北極圏に接するユーコン。日本から比較的行きやすい一方で、雄大な大自然を堪能できる。今回は極北の地 イヌヴィック(Inuvik)から デンプスター・ハイウェイ(Dempster Highway)を戻り、一気に南下する。行きとは全く違った景観、そしてムースの親子と出会うことができた。
ドーソン・シティ(Dawson City)に到着したのは夜遅く、一昨日泊まった宿に素泊まりさせてもらう。翌朝からはアメリカに向かって新たなドライブの出発となる。お次に走るのは、標高1000mの高山地帯を走り抜けるハイウェイ。ユーコンやアラスカにはデンプスター・ハイウェイ(Dempster Highway)以外にも風光明媚なハイウェイが多くある。 その1つ トップ・オブ・ザ・ワールド・ハイウェイ(Top of the World Highway)を走り、高台からの眺めを楽しみつつ、アメリカとの国境に向かう。
● 帰路は一気にドーソンシティへ @デンプスター・ハイウェイ
● ドーソンシティ到着前に、ムースの親子に出会う
● 景色が独占できる高山ハイウェイを行く@トップ・オブ・ザ・ワールド・ハイウェイ
● 米国最北端の国境で得た入国スタンプは……? @ポーカー・クリーク
● 帰路は一気にドーソンシティへ @デンプスター・ハイウェイ
ユーコンに来ての久しぶりに朝寝坊。イヌヴィックからの帰路は400キロ足らずにあるデンプスター・ハイウェイの中間地点 イーグルプレインズ(Eagle plains)まで行ければヨシという気分でいたからである。また、帰路の途中に2度ほど渡らなければいけない渡河のフェリーも始発が遅かったので、居心地の良いマッケンジーホテルで、朝はゆっくりすることにした。
そして、9時30分にホテルを後にする。駐車場について車を見ると、相変わらずの泥だらけ。これからの帰り道でいっそう汚れるかと思うと、洗車する気などとてもおこらない。とりあえず、走行の不都合がないように窓ガラスの泥だけはぬぐった。
そして、天気があまりに良いので、このまま780キロのダート道を一気に下り、途中は宿泊せずにデンプスター・ハイウェイを一気に駆け抜けてしまってもよいと考え直す。ドーソンシティに今夜入れれば、明日の旅程に余裕ができ、米国のアラスカの奥深くまで行けるからだ。
そして、好天かつ往路と逆向きの景色はまた異なって飽きない。行きは一気に下ってしまった坂だが、逆向きであると、雪を頂いた山系が目の前に現れ、驚いた。
案の定、途中まで来て見ると、昨日は雪にまみれていた州境の道標付近は晴れ上がって、残雪などみじんもない。路面もずっと走りやすくなっている。
ハイウェイの中間地点かつ唯一の給油地 イーグルプレインズに着くと、やはり今日はまだまだ走れると感じた。そこで、宿泊はせずランチをとって給油をする。
● ドーソンシティ到着前に、ムースの親子に出会う
給油時にふと車を見ると、車が泥だらけなのは好天でもあいかわらずで、車体下は泥がつらら状になっている。車が景色に溶け込んでいるかのようだ。
迷彩色の車のせいか、本日は親子のムースに遭遇した。道路上にいたのが、ゆるゆると藪の中に入っていってしまい、車を停車させた時には、遠くに小さく見えるくらいになっている。耳がくるくる回り、おっとりした様子は愛らしく、都合20分くらい休憩をかねてムースを眺めた。
すると、ヤマアラシも登場。夕暮になるとこのヤマアラシたちは、道端にコロコロ転がっている様な感じで続々と参上してくる。
日が落ちる壮大な光景を目にしながら、日没間近にデンプスターハイウェイを走り抜け1日でドーソンシティに到着。780キロのダート道を11時間半かけて走破したことになる。日の入りが20時過ぎと遅い為に、夕日に染まる山々や動物たちをじっくり見ることができ、とても良い1日であった。
