジンはBMWのロゴマークを想起させるし、 今のBMWのオートバイエンジンにも通じるものがある
輸送機C47にも搭乗できた。機内では空挺部隊の落下傘の降下の様子が上映されている。気分は『バンド・オブ・ブラザース』第101空挺師団である。
このC47の機体はモノコック構造(丸みを帯びた外板でフレームを包む)の流線型で、とても美しい。この機体は、当時ライバルであったドイツ軍のユンカースの航空機 Ju 52 を時代遅れのものとしてしまった。
ユンカースの航空機 Ju 52 の詳細については、以下のブログ記事「海外ツーリング-ドイツ編 6」をご参照ください。
複葉機も多く展示されており、こちらはファルマンF.60ゴリアト(Farman F.60 Goliath)。第一次大戦の爆撃機を旅客機に衣替えした複葉機。パリ-ロンドン間の最初の旅客飛行機でもある。
● ゴッホのオーヴェル・シュル・オワーズ手前の村メリー・シュル・オワーズ で美味しいランチ
ル・ブルジェ航空宇宙博物館を見終わった後は、再びオートバイで、ゴッホが晩年を過ごしたオーヴェル・シュル・オワーズ(Auvers-sur-Oise)へ向かう。パリ市内からも30キロほどで、さほど遠くないのだが、小さな村なので、やはりバイクという足があったほうが行きやすい。
航空博物館からはパリ外環の高速道路でパリ市内を迂回するように行けるので、走行時間はわずか。
一方、オーヴェル・シュル・オワーズは観光地化されているのでランチはその手前の村メリー・シュル・オワーズ(Méry-sur-Oise)でいただくことにした。なんとも鄙びた村なので、そこが気に入ったのもある。村のメイン通りからは遠くにオーヴェル・シュル・オワーズが見え、遠目にもゴッホが描いた教会がわかる。
メリー・シュル・オワーズの村は観光バスも停まらない(停まれない)小さな村で、観光客など1人もいない。ただ、商店街に一軒だけレストランがあり、覗いてみると地元客で大賑わいである。これはアタリ間違いないな、と思い入店してみると、店の奥にもテーブルが並んでおり、そちらも地元客で大混雑。
当然、メニューもスタッフとの会話も、すべてがフランス語のみなので、困惑していると、横に座られていたご婦人が、これまたフランス語なのだけど、お勧めを指で指し示してくれて一件落着。ご婦人含めて皆さんニンマリして、食事を待つ。そして、こういう配慮をいただいたり雰囲気が素敵で、フランスの田舎に惚れ直す。
そして、でてきたプレートは魚料理。内陸で魚か、と思っていると周囲でも食べている人はたくさんいる。皆さんが頼む理由がわかった。かかっているソースが絶品なのだ。また、魚の火の通し方もよく、中は温かくほろっとジューシー。そして、感動したのが添え物のラタトゥイユ、野菜がどうしてこんなに味わい深くなるのだろう、という技。やはりフランスの料理は偉大。
● ゴッホが晩年を過ごした村、オーヴェル・シュル・オワーズ を巡る
食事をすませて、ほんの1キロほどいった先がゴッホが滞在していた村、オーヴェル・シュル・オワーズ。この村には、ゴッホが当時住んでいた居酒屋ラヴー亭(Auberge Ravoux)の屋根裏部屋が昔のまま残っており、そちらを訪れた。
ゴッホの過ごした屋根裏部屋は非常に狭く、天井に明かり取りの小さな窓しかない小部屋。ゴッホは食事を1階のラヴー亭でとり、毎日絵を描きにここから外出していたらしい。
実際に彼がこの村に住んでいたのは亡くなるまでのたったの2ヶ月間でしかない。しかし、ここの風景に魅せられた彼は毎日1作品を描き上げていた。村の各地には、パネルでゴッホの原画を表示してあり、景色と原画を見比べることができるようになっている。
村から少し歩いた丘の上には彼と弟テオが眠る簡素なお墓(Cimetière d’Auvers-sur-Oise)もある。そして、お墓の横には彼が描いた広大な麦畑も拡がっている。
パリのオルセー美術館でゴッホの絵を見る前に、パリからさほど遠くないオーヴェル・シュル・オワーズ を訪れるのもよいと思う。最晩年の画家の息吹がそこかしこにに聞こえる景色を味わった後に彼の原画を見れば、格別の想いがこみあげてくること請け合いである。(次回に続く)