エルプフィルハーモニー・ハンブルク(Elbphilharmonie Hamburg)、港に向かって屹立する建物のど真ん中に位置する巨大なコンサートホール。遮音を目的としてホール全体を中空に浮かせる構造になっているとは恐れ入る。350個あまりのスプリングでホール全体が建物内に浮いた形になっているのだ。このおかげで、真横を通過する大型船の汽笛も遮音され、コンサート会場の音は隣のホテルにも全く届かぬらしい。発想含めて凄いの一言。昨年、こちらのホールで3回ほどコンサートを聴いた。
・1000枚に及ぶエルプフィルのガラス
・ストイックだが豪華な内装のエルプフィル
・音響などコンサートホールとしてのエルフィ
・1000枚に及ぶエルプフィルのガラス
当初は戦後造られた赤レンガ倉庫をコンサートホールに転用しようと言う話であった。そこから、話は大きく飛躍しレンガ倉庫の上にガラスの建物を積み上げることになった。このホールの外壁を囲むガラスは1000枚におよぶ。なんと1枚のガラスを加工の為に欧州各地の7カ所も移動し、手を加えられて完成している。最後の仕上げがイタリアでの曲面仕上げで、この曲面が建物に優美さを添える。このガラス、金額は1枚5万ユーロもするらしい。防滴、耐風完璧で、表面は細かい波面になっている。外から眺めても内から眺めても、このガラス壁面は美しい。
この外見も内側からの眺めもよいガラスは、エルプフィルハーモニーのPRでとても上手に使われている。
コチラ↑はガラス拭きと楽器の協奏曲の動画、傑作である。
この傑作動画のリハーサルの様子もコチラで公開されている。
・ストイックだが豪華な内装のエルプフィル
このエルプフィルハーモニー、建築費が当初予算の10倍の7.9億ユーロとなってしまったのもうなずける。ドイツ人らしく、豪華なだけではなく、機能美に満ちた素晴らしい造りなのである。ホール内にたくさんつり下がっている球形のガラス照明も、すべてチェコのガラス工房による手作り。家族経営の工房でひとつひとつ吹いて作られたものだ。
ちなみに、コンサートホールの音響設計は日本の事務所がおこなっている。
そして、昨年はこのホールを本拠地とするNDRエルプフィル(旧 北ドイツ放送交響楽団 )の2018年オープニングナイトのコンサートに行った。チケットはコンサートチケット売買サイトで購入したが、最低ランクの桟敷席なのに、ずいぶんと値がはった。本拠地とするオーケストラ(NDRエルプフィル)の初日ということもあるだろうが、そもそも観光地として人気を博しているのでチケットはすぐ売り切れてしまうらしい。
・音響などコンサートホールとしてのエルフィ
初めて聴いた新ホールの音響は、響きすぎず適度であり、評判通りの素敵な仕上がり。とても自然な響きがした。壁面は「白い皮膚」と呼ばれる古紙を混ぜた石膏板。建物の屋根を模して削りだし、これが1万枚以上ホール周囲に貼られており、適度な響きを保証する。その為、ピアノの独奏でも十分明瞭な良い響きがする。
客席数は通常の大ホールと同じだが、構造が垂直な円筒状でどの席からも舞台が見やすく、棚下席がないのは良きデザインである。
コンサートホールへのアプローチは地上からホール入口までは3分ほどかかる長いエスカレーターにのる。しかし、巨大な建物なので、その先がたいへん。ホール入口からは階段を上り続け、桟敷席となると、まるで登山のよう。お年寄りにはきつく、ホール内も外階段も急な段差なので、終演後はゆっくり階段を降りるご年配方によって大渋滞となる。導線はかなり広くとっているので、渋滞は折り込み済であり、これは仕方ないことだろう。
ちなみに、観光客が多い為か、客のマナーはあまりよろしくなかった。楽章間の拍手は度々発生し、演奏中の携帯が少量ながら二度ほど鳴った。オープニングの日は普段と客層が異なるのと、そもそも観光地化しているホールなので客はクラシック音楽に堪能な方ばかりではないようだ。
ただ、そのあたりを考慮しても、素晴らしいホールと雰囲気であることは間違いない。 ハンブルクでは外せないランドマークであるし 、演奏家の評判も上々のようなので、ハンブルクに訪れた際には一夜くらいは、こちらでコンサートを楽しんでもよいと思う。