オーディオシステムの変遷-CDプレーヤー編 2 / 時計をあわせるお話-クロックジェネレーター導入

オーディオシステムの変遷-CDプレーヤー編 2 / 時計をあわせるお話-クロックジェネレーター導入

クロックジェネレーターの存在は以前から知っていた。しかし、その効果を確認する術が乏しく、導入には至らなかった。オーディオショップでもあまり見かけず、展示や試聴の機会も少ない。
それでも、再生の中心がCDである拙宅においては、CD再生の質を高める選択肢として、導入する価値はあると判断した。
今回選んだのは、サイバーシャフト 10MHzマスタークロック(超高精度OCXO搭載10MHzクロック「Palladium OP17」)である。決め手は、公式ホームページに掲載された詳細な技術解説と選択ガイドであった。
オーディオ機器の時計あわせの必要性とそのしくみ
サイバーシャフト 超高精度OCXO搭載 10MHzクロック Palladium OP17 を選ぶ
外部電源はコスパに優れたCYB-LN02を選び、本体のインシュレーターをSPF-01でスパイク化
接続ケーブルには、純銀高品位BNCケーブル BNC75SL-XXX を選択
外部クロックPalladium OP17をCDプレーヤー Esoteric K-03XDに接続して、試聴を開始

○ 時計あわせの必要性とそのしくみ

音楽CDには、アナログの音を細かく時間で区切ってデジタル信号に変換したデータが収録されている。再生時には、録音時と同じタイミングでこのデジタル信号をアナログに戻す必要がある。タイミングがずれると、元の音の表情が失われてしまう。

CDプレーヤーは「今ここを読む」「次はここ」といった読み出しのタイミングを、内部のクロック(時計)信号に従って実行している。このクロックが不正確であると、音の輪郭がぼやけたり、細部の表現がにじんだりする。これは「ジッター」と呼ばれる現象で、オーディオ再生に悪影響を与える。
クロックジェネレーターとは、この「時間のしるべ」を高精度に作り出す装置である。CDプレーヤー内部にもクロック回路は存在するが、それよりもさらに正確な外部クロックを接続することで、音の鮮度や立体感が向上する。

この外部クロックには、OCXO(Oven Controlled Crystal Oscillator)と呼ばれる温度制御型水晶発振器が使用されることが多い。これは水晶振動子を恒温槽内で一定温度に保つことで、温度変化による周波数のズレを最小限に抑える仕組みである。
この温度安定のため、クロックは常時通電しておく必要があり、一度電源を切ると再び安定するまで数時間から数日を要する。新品時には、1か月ほど電源を入れ続けてようやく安定動作に入るとも言われている。

クロックジェネレーターは、CDプレーヤーにおいて音の時間軸を正しく保つための「合図係」である。このタイミングの正確さによって、音楽再生の質が大きく左右されるのだ。

サイバーシャフト 超高精度OCXO搭載 10MHzクロック Palladium OP17 を選ぶ

Palladium OP17 と外部電源CYB-LN02
サイバーシャフト Palladium OP17 と外部電源CYB-LN02

今まではこんなクロックの重要性を知っても、話半分で聞いていたが、半信半疑であった。外部クロックの導入事例は少なく、対応するCDプレーヤーも限られるうえ、機器自体も高価である。
とはいえ、拙宅ではレコードやネットワーク再生よりもCDの再生頻度が圧倒的に高く、手持ちのCDも膨大になってきた。そこで、試しに導入してみることにした。

選んだのはサイバーシャフト社の製品である。同社のクロックはパーツに高品位なものを用いており、一部オーディオメーカー製品を上回る性能を有するとされている。ただし、OCXOの精度によって価格に差があり、グレードが細かく分かれている。

同社ホームページの選択ガイドには、次のような記載がある:
・OP04からOP21まで幅広いグレードが用意されており、数値が大きいほど性能が高い
・OP04でも、100万円を超えるハイエンドDACに内蔵されたクロックより優れている
・OP13以上であれば、大多数の機器で明確な音質改善が体感できる
・OPグレードの差が2未満の場合、ブラインドテストでの識別は困難なほど微細

これらを踏まえ、コストと性能のバランスを考慮して「OP17」を選択した。最上位ではないが、十分に効果を期待できるグレードである。

○ 外部電源はコスパに優れたCYB-LN02を選び、本体のインシュレーターをSPF-01でスパイク化

サイバーシャフトの高グレード機には外部DC電源の使用が推奨されている。そこで、一般的なACアダプターは避け、同社が推奨するリニア電源「CYB-LN02」(税込16,500円)を選んだ。接続は5.5mm標準DCプラグでPalladium OP17へ挿すだけの簡単な構造である。

