前回からの続き、ゴッホが晩年を過ごしたオーヴェル・シュル・オワーズ(d’Auvers-sur-Oise)はヴェクサン自然公園(Parc naturel régional du Vexin français)という美しいフランスの田園風景が拡がる国立公園内に位置している。せっかくのバイクツーリングなので、夕暮れまで、この自然公園の村々をあてもなく走ってみたところ、素敵かつフランスの田舎を味わう美味しい出会いが待っていた。
● 美しいヴェクサン自然公園をバイクで流す
● 旅を豊かにするグザングレの農園での出会い
● 美味しいフランスの田舎を味わう-マスタードやラタトゥイユ
● 素敵な田舎のパン屋さん
● パリのインド人街のパッサージュ・ブラディ(Passage Brady)でお食事
● 美しいヴェクサン自然公園をバイクで流す
GPSにヴェクサン公園内の中央に位置する古い村をインプット。自分の所持するへっぽこな古いGPSは気まぐれで、なにかと高速道路を薦めたかと思うと、とんでもないダート道をいきなり推奨してきたりする。その為、最終目的地を決めたら、あとは気のままで走り、地図上で大きく道をそれたら、軌道修正する走り方でいく。つまり気分次第。
オーヴェル・シュル・オワーズを出発するとノンビリした田舎道が続き、三輪バイクで気持ちよく流す。
ヨーロッパの田舎の丘陵地帯は畑の遠くに教会の尖塔が見えて、村があることがすぐにわかる。そして、その村はどんな村なのかな、とワクワクしながらのアプローチになる。
そして、フランスの田園風景の美しいこと、この上ない。遠景から近づいていく村々のシルエットがリアルに目の前に現れる楽しさ。教会の尖塔や大きなサイロを遠景から臨むことができ、村内に入るとその教会がとても古くて立派だったり、サイロの足下には馬がいたりと、数キロずつ点在する村を巡るツーリングは事前知識がなくともとても楽しいのである。ここフランスにも、英国のコッツウォルズに負けていない、美しい村があちこちにあった。
● 旅を豊かにするグザングレの農園での出会い
そして、グザングレ(Gouzangrez)という村で素敵な出会いがあった。
例によって古い教会を眺めつつ村に入ると小さな村にしては、非常に目立つ高い煙突がある敷地があった。名所のような説明書きがあり、ちょっと門から覗き煙突を写真に納めていたところ、煙突の向かいの農場の母屋のような家からご婦人が現れたので、すかさず挨拶をした。
ご婦人のお話は、ほとんどフランス語なのでお話されている意味はわからないが、この煙突のある建物でパスティスを造っていたらしい。パスティスとはニガヨモギのリキュールで独特の香りがする例のお酒である。リカール(Ricard)やペルノー(Pernod)と記されたボトルでよく見かける。
そして、ここでパスティスはもう造っていないが、マスタードを造っているとのこと。確かにマスタードの写真が入口に貼ってあった。そのマスタードは買えるのか、と尋ねると、嬉しそうに離れたところにある別棟の小さなショップに案内してくれる。
● 美味しいフランスの田舎を味わう-マスタードやラタトゥイユ
石造りの離れに入ると、なんと素朴ながら素敵なお店がそこに拡がっていた。石壁にすべて手作りと思われる木製の棚。そして、これまた手づくりと思われるラッピングの品々。早速、丁寧に一品一品説明してくれる。
この時、英語が話せなくて申し訳ないと言われたのだが、フランス人に、こんなことを言われたのは初めてのことで、これには本当に驚いた。そして、しきりに(英語ができる)娘がここにいたら、もっとコミュニケーションがとれるのに、と残念がっていらっしゃる。
ただ、私はフランス語で一瓶ずつ、あれやこれや細かく説明してくださる彼女のフランス語が声音が美しく、たまに知っている単語がでてくると、それはそれでお互い嬉しくなるものだから、これはこれで楽しいひとときであった。
そのご説明いただいた商品であるが、もう多種多様で面白いのだ。マスタードだけで数種類あり、お手製のジュースや野菜の瓶詰め、近郊の地ビールやジャムまで陳列してある。看板もでていない敷地の奥まったこのお店、誰が来るのかと心配になってしまう(笑)。そうこうするうちに別のお客が来られ、この方は少し英語で話ができ、ちょっと意思疎通ができる。
「なんでこの店に来たの?ネットでみたのか?」と。「いや、たまたま通りかかって」と伝えたところ、かなり驚かれていた。「どうやって来たのか?と。パリでオートバイを2日間借りた」と伝えたところ、もっと驚かれていた(笑)。それだけ珍客であったのだろう。そして、「それなら、もっとこのヴェクサンにいればよいじゃないの、美しい所よ」と残念そう。ごもっともである。
最後はほんの少し地元の方とコミュニケーションができ、ほんわかした気分で、こちらを後にした。
● 素敵な田舎のパン屋さん
この農場から2キロほどいったところに、また小さな村コムニー(Commeny)があり、村の中央の小道に肉屋とパン屋が並んでいる。そこで、前日味をしめたのでパン屋に入る。例によって、パンだけでなく、お菓子も美味しそう。そしてキッシュもある。これはよいとパンに加えてキッシュも買い込み、先の農場の土産に加えて翌朝食を豪華にすること目論む(笑)。
実は、このパン屋さんベクサンでも有名で、裏には20世紀初頭の石積みのレンガのパン焼きオーブンがあり、古風なパンなどもつくれるそう。ワークショップなんかもやっているらしい。
● パリのインド人街のパッサージュ・ブラディ(Passage Brady)でお食事
買い物を終えたら夕暮れ、ここからは一路パリに戻る。50キロほどの行程で帰りは混雑もなく、あっと言う間、1時間ほどでアパルトマンに到着してしまった。
遠乗りで少々くたびれたので、バイクはアパルトマンの前に置き、身支度を整えて夕食に行く。金曜日の夜なので街は大賑わい。
アパルトマンから徒歩で行けるパッサージュ・ブラディ(Passage Brady)。この辺りはインド人街である。パサージュの中も外もエスニックな香り漂う。パサージュ内にもたくさんのインド料理屋があるが、この中で呼び込みをしていないPoojaという店が一軒あり、そちらに入る。中はフランス人でいっぱいで、アタリの予感。実際、本場のインド料理の辛味も堪能できて、お手頃価格であった。
フランスでのお食事&食べ物、本当に最高である。食べ物に囲まれた幸せな1日であった。