・東大 インターメディアテク@KITTE
東京でケ・ブランリ美術館が見られるとは思わなかった。しかも、ここ東大 インターメディアテク@KITTEでは、本国フランスと異なり、小規模ながら詳細な日本語解説があるのが嬉しい。こんなに素敵な博物館なら、もっと早くから通えばよかった。「船乗りシンドバッドの冒険には」から始まる紹介文も秀逸。
そして、展示陳列が古風な海外大学展示手法をコンパクトに踏襲しているのが面白い。フンボルト大学やハーバード大学自然史博物館を思い出す。模倣や小手先のギミックではなく、知への憧れや羨望を掻立てる仕掛けとして素敵。
手頃な展示数なので骨格標本に見入ったり、ダ・ヴィンチの鏡文字に見とれたりと滞在時間も調節しやすい。東京駅前という立地から観光や出張の際に立ち寄るにも好都合である。そして、屋上庭園からの東京駅全景も見事。かように素晴らしい施設で無料というのも驚き。欲を言えば館内写真撮影は可にして欲しいのと、老眼にはキャプションが小さいのがチト辛い(笑)。
<追加情報>メガロマニア植物学
特別展示『メガロマニア植物学』2019.05.21-10.06
インターメディアテクの言わば「大葉っぱ展」が凄い。
乾燥させた巨大植物の額装が並んで圧巻。
ガラス容器に棘だらけのオニバス断片が詰め込まれ
-標本製作者とオニバスの意地と痛みだ-
との素敵なキャプション。
また、道ばたの地蔵のようなフォルムの
セイタカダイオウの 標本前の姿も見てみたくなった。
・ 東京大学総合研究博物館
そして、インターメディア(東大博物館)つながりで、本郷にある東京大学総合研究博物館 も尋ねた。まずは博物館前で伝アインシュタイン・エレベーターの昇降機がお出迎え。インターメディアテクにあった伝アインシュタイン・エレベーターのカゴ、これを昇降させていたのがこちらの装置らしい。2つの博物館をつなぐエレベーター、アインシュタインが乗ったとされる逸話が神格化されているのが面白い。
・家畜-愛で、育て、屠る 展
そして白眉が特別展の「家畜-愛で、育て、屠る-」。この特別展の展示監督の遠藤秀紀先生がたいした説明解説上手で、VTRの語りは旨い上に面白いし、解説の冊子の文章もことごとく達者。館内スタッフの方々も遠藤先生の話題をことさらなさるので、お人柄も素敵なのだろうと想像。更には来場者に対し「ともに知に、感性に、表現に苦悶しよう」と呼びかけるスタンスも素敵。
これらの解説や展示手法を見るにつけ、家畜たちを愛おしく想っている先生のお姿がじわじわ伝わってくる。そして、この姿が先生の伝えたいことだともわかる。驚きのどでかい牛の剥製に、鶏が170羽も盛観に並ぶ展示の背景には、経済合理性だけでは語れない、家畜に寄り添って生きてきた人類の歴史があるのだなぁ、とジワジワ体感できるのだ。
家畜とは「繁殖を人為的にコントロールされている」が学問的定義。鶏はたった55日で商品として出荷される、なんとも合理性に富んだ家畜で、日本でも瞬間3億羽が飼育されていると言う。なんと人口の3倍である。
が、今回展示されている170羽あまりの鶏は、この経済合理性とは無縁のところにある。チャボに尾長、奇妙な足のドンタオ、ノッポすぎるインディオ・ギガンテ・・・。遠藤先生は家畜の存在価値は屠られるだけではなく、人の心に潤いを与える伴侶とのたまう。それ故に経済合理性と共通点のない家畜の剥製を大量に展示されているのだった。家畜の存在は人間の心との結びつきによって、初めて成立すると。
最後に骨格標本や剥製を先生が作り、愛で、分析する動画があった。この動画を通じて、どこの自然史博物館でも誇らしげに飾ってある骨格標本や剥製の重要性を知ったのは貴重な経験だった。これからは自分もこれらを愛でながら眺めることができる。