港町の市場はなんと言っても新鮮な魚が店々に並び壮観である。港は流通の拠点でもあるので、市場には雑貨含めて豊富な商材が並ぶ。かくなる理由から港町の市場はどこも大賑わい、潮の香りを嗅ぎながらの早朝からの買物は胸が高鳴るものである。
港町の市場の中でも、ビジネスの教材にまでなったシアトルのパイクプレイスマーケット(Pike Place Market, Seattle)は、近くにスターバックスコーヒーの1号店があるなど港町の市場の代表格。他にもクラムチャウダーの有名店、鮮魚店だけでなく野菜や果物、雑貨品まで勢揃いの楽しい市場である。
もうひとつ印象深かったのはハンブルクのフィッシュマルクト(Fischmarkt)である。こちらは屋外マーケットがエルベ川沿いに1kmも続く。鮮魚店にイートインの屋台もあり、見どころは市場らしく叩き売りである。叩き売られるのは魚だけでなく、菓子箱、チーズ盛り合わせ、鉢植えの観葉植物と多種多様、威勢のよい声が市場に響き渡る。
そして、番外として思い出深いアジアの市場を列記してみた。
● ビジネス教材にもなっている「魚のキャッチボール」パイクプレイスマーケット(Pike Place Market)
● ドイツ ハンブルク フィッシュマルクト(Hamburg Fischmarkt)
● その他の印象深かった港町の市場
● アジアの食品市場
● アジアのユニークな市場 怪しさ満点の電子市場や服飾雑貨の市場
● ビジネス教材にもなっている「魚のキャッチボール」パイクプレイスマーケット(Pike Place Market)
シアトルにあるパイクプレイスマーケット(Pike Place Market, Seattle)は、1907年にオープンしたアメリカでも最古に属するファーマーズマーケット。港に面しており、場内には多くの鮮魚店がある。また、八百屋に雑貨店、シーフードレストランなどもあり、付近にはスターバックス1号店があることでも有名だ。
そのパイクプレイスマーケットには、Pike Place Fish Market という有名な鮮魚店がある。数ある魚屋の中でもここは人だかりができ、歓声もあがっているのですぐにわかる。販売スタッフたちの元気な声と見事な販売パフォーマンスで人気店となっているのだ。このパフォーマンスによって日系アメリカ人の始めたこの魚屋は、今や世界的に有名になり、『Fish!』というタイトルの書籍や映像素材がビジネス教材となっている。
ビジネス教材となった理由は、4つのポジティブな経営理念にある。この内容が素敵で、小売業の方々に大人気なのである。
その4つを紹介しよう。
(1)Choose Your Attitude(態度を選ぶ)
仕事の態度を選ぼう。つらい仕事も、自分次第でやりがいも出る。
(2)Play(遊ぶ)
仕事をしながら楽しむ要素を見つけ、それをエネルギーにしよう。
(3)Make Their Day(人を喜ばせる)
顧客満足はまず顧客を楽しませることから始まる。顧客と自分を喜ばせよう。
(4)Be There(注意を向ける)
目の前にある仕事に誠心誠意の気持ちで尽くそう。仲間と顧客にきちんと向き合おう。
そして現地を訪ねると、これら4つの理念を目の当たりにできる。
まずは魚のキャッチボール。中央で魚が舞っている。食べ物を投げるとは、と思われる方もいるかもしれないが、店のスタッフと客が一体となる演出はお見事である。これが始まると、周囲は笑顔と歓声にあふれる。
次に、こちらの「I’m a living cod !!」と札のあるタラ。実はひもでカウンターから操れるようになっており、客が何かな、とのぞくとビクッと動く仕組みである。同行していた妻もかなりびっくりしていた(笑)。