外部電源CYB-LN02の背面
外部電源CYB-LN02の背面
サイバーシャフトホームページ写真

サイバーシャフト CYB-LN02 16,500円 製造メーカー型番:TOPPING / P50
「コスト重視でリニア電源の導入もしたい」、とのご要望にお応えして厳選した海外製高性能リニア電源をご用意いたしました。低ノイズ密閉型トロイダルトランス、超低ノイズTPS7A4700レギュレターを3基搭載した高品質な製品となっています。クロック本体のLT3045電源の相乗効果で、本電源でのクロック出力計測特性値は、高純度外部電源(LTPW01)と同等です。1台毎にサイバーシャフト品質テスト済み。

電源にかかるコストを抑えたぶん、本体にはスパイク型インシュレーター「SPF-01」を装着して振動対策を強化した。この製品はスパイクと台座が一体化しており、設置が非常に容易である。

サイバーシャフト SPF-01(3個セット)13,800円

スパイクインシュレーター SPF-01断面図
スパイクインシュレーター SPF-01断面図
サイバーシャフトホームページ写真
スパイクインシュレーター SPF-01開梱時
スパイクインシュレーター SPF-01開梱時
標準でついていた足を外しSPF-01を取付ける
標準でついていた足を外しSPF-01を取付ける

○ 接続ケーブルには、純銀高品位BNCケーブル BNC75SL-XXX を選択

純銀高品位BNCケーブル BNC75SL-XXX
サイバーシャフト 純銀高品位BNCケーブル BNC75SL-XXX

外部クロックの接続にはBNCケーブルが一般的である。特にこの部分は信号の劣化が音質に直結するため、妥協せずサイバーシャフト社の最高級モデル「BNC75SL-XXX」を選んだ。

サイバーシャフト 純銀高品位BNCケーブル BNC75SL-XXX 28,700円~
様々なメーカーのBNCコネクターと純銀芯線を使用した同軸ケーブルを組み合わせて試聴した結果、弊社のクロック製品と組み合わせることで最良の性能を発揮する、まさに入魂の作りのBNCケーブルです。このケーブルは非常に高い解像度を提供しながらも、音が尖ることはありません。中域から低域にかけても薄くなることがなく、帯域全体にわたってバランスの取れた美しい音色が得られるのが特徴です。特に弊社のクロック製品のOP15以上のグレードには、ぜひお薦めしたい逸品です!

説明書きだけでなく価格設定も良い意味で強気で原価に近い価格設定としたらしい。また、「75Ωのインピーダンスケーブルですが、弊社クロック製品と50Ω機器との接続に於いて  50Ω同士の機器間で十分な性能を得る事を確認しています」とあり、インピーダンスにこだわらず使えるのも嬉しい。

○ 外部クロックPalladium OP17をCDプレーヤー Esoteric K-03XDに接続して、試聴を開始

接続は単純で、Palladium OP17の背面にある10MHz出力と、CDプレーヤー Esoteric K-03XDの外部クロック入力端子をBNCケーブルで接続する。CDプレーヤー Esoteric K-03XD側では、設定メニューで外部クロックの同期(SYNC)を選択する(ONにする)。

尚、クロックケーブルを短く保つため、OP17と電源CYB-LN02は木製の台座に載せ、CDプレーヤーの背面に配置した。

こうして設置が完了するとCDプレーヤー Esoteric K-03XD フロントのクロックインジケーター (CLOCK) が点灯し、クロックの周波数10MHzが入力されている旨の表示がされる。

Esoteric K-03XDのインジゲーター
Esoteric K-03XDのインジゲーター

導入から1か月が経過したが、接続直後から音の変化ははっきりと感じられた。音が繊細で清潔になり、日に日に表情が豊かになりサウンドステージも広がっていく。
特に印象が変わったのがピアノの音が澄んで、歌声はいっそうナチュラルになり、眼の前で歌っているような印象が強まった。

トラック11.ひとつだけ(矢野顕子 with 忌野清志郎)では、左にピアノを弾く矢野顕子、右にハモニカを吹く清志郎の掛け合いの空気感が見事にあらわれて、自分のために歌ってくれているような錯覚を覚える。ハートフルな清志郎の声にいつも以上に色っぽい矢野顕子の声がかぶる様は目の前でライブを聴いているよう。空気感というのは大切で、臨場感が増し早世した清志郎さんの声に思わずぐっときてしまった。

音質改善でボーカルが一歩前へ出てくると言う表現があるが、今回の改善の印象はコンサートホールで俯瞰をする席で聴いていたのが、平土間真ん中に連れてこられたような感覚になった。つまり、ホールのど真ん中で音に包まれて聴いているような気分になる。

菅野レコーディングバイブル (SS選書) の付属のSACDはリファレンスになる凄い音が詰まったCDである。すご腕エンジニアだった菅野沖彦さんの録音群から嶋護さん(@bestsoundingcds)が選りすぐりのチョイスをしたCDで、ここぞという時に聴いている。どの音源も共通するのはスピーカー外への音が拡がり、低音がしっかりと納められていることだ。オーディオ評論家としての菅野沖彦さんしか知らない方は是非本物の氏の実力をこのCDから聞き取っていただきたい。