アリゾナでのツーリングに味をしめ、今度はツアーを利用せず単独でのツーリングに臨むことにした。
目指すははオレゴン州。州の東は荒野と大平原、西には延々と続く海岸線、州の東西の間には深い森林と多くの湖を抱くカスケード山脈(Cascade Range)がある。
人もまばらで、走ってみるまでは、アメリカの大自然をこれほどまで満喫できるツーリングとなるとは想像もできなかった。
そして、豊かな食材と美味しい食事、アメリカの食事が美味しくないというのは、戯れ言だと確信を得たのもこの旅であった。
初の単独での海外ツーリングで、いささか不安と緊張感を抱えていたが、このオレゴンとカリフォルニアの大自然の素晴らしさが、あっという間に不安をかき消してくれた。
そして、再びハーレーダビッドソン(Harley-Davidson)にまたがり、6日間3000Km、2度目のアメリカバイクツーリングとなった。
● サンフランシスコでバイクを借りる
● ハーレー エレクトラグライド(Harley-Davidson ELECTRA GLIDE)の魅力
● サンフランシスコでバイクを借りる
サンフランシスコ(San Francisco)に到着前、上空からちょうど本日走るコースがちょうど見えた。サンフランシスコからサクラメントにつながるベイブリッジ(Bay Bridge)、橋の間に浮かぶ島はトレジャーアイランド(Treasure Island)である。有名なゴールデン ゲート ブリッジ(Golden Gate Bridge)の反対側にもこのような立派な橋がある。景色を見ながら、サンフランシスコ湾を内側にかかえ、この地域は半島のように海に突きだしたような地形であることを目の当たりにした。
空港に降り立つとサンフランシスコの天候はよく、これなら本日のバイクの乗り出しも順調にいけそうとホクホクになる。やはり最初から天気が良いのは気分もあがる。
レンタルするバイク屋さんは、前回のツアーで知ったイーグルライダー社(EagleRider Motorcycle Rentals and Tours)である、こちらをお世話になったフリーダムアメリカ社経由で予約を入れた。このイーグルライダー社は全米にショップがあり、更に後ろにフリーダムアメリカ社が控えてくれると、道中でなにかあっても安心ができる。
空港からレンタルバイクショップまではタクシーを利用する。海外ツーリングでは、ヘルメットや雨具など持参する為に大荷物になるので、ショップまで鉄道やバスを利用して行くのは難しい。
尚、レンタルショップに到着してしまえば、空いたスーツケースや余分な靴や衣類などは預かってもらうことができる。預かると言っても、他のライダーの預り鞄といっしょに空き部屋に保管されるだけなので、すべて自己責任である。それ故、貴重品はもちろん預けることはできない。ただ、ツーリングでは不要な衣類などを置いていけるのは荷物の軽量化のためにたいへん助かる。また、この空き部屋で着替えることもできるので、飛行機搭乗時の服装からバイクツーリング用の服装に着替えた。
そして、選択したオートバイはハーレー エレクトラグライド(Harley-Davidson FLHTC ELECTRA GLIDE CLASSIC)、通称エレグラである。ハーレーの最高級車であり、積載量の多さから長距離ツーリングにはうってつけである。次回は是非これに跨がろうと決めていた車種だ。しかしながら、初めて目の前にそれが現れると、あまりの大きさに圧倒された。そして、倒したら、重そうなこのバイクを起こせるのかと心配にもなった。
引渡しの際は、バイクの細かいチェックを受け、細かい擦り傷なんかも丁寧に事前確認をする。そして、バイクの各種操作方法の説明を受ける。こちらからもウィンカーのキャンセル方法なども操作方法を細かく聞いてしまう。たかがバイクの操作だからシンプルだと思っていても、メーカーや車種によって操作が多少異なるので、先に聞いておけばいざと言う時に慌てることがなくなる。別の旅での出来事だが、イタリア車を借りた際に、この事前確認を怠って給油時にガソリンキャップカバーの開け方がわからず難儀した経験がある。
そして、いよいよ出発。初めて乗るハーレーで超大型車 エレグラに胸が高鳴る。バイクに跨がってすぐにフリーウェイに乗った、乾燥重量370㎏とかなり重い車体なのに、操作性がよく運転をしていて違和感を全くない。
乗り出して10分ほど経ち、先ほど飛行機で上空から眺めたトレジャーアイランド(Treasure Island)に立ち寄って、バイクを点検してみた。エレクトラグライドにはなんの問題もなく、むしろこの安定した走行ぶりに、これからの長旅がますます楽しみになった。
● ハーレー エレクトラグライド(Harley-Davidson ELECTRA GLIDE)の魅力
この車種エレクトラグライドを選択した理由は、先の通り積載量であった。ハーレーの中でも旅荷物を1番多く積めるため、雨具などを含めてタンデマーの分も合わせた2人分の1週間の荷物を楽々と積むことができた。特に後部のケースは楕円ではなく、綺麗な長方形なので収納力が高く使い勝手がとてもよい。
前年に借りたハーレー ヘリテイジ・ソフテイル・クラシック(Harley-Davidson Heritage Softail Classic)とは、この点が大きく異なった。
<参考記事 前回の車種について>
更にエレクトラグライドに跨がって感じたのは、圧倒的な安定感であった。ホールド感あるシートに座り、大きなウインドシールド(風防)に守られると長距離走行で肩や身体が痛むことが一切なく、自動車で旅をしているようである。これは後部座席も同様で、陽気がよい中で座っていると走行中にもかかわらず眠気に襲われるほど快適らしい。
大きなウインドシールドは高さが低いように見えるが、実は身体に風はほとんど受けないよう設計されている。また、適度な硬さのシートや軽いアクセルからは、身体に余計な負担をかけないようにと細やかな配慮がなされていた。これだけの長距離ツーリングで、バイクに乗った後の疲れを全く感じないのは初めてであり、これには正直驚いた。
もちろんアメリカの道路にはワインディングなんかはほとんどなく、山道でも90km/hで流せることも疲れにくい理由である。しかし、やはり400㎏近い車重からくる安定感や比較的振動の少ないエンジンなど、エレクトラグライドの設計の素晴らしさが安定感につながっていると思う。
この車種にはCDプレーヤーとラジオがついていた。Harley-Davidsonと書いてあるフタを開くとCDを挿入できるようになっている。ラジオはオートトラックでFM波も自動で捕まえてくれ、移動しながら簡単に選曲ができるし、後部座席のリッパなアンテナがあるので僻地でもしっかり音を拾っていた。
CDやラジオの選曲やボリューム調整も左右のハンドルにあるスイッチで操作でき、走行中も一切ハンドルから手を離す必要はない。
こういったバイクの車体に付属しているスピーカーであるが、ヘルメットをかぶりながらでも音楽は聴こえるのか長らく疑問に思っていた。しかし、意外なことにかなり良好に聴こえる。
誰もいない大平原をカントリーミュージックを流しながら疾走するのはたいした快感であった。そして、ツーリングの日を重ねると、つくづくアメリカはハーレーダビッドソン(Harley-Davidson)が似合う国であると実感することになる。