長年使ってきたターンテーブル LINN AXIS 発売から40年を経てまだ元気に稼動している。ただ、いつ故障してもおかしくないほどの年代物である。LINNの有名なターンテーブルLP12の弟分として発売され、ほぼLP12と機構も同じで採算度外視で製造されたらしく、ほどなく廃番になってしまった。しかし、LP12との共通部品も多く、ダストカバーのヒンジなどを交換して使い続けてきた。
しかし、メンテナンスも効かなくなってきており、CDプレーヤー同様にそろそろ買い替えたいところであったが、オーディオ店の諸氏が「手放すな!そのまま使っていなさい。」とかしましい(笑)。結局、店舗で売ってくれないので、しかたなく通販でTEAC TN-5BBを購入することになった。
この30年でターンテーブルの変遷はSOTA sapphire/GRADO SignatureからLINN AXISを経て、TEAC TN-5BBに行き着く結果となった。
● レコードプレーヤーを買い換えをさせてくれないオーディオ店
● ものぐさになった自分の最適解がTEAC TN-5BB
● TEAC TN-5BBをチューンナップ
● LINN AXISをモノラル再生専用ターンテーブルに
以下の続編記事になります。
● レコードプレーヤーを買い換えをさせてくれないオーディオ店
CDプレーヤーの次に手をつけたのがレコードプレーヤーの新調である。今使っているレコードプレーヤーはLINN AXISで40年前のもの。あまりLPを聴かなくなったので、前機種のSOTA sapphireからダウングレードしたまま、たまにLPを聴くために所持し続けていた。ただ、このLINN AXISも古くなって、いつ電源もモーターも昇天するのかと気になるところである。
ところがである。レコードプレーヤーを買い換えようとすると、ことごとくオーディオ店のスタッフに邪魔をされる。「今使っているプレーヤーの機種は何?」と、どのオーディオ店でも必ず聞かれるのだけど、正直にLINN(英国の老舗メーカー)と答えると「せっかくLINNを持っているのなら壊れるまで使っとけ、こんな日本製のプレーヤーなど買うな。」と販売員が売ってくれないのだ(笑)。
別の店ではトーレンス(スイスの老舗)に買い換えようか迷った際も「LINNでいいじゃん」と若い店員に説得された。彼らは店の売上に貢献するつもりはないのだろうか・・・。そんな店員相手に「そろそろ本当に壊れそうだし、LINNと言っても超廉価版のほうのプレーヤーだよ」なんて説明しているのだが、更に皆さんが今のプレーヤーを手放すなと説得にかかってこられる。先日などは「そのLINN廉価版プレーヤーでも同じ音を出したいのなら、新しいプレーヤーに50万円は払わないと手に入らないよ。しかも、日本製なんか買えば、出るのは所詮日本の音しか出ないよ」と言われる始末。
さらに別の店舗では、購入しようと思っているプレーヤーを目の前にして「安っぽい造りだよね。昔はこの程度のプレーヤーなんて数万円(半値)くらいで売ってたのに、酷い時代になったもんだ」なんて言われてしまった。それで仕方なく、今度のレコードプレーヤーは通販で買った。だって、どの店も売ってくれないのだから。
ただ、自分のレコードプレーヤーの購入ヒストリーはダウングレードの連続だ。初代はプレーヤーの縁を木槌で叩いても針が飛ばない米国製の凄腕レコードプレーヤー SOTA sapphire。学生時代に買い集めたレコードがたくさんあり、音質もレコード>CDと自分の中でも確固たる思い込みがあったので大盤振る舞いをして購入した。
それがレコードを買わなくなって(というか、今では信じられないことだが、売り場からレコードがほとんど消えた時期があった)、CDを購入する機会が増えるにつれ、レコードプレーヤーも手軽なのが良いなぁと思い、LINNの入門機を中古で購入した。それに軸受けオイルを注したり、アームを交換したり、細々とメンテをしながら使い続けて20年、そろそろ買い替え時だろう。
● ものぐさになった自分の最適解がTEAC TN-5BB
機械だけでなく自分も限界である。2楽章が終わったらプレーヤーの前まで行って、レコードをひっくり返す力が自分にはもはやない(笑)。今や寝こっろがってアレクサが何でもやってくれる時代である、1つの曲を途中で中断されたあげく、針とレコード盤の上げ下げをさせられるのはかなわない。
それに、これまた歳のせいか夜レコードを聴いているとついウトウトしてしまう。それで気がつくとブッツンブッツンとレコード盤が中心付近で針が空回りしていることが最近多々ある。
そんなわけで今度こそオートアームリフトが欲しかった。ミニコンポのレコードプレーヤーには必ずついていたレコードが終わると自動的にレコード針が持ち上がって、針と盤面を守る機能のことである。ただ、このものぐさ機能は高級レコードプレーヤーにはまずついていない。お高くとまった高額プレーヤーのほうが不便にできているのだ。
それで、今回もレコードプレーヤーはダウングレードとなった。しかも、選んだレコードプレーヤーはオーディオ店スタッフも否定気味の日本製(笑)。自分が長らくCDプレーヤーでお世話になっているTEAC社のTN-5BBという機種にした。
決め手は先のオートアームリフトに加えて、ベルトドライブであることとXLRバランス出力がついていること。ベルトドライブは振動や消磁対策になる。XLRとはノイズ対策がなされたケーブルで、レコード再生のような微弱な電気が、これを使うと干渉受けにくくなる。これくらいは高級機の面影を残したかったのも、この機種の選択理由(笑)。