このようにWorld Famous Pike Place Fish Marketでは、ポジティブな経営理念を肌で感じ、実際体験できるのが魅力だ。
● ドイツ ハンブルク フィッシュマルクト(Hamburg Fischmarkt)
各種屋台のお店が延々と1kmほど建ち並ぶエルベ川沿いの屋外マーケット。毎日曜日の早朝5時半に開かれるこのマーケットは300年以上の歴史をもつ。フィッシュマルクトの場所はハンブルクの西の端、早朝からやっているだけあって到着した7時には、もう帰りがけの人とすれ違うほど朝の早い市場である。訪れた時に、ちょうど朝日が昇ってきており、レンガの建物が紅く染まり、美しい港町へと変化した。
この市場の名物は「叩き売り」。口八丁で笑わせ客をいじりながら袋詰めをして、まとめてセリのように売る。扱う品々はアメ横のように菓子やら、燻製、チーズ、果物、観葉植物様々である。けっして魚だけではない。
しかしながら魚の扱い量は圧巻。欧州でこれだけまとまった魚売り場を観たためしがない。イートインも充実しているので、いくつかの店で異なる「魚サンド」を買ってパクつきながら店々を冷やかす。
ところどころでやっている「叩き売り」に見とれたり、格安のチーズの詰め合わせを購入したりし、結局1km近くある店列を二度も往復してしまった。
そして、どの店もたいした賑わいであり、お手頃価格のようで地元の皆さんすごい買い物量である。
● その他の印象深かった港町の市場
・ポーランド グダニスク(Gdańsk)
日々魚を買いに市場に出向き、おばちゃんからお薦めの切り身や魚の惣菜を買っていたのが懐かしい、グダニスク屋内市場。魚は丁寧に処理されて、綺麗な切り身が並ぶ。それを目方で更にカットしていただいた。
グダニスクの市場の詳細については、以下のブログ記事の「美味しいグダニスク」をご参照ください。
・ニュージーランド リトルトン(Lyttelton)
クライストチャーチそばの海辺の朝市も懐かしい。土曜日の朝からオートバイにまたがって、いそいそと出かけてみた。リトルトン(Lyttelton)という、本当にこぢんまりした港町で、各国の南極基地へ物資を輸送する拠点港となっているのが信じられないほど。そして、その小さい街の唯一の商店街に屋台が並んでおり、休日の朝からバンドが気のない音楽を奏でていた。そこでは、港町ならではの焼き魚サンド、農家お手製のポタージュ、バジルペーストとキノコのパイ……。買い食いだけで立派なブランチがとれてしまう市場であった。
美味しくてお得な気分になったのは、魚屋さんならではのごった煮のクラムチャウダー。小さいムール貝やらカニやら魚やらがコロコロと入っており、出汁(だし)が効いていて美味しいことこの上ない。
リトルトンの市場の詳細については、以下のブログ記事の「リトルトン(Lyttelton)のファーマーズマーケット」をご参照ください。
● アジアの食品市場
彩り豊か、屋台も充実、ダイナミックで面白いのがアジアの市場。そして、八百屋も魚屋も肉屋も大きな声をあげて商売に勤しむ。品物を手に取り、店員と会話をする買い物スタイルは日本ではすっかり見かけなくなったが、アジア各国では健在、懐かしい光景がそこかしこに残っているのもよい。
・中国 重慶 石灰市菜市場
中国の内陸に位置する重慶。早起きをして近代的な街並みを散歩していた時に出会った古式ゆかしい朝市。早朝から大賑わいで、昔の日本にもあった市井の生活感あふれる体験ができるのが楽しい。四川料理の本場だけあって、香辛料も潤沢である。多種多様な香辛料を目の前ですってブレンドしてくれる。
生きた鳥や魚も、籠やタライにぎゅうぎゅうに詰め込まれて売られている。果物は、みずみずしくて、汁気がしたたりそうなほど、見た目も輝いていて美しい。市場では、食材を手で触って確かめる姿もちらほら。日本の商店街でも昔はよく見かけた光景である。
