スピーカーは以下の変遷を辿ってきた。
MartinLogan Sequel 2 / SL2 →
MartinLogan Sequel 3 / SL3 →
Avalon Acoustics Eidolon
1989年、初の大型スピーカー購入以来、3代目のスピーカーとしてアヴァロン アコースティック(Avalon Acoustics)のエイドロン(Eidolon)を使っている。音場感に優れ、美しいフォルムの静電型(コンデンサー型)スピーカーのマーティンローガンを使い続けてきたが、やっとダイナミック型スピーカーで同等の表現力をもつスピーカーに出会えた。
——海外のコンサートホール、かつての歴史的なコンサートに誘ってくれるのが自分にとってのオーディオ。 なぜ旅ブログでオーディオか、というお話はコチラになります——
● MartinLogan Sequel 2 / SL2(1989年)
初めて購入した大型スピーカーは静電型スピーカーの MartinLogan Sequel 2 / SL2。こちらは以前の記事「コンサートホールを再現する」にてご紹介した通り、衝撃的な出会いだった。ただし、当時のマーティンローガン社は駆け出し企業であり、製品技術も日進月歩の最中であった。
●MartinLogan Sequel 3 / SL3(1999年)
MartinLogan Sequel 2を10年近く使ってきたが、静電型スピーカーの世界も技術改善が著しく、そろそろ交代と新しいモデルに買換えた。設置して最初の音出しで驚いたのは、その音量。前モデルのSL2と同じボリュームレベルなのに音量が全く変わった。かなり能率が改善したのだろう。ただ、音質がよろしくない。静電型スピーカー特有のクリアな音がでないのだ。これは購入失敗したかと、かなり心配になった。
その後、判明したのが、ただのエージング不足。鳴らし続けているうちに、繊細さが増し、とても良い音に変化してきた。デザインはほとんど変わらないながら、パネルの曲面が加工技術の向上故か多少丸みが増え、スピーカーのセッティング(向き調整)もレンジが広くなり楽になっている。そして、相変わらず透明なフィルムを蜂の巣状のパネルが挟んでいるので、後ろにランプなんかを置くとインテリアとしても様になる。
● Avalon Acoustics Eidolon(2008年)
10年ほどマーティンローガンを使い続けたが、やむなく選手交代。マーティンローガンの日本の販売代理店が取り扱いを辞めてしまい、修理やサポートを得られなくなってしまったのだ。このスピーカーはフィルムが劣化した際に、パネルごとフィルムを交換できる。このサポートが得られないと長く使うことに不安を覚える。また、スピーカー下部にアンプを内蔵している為、電気系のトラブル時にサポートが受けられないのも辛い。(なんと今年2019年にマーティンローガン社の新たな日本代理店が決まった模様)
そして、選択したのがアヴァロン(Avalon)のエイドロン(Eidolon)。音もさることながらマーティンローガン同様の美しい仕上げに見とれた。 マーティンローガンの日本代理店撤退に伴い2006年から物色していたので、このスピーカーに出会うまで2年近く要したことになる。当時選定の際に迷ったスピーカーがデザインはともかく音が素晴らしいVIVIDAudio、できるだけメインシステムはアメリカ製で揃えたいので、音がクイックそうなThiel CS3.7が候補であった。しかしティール( Thiel )のスピーカーは2年過ぎても輸入されず。そうこうしているうちにアヴァロン社のものが再度視野に入ってきたのが選択の経緯。
アヴァロンを購入するにも長く使用する為、あまり廉価版ではないほうがよい。一方、アヴァロンのDiamondはお値段が高すぎ手が出しにくく、ずっと悩み続けていた。その時、中古で状態の非常に良いエイドロン(Eidolon)に出会う。現物の美しさにほだされ、音を聴いて更に焦がれ、一目惚れをして購入することになった。
デザインはマーティンローガンのスピーカー同様に美しく、同じくアメリカ製。1998年発売ということで、発売はMartinLogan SL3と同時期なのだが、やはりお値段が数倍違うだけあってスピーカー自体の質感や音質はかなり上をいっている。
アヴァロンのスピーカーのちょっと変わっているところがスピーカーケーブルを、スピーカー底面につなぐような設計になっていること。美観を考えてなのか、接続は少々面倒ながら背面からケーブルが垂れ下がらないのはそれなりに見た目がサッパリする。
さて、肝心のエイドロンの音だが、もう絶品としか言いようがない。静電型スピーカーで惚れこんでいた細やかな音も、このクラスのスピーカだと難なく再生され、音場感もバッチリ。そして、速度感ある締まった低音は原音を忠実に再生する為に極めて有効に感じた。以前したためた「海外のコンサートホール、かつての歴史的なコンサートや名演に誘ってくれるのが自分にとってのオーディオ」をまさしく具現化してくれている。
オーケストラやJAZZなどの楽器配置は手にとるようにわかり、生々しい、といった感じになる。そして一言で言えば、「響き」の描写が素晴らしい。
<試聴盤>
○ ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」カルロス・クライバー / バイエルン国立管弦楽団
録音はけっしてよくなく、発売時も顰蹙ものだった。しかし、今回聴いてみると、確かに録音は悪いながらもダイナミックかつ邁進する旋律と微妙に揺れるテンポに加えて、クライバーならではの絶妙なハーモニーが耳に届いてくる。購入時に聴いた以上の感動を得た。
こちらを聴き直して思い出したのだが、購入前タワレコのヘッドホンで試聴をし、あまりに貧相な録音に購入を何度かためらったのだった。しかし、それも霧散、改めてこのCDの真価を発見した次第で、やはり再生装置によってソフトの価値まで変わるものだ、と感じいってしまう。
○ ドヴォルザーク: 交響曲第9番 チェリビダッケ / ミュンヘンpo.
チェリビダッケの火を吹く演奏が今まで以上に音場が縦にも横にもワイドに広がり、そもそも雄大な演奏であったのが、いっそう雄大な響きに磨きがかかり、正規盤も真っ青の優秀録音であることがわかる。
○ ブラームス: 交響曲第4番 チェリビダッケ / ミュンヘンpo.
こちらなどは、もだえるような弦のうねりが見事に再現され、指揮するチェリビダッケの掛け声もしっかり聴き取れてしまう、こちらも正規盤以上の名録音である。
○ ひとつだけ / the very best of akiko yano 矢野顕子
トラック11の弦とパーカッションの絡みが美しく録れているのがよくわかる。矢野顕子のCDはどれも録音がよいのだが、このベストアルバムは曲毎にスタジオによる録音状況の違いがわかってなかなか面白い。中には歌い手の顔が揺れる様まで聴きとれるるほど、立体感がつかみとれる録音がある。
○ ベートーヴェン: 交響曲第9番 カルロ・マリア・ジュリーニ / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
そして、自分にとって忘れえぬ一夜の録音。この演奏は20年前にベルリンで生で聴き、ベルリンフィルの音の深さに圧倒された演奏。特に第3楽章のヴァイオリンのアンサンブルが金色の絹布がさざ波のようにたなびき、ピチカートのリレーは清涼感あふれ、「カンタービレ」と言う音楽の本質を表す言葉の意味を教えてくれた。この忘れがたき一夜をEidolonは追体験させてくれた。
こうして表現の巾が拡がると蔵にある音盤を再聴する日々が楽しみになってくる。