景観の見事なデンプスターハイウェイを1日で走り抜けてしまうのは、ちょっともったいない気もしたが、終わってみると、大河ドラマを一気見した醍醐味と爽快感が残った。ドーソンシティ側のデンプスターハイウェイ入口では、車を停めてイヌビック往復記念のステッカーと記念撮影をしてみた。
そして、町に入るにはあまりに車が泥まみれだったので、ガソリンスタンドで洗車もしておく。バンパー辺りは泥だけでなく、虫の死骸もたくさん付着していて汚れが酷い、これを丹念に洗い落とした。
日程を変更したのでドーソンシティでは宿の予約はない。素泊まりでかまわないので最寄りのモーテルの扉を叩いてみた。シーズンオフの為か応答がない。仕方なく、夜遅いながらも一昨日泊まったオーロラインを訪れてみた。店主は顔を覚えてくれており、遅い時間にも関わらず、快くチェックインをさせてくれる。時計は既に21時をまわっており、やっと一息つくことができた。
本日の強行軍にて日程に余裕ができたので、明日は国境を越えて、アメリカ アラスカ州 の奥深くまでドライブできそうである。ちなみに、今日のGPSデータを見ると移動平均速度が83キロ/時なので、4輪の運転の腕も多少なりとも上達したようで、少し嬉しい。
● 景色が独占できる高山ハイウェイを行く@トップ・オブ・ザ・ワールド・ハイウェイ
デンプスター・ハイウェイ(Dempster Highway)を一気に駆け抜けた翌日は新たなハイウェイをたどる。これまでは、クロンダイク・ハイウェイ(Klondike Highway)とデンプスター・ハイウェイを紹介してきたが、ユーコンとアラスカには、これ以外にも有名なハイウェイがいくつもあり、どれもが風光明媚でドライブに最適との思惑があった。
トップ・オブ・ザ・ワールド・ハイウェイ(Top of the World Highway)もそのひとつだ。ドーソン・シティからアラスカに入り、標高1000mの高山地帯を走り抜けるこのハイウェイは、眼下に素晴らしい景観が広がる。名前の通り、世界の頂点を走るかのようだ。幹道のアラスカ・ハイウェイと併走しているため、このトップ・オブ・ザ・ワールド・ハイウェイは車通りも少なく、景色が独占できるのも魅力である。
ドーソン・シティ(Dawson City)の目の前のユーコン川をフェリーで渡ると、そこがトップ・オブ・ザ・ワールド・ハイウェイの入り口だ。町の対岸が素敵なハイウェイの玄関口なんて、異次元への入り口のようでワクワクする。まずは、始発のフェリーに乗る。ユーコン川の川面に映る朝焼けは美しいかぎりで、山々も輝いて見える。
そして、 トップ・オブ・ザ・ワールド・ハイウェイ を走り出すと、宿泊したドーソンシティを真上から眺めることになる。
● 米国最北端の国境で得た入国スタンプは……? @ポーカー・クリーク
この尾根づたいの道の頂上付近が、カナダと米国の国境であるポーカー・クリーク(Poker Creek)。ここは米国最北端の国境で、高いのは緯度だけでなく、高度1200mという高所でもある。この空の彼方に続く尾根道がトップ・オブ・ザ・ワールド・ハイウェイの醍醐味、その頂上付近のポーカー・クリークに国境の建物がある。
日に数台しか車が通らないからか、イミグレーションのオフィスは2人体制のようだ。2人ともかなり暇そうである。そして、このイミグレでパスポートに押してくれたスタンプがかわいらしい。パスポートに、このスタンプをもらうだけでも、ここを通過する価値があった。
ただし、車通りが少ないうえに、寒さも厳しい国境のせいか、毎年9月半ば頃には閉鎖されてしまうので、この時期にここを通過する旅行日程の場合は事前のチェックが必要だ。米国側の国境情報は “Poker Creek” 、カナダ国境の情報は “Little Gold Creek” で検索すると調べることができる。