・中国 珠海 拱北口岸市场
マカオに行った際に国境を越えて中国 珠海に行った。徒歩で国境を越えて、広場を横切りすぐのところに市場はあった。当時はマカオ側の人はこの国境付近の中国で衣類や食材を買い、中国の人はマカオで電子機器類を買っているようで、双方国境をはさんでの店の業態の違いが興味深かった。
そして、国境をまたぐだけでここまで違うのかと思うほどの違い。中国ではダイナミックに商品群が展示され、マカオとの違いが目に飛び込んでくる。なにもかも巨大で悪く言えば乱雑。そして鮮度を重視するためか、生きたままの売買もさかんで屋外には鳥を押し込めた鳥籠がずらりと並んでいる。
・マカオ 紅街市
マカオの台所と言われる紅い建物、紅街市。中国 珠海の国境からも近い。洒落た外観の建物で、建物に入ると中も紅い光で照らされており、その光の下で肉や魚がお行儀良く並んでいる。床はタイルになっており、清潔で機能的な建物だ。観光客もあまりおらず、どこをみても地元の方々ばかり、これだけ美味しそうな食材が並んでいるのなら1度マカオで自炊生活を送ってみたくなった。
・香港 新填地街(佐敦~油麻地)
香港の佐敦と油麻地の間にある新填地街の青空マーケット。野菜や果物が安くて新鮮。目新しい食材も多く楽しい。観光客は少ないので香港人の生活ぶりがわかる市場。
・台湾 台北 夜市
台湾と言えば夜市、訪れると必ず美味しくて楽しい体験にありつける。士林夜市では、昭和を感じさせる露店のゲーム屋があり、射的や「金魚すくい」ならぬ「ザリガニ釣り」など古風なアミューズメント屋台があった。どうもザリガニはその場で焼いてくれるようで、周囲にはエビの香りが漂う。
饒河街観光夜市はアメ横のように衣類も多い夜市とのことで覗いてみたところ、安物ばかりで本気で物色している人は少ないようだった。やはり、どちらの夜市もメインはあくまでも飲食屋台群。しかも安くて不思議な食べ物もたくさんある。揚げ物、おでん、串焼き、餅などなど。もちろんお粥(かゆ)や麺類なども豊富で、毎日通いたくなるほどバラエティに富んでいる。
・ベトナム ホーチミン ベンタイン市場(Chợ Bến Thành / Bến Thành Market)
観光客でごったがえし、その熱気でたいへんな市場だが、一見の価値がある。建物は古く1914年に建てられ、広い場内には数千もの店がひしめいている。その姿は壮観で扱う品々も食品から雑貨とすべてあり、お土産品もここで充分揃う。ベトナム全土から特産品が集まり、食堂では同様にベトナム各地の料理が食べられる。価格は他の市場より高めだし、いつも混んでるし、と敬遠しがちだが、やはりじっくり品々を眺めると、ここほど楽しい市場はない。
・ベトナム ホーチミン トンタッダム通り(Ton That Dam / Đường Tôn Đản )
ホーチミンのハムギー通りから路地を覗くと露店の市場に遭遇した。炎天下の中の野外市場である、この暑さで生肉や生貝は大丈夫か、とも思うのだが、土地の方々が談笑しながら次々買っていくのが印象的であった。魚屋では実に美味しそうな貝類専門屋台があったが、旅先ではやはり生魚、特に貝類は控えているので試せなかったのが惜しまれる。
・インドネシア バリ島 ウブド市場(Pasar Ubud)
ウブド市場はバリ雑貨の天国、土産物を買うのに最適な市場である。しかし、朝市もたつし、食材も売っており、南国らしく彩りが見事な品々が並ぶ、特に香辛料によさげなものが多いから、そちらも見逃せない。あまりに格安なのでサフランを大量に買い込んだ。
● アジアのユニークな市場 怪しさ満点の電子市場や服飾雑貨の市場
アジアは食べ物以外のマーケットも滅法面白い、異国情緒たっぷりで大都市の市場では各国の品が並ぶのが特長だ。