それで、使ってみて感心したのがターンテーブルが肉厚のアクリル製なこと。静電気が発生してシートがくっついたりせず、盤面も取り上げやすい。
また、ユニバーサル型コネクター方式になって、カートリッジ(レコード針)を簡単に取り替えることができるようになったも良かった。
● TEAC TN-5BBをチューンナップ
自分は高額なレコードをそれほど所持していないけれど、CDに買い直せないLPを中心に枚数だけはけっこう所持している。一方で、オペラなど長時間ものはCDのほうがメリットがあるので、ほとんど売ってしまった。つまり、残っているLPは売ってもお金にならないか、CDで買い直すまでもないと言うようなレコードばかりが棚にたんまり眠っている状態である。これらは久しくレコード再生環境を整えていなかったので、LPをあまり聴く気にならなかったことから死蔵に近かった。
ところが、今回買い替えたフルデジタルアンプのTechnics(Technics SU-R1000)の内蔵フォノイコがあまりに優れており、レコード再生能力が爆上がりした。そこで、再びLP再生環境に手をつけることにした。このアンプのおかげで久しぶりにレコードの繊細でスピード感ある音が聴き取れるようになったので、やはり再生環境においてアンプによる影響は大きい。
レコードプレーヤー TEAC TN-5BBの選択理由は XLRバランス出力がついていること、オートアームリフトがついていることの2つであった。XLRケーブルはノイズを拾いにくいので、繊細なレコード再生には最適だし、デジタルのフォノイコにつなぐ意味でもXLRバランスのほうが相性が良いような気がする。アンプのTechnics SU-R1000にはアンバランスとバランスの2つのフォノ入力端子があるので、XLR端子とを使うことによって2つのターンテーブルを同時接続できることも幸いした。
TEAC TN-5BBをTechnics SU-R1000につなげると、なかなか良い音でなり始めたのだが、このままではCDの再生音には追いつかない。そこでMITの安物XLRケーブルからSAEC SCX-5000X-X のフォノケーブルに変えた。
プレーヤーのアームもSAEC製のものなので無難な選択のはずと睨んだからだ。これが当たったのか、ケーブル交換だけで音の鮮度と表現力がかなり増した。いずれMITの相応グレードのケーブルでも試してみたいが現状はこちらで十分な鳴りっぷりである。
残りはカートリッジである。使っていた”Ortofon Kontrapunkt a”も購入してから20年以上経つ、一方先日新調した”DENON DL-301II”では大味な音で物足りないし、やはりOrtofonにはかなわない。そこで、新たにカートリッジも新調することにした。
選択したのは前から気になっていたAudio Technica AT33Saである。これでターンテーブルもアームもフォノケーブルも国産になり、レコード針までも国産品になった。シェルも安物をやめて評判の良い山本音響工芸 HS-4を選んでみた。Ortofonより、ほんの少し優しい音の感じになったが、その分繊細さと透明度はグンとあがって、Ortofonとも互角である。
これらの構成で聴いて。やっとCD再生とほぼ互角の音質になった。
● LINN AXISをモノラル再生専用ターンテーブルに
Technics SU-R1000にはアンバランスとバランスの2つのフォノ入力端子があるので、アンバランス(RCA端子)はLINNのAXISに接続をして、ターンテーブル2台体制にした。
そして、モノラル専用のレコード針Audio Technica AT33MONOを取り付けて。モノラル録音再生専用とした。貧乏だった学生時代はとにかく曲をたくさん聴きたくて、安価な古い録音のレコードを購入していた。その中にはモノラル録音のものがたくさんある。モノラル録音にはモノラル専用針のほうが良い再生ができる。その結果、モノラルLPに再度手を伸ばす良いきっかけになっている。
モノラルカートリッジでモノラルレコードをかけてみると、スピーカーの間にしっかり音像が浮き上がる。モノラルでも良い録音のものは、確かにハイファイの音であった。
聴いたLPレコードは以下、上の2枚は中古販売品があったが、その価格表示に驚く。貧乏時代に買ったのでどれも中古屋で1000円を超えるものはなかったはずだ。これらは今CDで買えば数百円の盤ばかりである。これでは新しいレコードを買う気にはなれない。
・ビリー・ホリデイ 奇妙な果実(K23P-6611) The Greatest Interpretations Of Billie Holiday
・E・クライバー ベートーヴェン/交響曲第5&9番(仏DECCA 2524)Beethoven Symphonies #5&9 Erich Kleiber
・フルトヴェングラー メンデルスゾーン&ウェーバー(独DG 2535 821)Weber Mendelssohn Ouvertüren FURTWANGLER HYSTORIC MONO
・トスカニーニ ワーグナー(仏RCA GM 43404)Wagner Toscanini Arturo Toscanini, NBC Symphony Orchestra and Richard Wagner