・タイ バンコク インドラ スクエア / インドラ ショッピング モール(Intra Square)
サイアムなど豪華絢爛なショッピングモールが建ち並ぶバンコク中心部、そこから少し離れたところにある服飾雑貨の市場。なんともカオスで面白い。衣類からアクセサリー(ジュエリー)までなんでも揃い、中東やインドなど多種多様な文化も感じられる。日本の個人事業主の方も商品買付けで活用しているようだ。
・タイ バンコク 電子市場 パンティップ・プラザ(Pantip Plaza)
タイ バンコクの電子市場は見物であった。秋葉原の小規模店舗を縦に積んだようなビルがあり、そこではIT関連のあらゆるものが揃う。幾重にも重なるブースでパーツ類からソフト類まで様々なコンピューター関係商品が売られている。各フロアには、なぜかフードコートめいたものまであり、一日中滞在できるのもおつだ。ただ、安すぎ、怪しすぎで、稼動するのか不安な機器も多い。また、コピー品を売りつけに追いかけ回されたりもした。ただ、最近はかなり綺麗になって、そんな輩は少なくなったようだ。
・台湾 台北 光華商場
台湾にもバンコクのパンティップ・プラザようなビルがいくつかある。その中でもっとも有名なのが光華商場。インクジェットプリンターにインクサーバーなる安価なインク供給器をつけた改造品やら面白いものがふんだんにあった。ただ、こういったギミック満載の品々には購入リスクはある。小型の格安マウスを購入したところ2日で作動しなくなった。そして、コピー商品も多いので注意が必要だ。ただ、映画『スターウォーズ』のライトセーバー型リモコンは買っておけばよかったと今では後悔している。
・韓国 ソウル 東大門
おびただしい数の店と膨大な数のサンプルが集るファッションの殿堂とも言える問屋街。干し草の中から針を探すような作業を各国の仕入担当者が目を皿のようにして訪れている。もちろん一般の方も多く、ここにくれば服地も鞄やアクセサリーのパーツも何でも揃う。そして、周囲にはファッションビルも多く、とても1日では回りきれないほどの商品と素材に囲まれた町、まさしくファッションの天国である。
・中国 上海 格安ファッションビル
中国上海にある格安ファッションビルが楽しかった。このフロアには渋谷109ばりのギャル服ブースが鈴なりに並んでいる。商品価格も安く混雑ぶりも半端ない。ところで、中国の販売員は、売り場で食事をとる。カウンターでお弁当を食べている光景は普通。ちゃぶ台を出して、店の真ん中で、皆で鍋をつついていたりする光景も見かける。そのため、昼時はたいへんな香りが店内に充満する。こんな具合にアジアの市場は猥雑(わいざつ)さ満載で、ものを買わなくても眺めているだけで楽しい。
・チェコプラハ プラハマーケット The Prague Market / Pražská tržnice
アジアは世界の工場となっており、どの国でも夜市や市場の屋台で格安の衣類販売を見かける。衣類関係では中国、インドに次いでベトナムは輸出が多い。とりわけベトナム人は手先が器用と言われ、昔から評判がよかった。そのベトナムからの移民が多く暮らすチェコ プラハにはなんとベトナム人が主体となった市場がある。
元は食肉加工場だったところがプラハマーケットとして再活用され、大きな市場がヴルタヴァ川を渡った7区にある。敷地は広くここに卸売り、小売店、スーパーなどが密集している。共産主義時代にチェコと仲の良かったベトナムから、多くのベトナム人がチェコに定住し、このプラハのマーケットはベトナムマーケットと変貌していく。衣類も豊富で、食材も豊か、特に食材はアジア各国のものが手に入る。併設の食堂にはフォーや生春巻きなどベトナム料理店も多く、美味しい。